悪魔の尻尾

みなさ~ん、元気にしておりますか?

女のいない男たち 村上春樹

「ドライブ・マイ・カー」という映画が日本アカデミー賞を受賞しました。
その前に、本家アメリカのアカデミー賞でもノミネートされるなど非常に注目されている映画でした。

どんなものなんだろう?原作は村上春樹さん?
というわけで先日ひさしぶりに本屋さんへ行ってきて、文庫本を購入しました。

紙の文庫本を買うのはかなり久しぶりかもしれません。

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まえがき

まえがきなんてものは本来書きたくないと著者の村上春樹氏は述べています。
でも書いた、ということに大きな意味があるのでしょう。

ドライブ・マイ・カー

映画の原作となっている作品です。
映画とは所々違うようです。
映画はまだ見ていないのですが、機会があればぜひ見てみたいです。
この短編を読んで、感動したか?と言われると、微妙です。
決して面白い小説ではありません。
短編ですので、小説自体も1時間もかからずに読める内容です。
それを映画では3時間近くの作品らしいので、かなり脚色が盛り込まれているんだろうと思いますね。

59歳の舞台俳優の家福(かふく)が事故を起こし、車の運転ができなくなりました。
そこで知り合いの紹介で専属の運転手を雇います。
腕は確かなのですが、かなり無愛想な渡利みさきという女性ドライバー。
無駄口をたたかないみさきでしたが、家福にはほとんど友人らしい人がいないことに気づきます。
そしてそんな会話をきっかけに、家福の友人の話になります。
家福には愛する妻がいましたが、亡くなってから随分時間がたっていました。
妻が別の男と関係を持っていることを知るのですが、その真相を聞く前に亡くなってしまったのです。
妻が関係した最後の男性は俳優でした。
その俳優は妻が亡くなった当時、家福と知り合い、友人としてしばらくの間、一緒に妻を話題に酒を交わしている中でした。

そんな話を女性ドライバーに話すようになっていくのです。

 

エスタデイ

主人公は大学生で、浪人生の木樽という人物と友人になります。
木樽は田園調布に住む東京の人間でしたが、関西弁を流暢に話します。
阪神タイガースファンで、関西弁を話すために大阪に「留学」するほどの変わり者でした。
主人公は関西、芦屋の出身でしたが、東京に来てからは関西弁を話さなくなりました。
考え方も何もかも違う二人でしたが、お互い友人らしい友人がおらず、しばらくの間ふたりは友人としてよく会う様になりました。
木樽にはとても魅力的なガールフレンドがいました。
えりかという名前の女子大生でした。
木樽は幼馴染のこのガールフレンドのことをどう思っているのかわかりませんが、友人に付き合うように薦めるのです。
主人公はえりかとデートにも行き、木樽のことを聞いたりします。
えりかには大学に別に付き合っている男性がいるとのことでした。
時が経ち、主人公は出版社を経て物書きとして行きていました。
えりかは広告代理店で働いており、偶然再会します。
木樽とは結局結ばれず、今はデンバーで寿司職人として働いているのでした。

 

独立器官

渡会は親の代から整形外科を営む家で育った恵まれた人間でした。
彼は整形外科医としても優れており、センスや雰囲気も悪くはないので大変女性にモテるのですが、恋愛関係に陥ったことがありません。
結婚願望はまったくなく、都合の良い女性と都合の良い関係を繰り返してきました。
そんな渡会がある主婦に恋をします。
それこそ身も心もよじれるほどに思い詰めるのです。
渡会にはビジネスパートナーとしてゲイの男がいました。
渡会のことを人間として尊敬している彼は、渡会の最後を見届けるのです。
渡会が愛した女性は、夫と別れ、渡会よりも若い男と結ばれるのでした。
彼女にとっては渡会も一次的な「カレシ」に過ぎなかったのです。
食事も喉を通らなくなり、衰弱死したのです。

