悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

幸福な食卓 瀬尾まいこ

最近妻がハマっているのが瀬尾まいこさん。
この本も妻がブックオフで買ってきたもののようです。



この本の目次

幸福な朝食

バイブル

救世主

プレゼントの効用

登場人物

中原佐和子
この本の主人公。
多感な高校受験生から高校生になっていきます。
小さな体ですが、真面目で努力家の女の子。


元教師で「父親辞める宣言」をします。
そして薬学部への受験勉強を開始。



現在別居中ですが、仲が悪いわけでもなく、家族が住む家にやってきて料理を作ったり掃除をしたりしています。

兄(直ちゃん)
勉強スポーツとも万能な兄。
何をやらせてもうまくこなしてしまう人間ですが、音楽の才能はないようです。
またカノジョは直ぐにできるのですが、長続きしたことがありません。
ナンバーワンの進学校に進み、3年間ずっとトップで、周りからは天才と言われた人物ですが、大学は進学せず、農業をしています。

 

大浦勉学
佐和子と塾が同じ。
兄がとても優秀なので、早くもライバル視していましたが、お互い努力して直ちゃんと同じ進学校へ行くことができました。
佐和子とは全然性格もタイプも違いますが、2人はとても惹かれ合うことになります。

 

小林ヨシコ
派手は化粧と服装の直ちゃんの新しいカノジョ。
妹である佐和子にとっては、兄のカノジョとは認めたくないタイプ。

 

あらすじ

中原家はある事件をきっかけに崩壊しているのでした。
家族はみんなお互い大事に思っていますが、うまく行かないこともあるのです。
一番年下の娘の佐和子は高校受験を控えた真面目な女子中学生。
しかし母親は別居中。
兄はものすごく優秀でこのあたりでナンバーワンの進学校で3年間ずっとトップの成績でしたが、突然大学には行かないと宣言し、そのまま農業の仕事に就いたのです。
佐和子は受験を控え、塾へ行くことになりました。
そこにいたのはちょっと生意気そうな大浦という男子。
兄がとても優秀で有名だったので、変なライバル心を燃やしている男子でした。
しかし、どこかお互い惹かれ合うところがあったのか、2人は同じ進学校を目指します。
佐和子も兄が優秀過ぎて常に比べられるけれど、成績はごく普通。
兄のようにはできないものの真面目で努力家です。
大浦は裕福な家庭のようでしたが、佐和子に負けまいと努力をします。
2人は高校生という青春時代を相思相愛のまま、将来に対してもお互いに意識することもあるほどでした。

感想(ネタバレあり)

普通の家庭のように見える、またそういう書き方をしているのですが、かなり変わった家族たちです。
父親が数年前に自殺を図り、病院に知らせたのが娘の佐和子で、自殺を図った時期が梅雨の時期。
毎年その時期になると体調を崩すのです。
兄の直ちゃんは、この地区ではずば抜けた才能の持ち主で、進学校で常にトップの成績を3年間収めるほどの神童。
まあ、ごく普通の家庭に見えて、なかなか強烈な個性を持つ家族です。
兄が優秀で有名だったので、同じ塾になった大浦勉学に一方的にライバル宣言をされる佐和子。
しかし、2人の波長はものすごくあっていたのでしょう。
まるでジブリの「耳をすませば」のような中学生~高校生のカップルとなっていきます。
考えてみれば、このあたりは超リア充なんですよね。
ところが、大浦くんが佐和子のクリスマスプレゼントのために始めた新聞配達のアルバイトで事故にあってあっけなくなくなってしまいます。
真面目で素直な佐和子がついに壊れてしまうところなんか、本当に読んでいて辛いですね。
「父さんはさ、死にたかったのに、失敗してずっと生きてる。だけど大浦くんは死にたくなんかなかったのに、死んじゃうんだもん。死にたい人が死ななくて、死にたくない人が死んじゃうなんて、おかしいよ。そんなの不公平だよ」
佐和子が家族の前で吐いた言葉。
とんでもない暴言でしたが、兄の直ちゃんはそれを責めるどころか、深く傷ついた佐和子をしっかりフォローしていくところなんかとても素晴らしいです。

この本は「楽しい音楽」のような短編集ではありません。

 

tails-of-devil.hatenablog.com

佐和子を中心にした家族の物語。
外から見えるその家族はごく普通の幸せそうな家族に見えますが、精神的にはかなり疲弊している家族であることがわかります。
「普通の」家族というのがいかにすばらしいのか?というのを感じますね。
また、幸せというものを築き上げていくのは結構地道に時間のかかるものですが、あっけなく崩れ去る可能性は誰にもあるわけですね。

ちょっと最後のほうがあまりにも急激な展開でした。
読後感というのは、少し微妙に感じましたね。

Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.