悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

見えない女 島田荘司

画像はAmazonより

 

あらすじ

インドネシアの恋唄

主人公は、東京に住む大学生です。
簡単な旅行手記を出すだけでいいと言われ、無料で海外旅行に行けることになりました。
インドネシアに旅立ちます。
そこで、早見優に似た可愛らしいインドネシア娘と出会います。
彼女は貧しい村に住む女性で売春婦なのです。
そんな彼女との恋に落ちる物語。

見えない女

主人公は、映画館系の仕事をしています。
フランスに来たときに目にしたとても美しい女性。
彼女は高級車を乗り回し、高級レストランで気ままな食事をしています。
一体彼女はどういう女性なのでしょうか?
自由奔放に生きる謎の女性。
彼女の魅力に取り憑かれつつも恐怖を感じる主人公。
主人公がカトリーヌ・ドヌーブのファンであることを告げると彼女は合わせてあげるというのです。
一体彼女は?

一人で食事をする女

いつも一人で食事をする飛び切りの美人で知性もありそうな女性に興味を持ってしまいます。
そのレストランの常連は彼女は手に負える女性じゃないと警告をします。
彼女は娼婦が立ち並ぶストリートでひときわ目立つ存在。
しかし、誰でも彼女を買えるわけではないようです。
ノイシュバンシュタイン城に観光に行ったときに再度彼女に遭遇します。
彼女はレストランで顧客と思しきお金を持っている男性と一緒でした。
しかし彼女はその男性が酔った隙にダイヤのカフスを盗み、男性を置き去りにして出ていきます。
主人公は彼女を追いかけ、問い詰めます。
彼女はバイエルンの狂王ルードヴィッヒ2世をこよなく愛している人間でした。

感想

推理小説の短編集というよりはちょっと小洒落たハードボイルド風の小説ですね。
ハードボイルドというのはちょっと言い過ぎかもしれません。
というのも主人公はいずれも「普通」の男性で、彼らを通してこの小説は進んでいきます。
彼らというようにこの3つの小説には繋がりがありません。
ただ、登場する女性はいずれも美人で魅力的な女性なんです。
冒頭の「インドネシアの恋唄」は本当に悲しい運命を背負った少女です。
通学の電車内で見かけた早見優(当時アイドル)のポスター。
そして旅先で見かけた売春婦との出会い。
そこから先は通常の旅行ではありえないような展開となって行きます。
美味しい話にはちゃんとその仕掛けがあるというのが最後のオチなんでしょうかね。

この小説のタイトルにもなっている「見えない女」。
登場する女性はあまりに魅力的すぎて、主人公は警戒してしまいます。
ジョークでマフィアのボスの娘であると彼女が言うと本気にしてしまいそうになるくらいです。
そして彼女は主人公に体の関係を迫ってくるのですが、逃げ腰になる主人公。
彼女は主人公に対して、自分の体を初めて見るのではないと言い切るのです。
そして自らを嘲笑するかのように「見えない女」というのですね。
数々の映画に出演している彼女ですが、映画のエンドクレジットにも彼女の名前は出てきません。
カトリーヌ・ドヌーブという大女優のヌードシーンなどの影武者なんですね。
ドヌーブという大女優はもちろん知っていますが、この当時でもかなりのお歳を召していたはずです。
そのため美しいお姿というのがいまいち想像できませんでしたね。
それならイザベル・アジャーニとかのほうが良かったかな?なんて思ったりもしましたが、彼女も今や70歳くらいなのでしょうかね。
美しい人にとって時間は残酷に過ぎ去っていくものです。

「一人で食事をする女」。
こちらの物語も大胆な展開をしていきます。
美しく知的な女性に恋をするもののエンディングでは完全に失恋します。
彼女はスパイ?とも思えるような不思議な生き方です。
ノイシュバンシュタイン城が描かれていますが、言ったことはありません。
どういう城なのかはわかりませんが、ミニチュア(笑)を見たことがありますので、本物はさぞ美しく荘厳な城なのでしょうね。

 

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狂王と呼ばれたルートヴィッヒ2世と彼の作った城を愛する女性で、数多くの写真を撮影していますが、その目的は愛する男性にそれを見せたいためだったのですね。
そして愛する二人は同じドイツ人でありながら、会えない二人でもあるのです。
だからこそわずかな時間での逢瀬が激しく燃え上がるのでしょうかね。

いずれの物語も短編ですが、一つの作品で1時間位はかかるのかな?
そこそこの長さがあるので読み応えあります。

前回読んだ「毒を売る女」もとても面白かったのですが、今回の内容はそういうものよりもかなりおしゃれな感じの漂う物語。
そこに登場する主人公(男性)とヒロインとなる女性は、普通の読者としてはあまりにかけ離れた存在に感じました。
海外であることもありますし、その立ち位置というのもあります。
そして、この小説に登場する魅力的な女性は、現実のアイドルや大女優の名前が出てきていて、具体的で頭に浮かびやすいのですが、やはり実在の芸能人の名前を小説に使うのはタブーだと思いました。
イムリーなタイミングで読んでいたら、それはいいのでしょう。
時間が経過した今、これを読むと若干萎えますね。

 

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