悪魔の尻尾

みなさ~ん、元気にしておりますか?

マネー・ボール マイケル・ルイス サイバーメトリクスを広めた名著

画像はAmazonより

以前、ブラッド・ピット主演の映画で見ました。
やはりこれも本で読みたいと思っていたので、Kindleで購入。
長らく放置していたのですが、通勤時の合間などで読みました。

読んでからブログに書こうと思いながら、結構経過しています。

 

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セイバーメトリクスを書いた本はいくつかありますが、このマネー・ボールが原点でしょう。
先日読んだ「ビッグデータ・ベースボール」もマネー・ボールとは違う観点から描かれている本でしたが、ものすごく影響は受けていると思います。

 

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映画での「マネー・ボール」もとても面白かったのですが、2時間ほどの映画で描くためにどうしても主役のビリー・ビーンが中心になります。
もちろん、この本でもビリー・ビーンが中心なのは変わりませんが、それ以外の日の当たらなかった選手がビリーによって輝く選手として活躍するのは読んでいてスカッとします。
スコット・ハッテバーグやチャド・ブラッドフォードの話なんかはとても面白いです。
ハッテバーグは、かつては捕手としてメジャーで価値のある選手の一人でしたが、怪我で捕手としての選手生命は終わり。
しかし打者としてその才能を見出したビリーによって一塁手として復活するのです。
ブラッドフォードの場合はノーラン・ライアンランディ・ジョンソンのように剛球を投げるわけではなく、正反対のタイプの選手ですが、失点が少ないという点ではとても優れた選手。
野球は球の速さを競う競技ではなく、ましてや個人競技ではないです。
もちろん、スターになるにはとてつもない大きな打球を飛ばすバッターや見るものを魅了する豪速球が必要でしょう。
ただ、そういうとてつもない選手はごく一握りの選手であり、お金のある球団しか雇えないです。
この本の最初の方にも記載がありましたが、金持ち球団、例えばヤンキースなんかはまさにお金に物を言わせて大物選手を集めます。

貧乏球団アスレチックスは金銭で補強することはできません。
お金以外のところで工夫して補強するしかないです。
なので他の球団から不要とされた選手や見た目がプロ向きではない選手たちの中で、ビリーたちの「新しい評価軸」で評価して獲得していきます。
もちろん金満球団のようなきらびやかなスターを獲得することはできませんが、どこかに良さがあればそれを試合に活かすのです。
選手の放出、獲得、つまりトレードによる「財テク」もみものです。

ドラフトで人気があるのは身体能力が高い選手、見た目は太っちょで打ち方も無様ですが、数字が物語っている。
打ち方や見た目などは二の次で、やはり数字を注視するというのも特徴で、従来のスカウトたちとは考え方が全然違います。
その数字も従来の打撃三部門よりも出塁率を最重要視。
そしてOPSですね。
盗塁はほとんど評価していません。
打率は評価しますが、本塁打ほどの評価はなく、打点に関してはもっと評価が低いです。
というのも打点は塁上にランナーが居るかどうかの要素が大きく、個人の能力でできる要素よりも「運」の要素が強いから。
打率よりも重要な出塁率は、言い換えればアウトにならない確率です。
野球は延長戦がなければ、27のアウトで終わりです。
そのアウトカウントを減らさない=攻撃が続く=得点確率が上がるというわけです。
極端な例でいうと、打率.250の打者であってもヒットと同じだけフォアボールを選ぶことができれば、出塁率は5割もあります。
しかし打率がいくら高くても、フォアボールを全く選ばないバッターは5割の打率を残さなければ同じ出塁率にならないわけです。
もちろん塁上にランナーがいる場合、ヒットだと得点が入り、フォアボールだと空いている塁を埋めるだけですが、ビリー・ビーンはそういうことよりもとにかくアウトにならない事が最重要と考えます。
同時に得点圏打率といったものもあまり重要視していません。
それらはたまたま、つまり「運」だという考えですね。
本塁打の評価が高く、安打の評価が低いのは、個人の能力そのものでカウントできるからです。
本塁打は守る野手の能力は関係ありません。
しかし安打に関して言えば、守備範囲の狭い選手が守っているところに打球が飛んでヒットになった、あるいはその逆に守備の上手い選手に素晴らしい打球を捕られたというのはよくあることであり、それは「運」が良いか悪いかだけのことだと考えます。

投手に関しても同様で、防御率自体が評価できないものだと考えます。
投手の能力そのものを表すのは与四球であったり、奪三振
ヒットを打たれた、点を取られたということに重きをおいていません。
もちろん与四球が少なく、奪三振が多い投手は大体において防御率も低いものだと思うのですが、ゴロを打たせる投手は被本塁打が少なく、失点も少ないのです。
そもそも守備に関しては数値化するのが難しく、エラー率なんてものは全く当てになりません。
そんな守備能力に関して、非常に高い評価を与えている従来の評価。

そういう採点が曖昧なこれまでの野球の数値を視点を変えて評価しようというのが「マネー・ボール」の主人公ビリー・ビーンの挑戦でもあったわけです。
ビリー・ビーンは学生時代にはその才能を高く評価されてプロの道を歩み始めますが、選手としては成功しなかった人物。
そんな自分を評価した者たちが今も旧態依然として野球界に居座っていますが、ビリーは彼らを一掃していくんですね。
これまでのスカウトや野球関係者はメジャーリーグ経験者を含めて野球経験者ですが、彼らの評価は彼らの「経験」に基づくもの。
それは数字ではなく、「経験」という「主観」だったのです。
それを否定し、冷徹なまでに数字で評価を決めて実行するのがビリーたちの野球の革命でした。
これまでの「主観」に基づく評価を逆手に取って、他球団に高評価で買わせるというマネージャーとしての「技」も見事なもので、してやられた他のマネージャーたちは、ビリーが獲得に動くと評価が上がることも会ったようです。
とにかく読み物としても面白いです。
でも野球が好きな人のほうが楽しめる本であることは間違いないですね。




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