横溝正史さんといえば、昭和を代表とするミステリー小説の作家さんですね。
小学生の頃は小説というものがよく分からず、あまり読書はしませんでした。
昆虫や動物の図鑑などは好きだったのですが、推理小説とかは全く読まなかったですね。
中高生になって、人並みには読むようになりました。
当時角川映画が全盛の時代でしたから、派手なCMで、推理小説などに興味がない人でも映画に行ったと思います。
森村誠一さんの「人間の証明」、「野性の証明」。
横溝正史さんの「八ツ墓村」、「犬神家の一族」、「悪魔の手毬唄」などなど。
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ちなみに今回読んだ殺人鬼は映画やドラマにもなっているようですが、この作品自体は長編小説ではなく短編です。
そして私が読んだ本(電子書籍)はタイトルの殺人鬼以外にも作品がある短編集となっています。
殺人鬼
連続殺人犯がまだ捕まっていません。
そんな折に若く美しい女性、加奈子は暗がりの道を使って帰宅する途中でした。
探偵小説を書く作家八代竜介は、加奈子を自宅のそばまで就いてきてほしいと頼まれるのでした。
無事に送り届けることができたのですが、付近で黒い衣装を着た義足の男がどうやら彼女をつけているようでした。
加奈子は義足の男を知っているどころか、戸籍上は夫となっている人物の亀井淳吉だというのです。
亀井淳吉はお国のために戦地に向かうことになりましたが、その前に祝言をあげ結婚して戦地に送り出す、そういう時代でしたので、一晩だけの夫婦となったのです。
戦時中は加奈子の家は焼かれ、親戚を頼りながらなんとか生きながらえてきました。
そういう時代に亀井のいとこである賀川達哉と知り合い、事実上の夫婦関係となりました。
ただ、戦争が終わり、夫が帰ってきて加奈子に復縁を求めますが、加奈子はそれを拒否したのですが、未練のある亀井はそれ以来彼女を付け回すようになったというのでした。
黒蘭姫
このデパートの宝石売り場には黒装束の女性が現れ、宝石を万引きするという事件が度々起きていますが、事情があり、その犯人、デパート内では「黒蘭姫」と呼ばれる人物を追わないという暗黙のルールがありました。
「黒蘭姫」に宝石を取られても追いかけないかわりに、その代金はきちんとあるところから回収できているのです。
ところが、デパートの宝石売り場で殺人事件が起きてしまいます。
そうなると警察に報告しないわけにはいかなくなりました。
香水心中
一代で成り上がった香水王国の女帝、常盤松代。
彼女には子供がいましたが、すでになくなっており、彼女の血縁は孫の代の者たちになります。
松代の長男の息子である常磐松樹。
松代の次男の息子である常磐松彦。
松代の長女の娘である川崎松子。
松代は探偵金田一耕助にある調査を依頼し、軽井沢の別荘へ誘います。
金田一耕助は引き受けたものの、松代から突然のキャンセルの連絡を受け、かなり不満な様子。
ところが、事態が急転したのか、松代から再度金田一耕助に依頼がありました。
松樹とある実業家の若い人妻青野百合子の無理心中と見られていますが、松代はそれを認めず、犯人を探してほしいというのでした。
百日紅の下にて
復員兵風の男が佐伯一郎の元へふらりとやってきます。
彼は佐伯一郎の知り合いである川地謙三の戦友だと言い、川地が戦死したことを告げるとともに、川地からの言付けを佐伯に話し出します。
佐伯と川地の関係は佐伯の最愛の妻である佐伯由美が深く絡んできます。
由美は幼い頃に孤児になり、裕福な佐伯一郎が引き取ります。
女性に対して非常にシャイだった佐伯一郎でしたが、幼い頃から彼女を自分の理想の女性へと育て上げ、美しい女性となって妻としたのです。
ところがそんな折に佐伯一郎に召集令状が届き、由美を4人の友人に託して戦地へ赴きます。
4人の友人とは川地謙三、五味、志賀、鬼頭という人物。
佐伯一郎は負傷し、義足でセンチから戻ってきましたが、その後、由美は自殺しました。
その原因は4人の友人にあると思った佐伯一郎氏は翌年の命日の前に彼らを集め、お酒を配って話をしているときに事件は起きました。
五味が飲んだジンに青酸カリが入っているのでした。
感想
時代を感じる小説ですね。
今の時代背景とはかけ離れていて、若い世代がこの小説を読んでもちょっと違和感を感じるでしょう。
いずれの小説も昭和20年代~30年代に書かれたものです。
特に「殺人鬼」と「百日紅の下で」は戦後間もない頃、復員兵が登場するお話です。
「犬神家の一族」でも復員兵が登場しますから、やはり小説において時代というものはとても重要なピースですね。
短編ですが、どの作品も読み応えがありました。
ドラマ化なんかもされているようですが、どれも見たことはないですね。
機会があれば見てみたいと思います。
推理小説としては微妙なところもありますが、「香水心中」の話が一番おもしろかったですかね。
タイトルになっている「殺人鬼」が一番怖い話ですが、ちょっと今の時代にウケるネタではないですかね。
今は小説以上に酷い事件もありますしね。
同じタイトルで若手本格見捨てr-の旗手と言われていた綾辻行人さんの「殺人鬼」というものがありますが、あの小説とは随分と違います。
あちらはスプラッター小説ですが、こちらは古い時代背景の推理小説ですね。