生前渡会が「女性には平然と嘘をつける独立器官を持っている」と言っていたことを思い出します。

 

シェエラザード

「ハウス」というところから出られない羽原(男性、主人公)のもとに通い、食材やら日用品やらを届けてくれる女性がいました。
彼女は男性にとって必要な性欲処理のために、セックスも事務的に提供するのでした。
そんな彼女とは寝ることよりも過去について語ってくれる話が楽しみでした。
彼女には高校生の頃、好きな男子生徒がおり、その男子生徒の家に空き巣に入るのです。
そして男子生徒の鉛筆を盗み、代わりにタンポンをおいてくる、シャツを盗み、自分の毛を3本置いてくるなど、悪いことだと知りながらやめられなくなるのです。

 

木野

木野は物静かな男性で、おばの経営していた喫茶店を引き継いで改築し、バーを経営しています。
「木野」という何の変哲もないただのバーでしたが、神田(カミタ)という背の高い男が常連となります。
木野には妻がいました。
その妻は木野の友人と不倫をしており、ちょうど自分の寝室で、その最中を目撃してしまうのです。
怒りをぶちまけることもなくその場を立ち去った木野。
仕事も辞め、おばのつてをもとにバーを経営することになったのです。
そんなバーにも客が徐々に入るようになってきました。
バーには癖のあるカップルが訪れ、その女性からは危険な信号を感じていたにもかかわらず、彼女と寝てしまうのです。
バーには住み着いていた猫がいたのですが、いなくなります。
そして普段は現れることのない蛇が連日目にするようになるのです。
神田は木野にすぐにこの場所から逃げるように告げます。

 

女のいない男たち

この本のタイトルになっている作品。
ある夜、昔付き合っていた女性の夫から突然電話がかかってきます。
彼女が死んだことを告げるのです。


 

感想

合う合わないというのがあるとすれば、私は村上春樹さんの小説は合わないのだと思うのです。

過去に読んだ「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」という本も、大変面白いと言われて読んでみたのだが、全くしっくり来なかったですね。

tails-of-devil.hatenablog.com

 

刺さるところがないのだと思うのです。

たしかに読んでいると、その状況やら、不思議な感覚にとらわれるような物語です。
そしてあえてもやもや感を残し、読者にその内容の解釈を委ねるというスタイルなんでしょうか。
どの物語も自分には引っかかりがなく、また共感するようなところもありませんでした。
この小説に登場する男女の関係が特別ではなく、どこにでもある、とは思いたくないという気持ちがどこかで強く働いて、どうも不快感ばかりになるのです。

かろうじて「イエスタデイ」は出てくる木樽という人物が個性的で面白かったのですが、その話とて、とても面白かったとはいえません。

アカデミー賞ノミネート、日本アカデミー賞受賞の「ドライブ・マイ・カー」にしても小説はちっとも面白いわけではありません。
ただ、読んでいると、長さ的についつい読み切ってしまうくらいの分量でしたから読みにくいということもありません。
文章、表現は流石にプロの売れっ子作家ですから、素晴らしいと思うのですが、ストーリーという点で共感するようなところというか、引っかかる点がないんですね。

読んでいる間はそれなりに楽しめるけど、読んだ後には何も残らないんですね。
つまり、私にとっては、つまらないということなのでしょう。

村上春樹さんの代表作は色々あるのでしょうが、なかなか手が伸びていかないだろうなあと思うのです。

 

以前、妻が「ノルウェイの森」を読んだ後、読み終わった本を私が読もうとすると、「読まなくていい」というのです。
「向いていないし、多分読んでもつまらないと思う。」というのです。

「女のいない男たち」というタイトルから、「女の匂いのしない男たち」を想像してしまいますが、この小説に登場する男たちの周りには女の匂いが必ずあります。

誰に向けた小説なんだろうか?と思ってしまうのですが、少なくとも私のようなオッサンのための小説ではないと思いましたね。



 

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