悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

殺人ライセンス 今野敏

通勤時に読んだKindle Unlimited本です。
今野敏さんの本は「空席」を過去に読んだくらいで、あんまり知りません。

 

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登場人物

永友久(キュウ)
パソコンに詳しい高校生。
クラスメートたちからは、キュウと呼ばれており、そのままそれがハンドルネームとしてネットの掲示板を徘徊している。

相沢麻理
容姿端麗な女子高生。
高田祥子と仲が良い。
そういう鳥頃ではあるが、父親のことを嫌っている。

高田祥子
可愛らしく、頭も良い麻理に少し憧れている。
麻理と同じく父親とは距離をとているが、あることをきっかけにリビングで過ごす時間が増えてきた。

相沢優一
長年勤めていた会社でリストラになった元サラリーマン。
以前から興味のあった探偵になるために、家族に内緒で探偵学校で学ぶ。

丸谷直也
目黒署の刑事。
管理職ではなく現場の人間。
相沢とは高校時代の知り合い。

三田永吉
エイキチと呼ばれている本庁の若い刑事。
ネット犯罪などに対して、ある程度の知識を持っている。

あらすじ

永友久は中学生の頃からパソコンにハマり、常時接続のネット環境を得てからはそれに拍車がかかったような生活をしています。
両親とは最低限の言葉は交わしますが、それ以外はすぐに自室にこもってネットを見ているのでした。
クラスメイトからはキュウと呼ばれており、そのままネットではハンドルネームとしています。
ある日、偶然知ったアングラサイトに「殺人ライセンス」というものがありました。
どうやらそのサイトは殺人を行うためのゲームというものでした。
「殺人依頼書」というものでメンバー登録を済ませて早速ゲームを開始します。
ターゲットは28歳の男性ヤスジ。
殺人の第一歩はターゲットへの接触、その手段などの選択肢が出ており、誤った回答をするとゲームオーバーになるというものでした。
なかなか難易度が高く、殺人なんてできるものではないと思いつつもこのページをブックマークしておきました。
しかし「殺人ライセンス」のURLはなくなっており、そのサイトの入ることはできなくなっていました。

テレビから奇妙な音声が流れてきたということがクラスの女子の間で話題になっています。
高田祥子は友人の相沢麻理に打ち明けると、同じような音を聞いたといいます。
パソコンに詳しいキュウと呼ばれている永友久に相談することにしました。
キュウは、いろいろな掲示板で情報を聞いてみると言います。

相沢麻理の父親、相沢優一は長年勤めていた会社をリストラされます。
一流企業であるので退職金その他ですぐには困らないものの、働かないわけにはいきません。
ただ、優一は今までやってきた仕事には興味が持てず、昔からやってみたかった探偵になろうと加増に内緒で就職活動をしているふりをして探偵学校へ通っていました。
優一の高校時代には、進学校にかかわらず、卒業すると大学進学もせずに警察官になった丸谷直也という人物がいました。
探偵になるにあたって、警察官に相談してみようと連絡します。
居酒屋で合うことになりましたが、丸谷は相沢が探偵になると切り出したことに驚き、まともに仕事を探せと告げます。
そんなときに丸谷の携帯に連絡が入ります。
事件が起きたというのでした。
相沢の興味は一層強くなるのでした。

和田康治という28歳の男性が殺されました。
彼はある女性にストーカー行為を繰り返していたらしく、警察でもその女性との関係を詳細に調べています。
キュウはテレビのニュースでこの事件を知りました。
少し前にプレイした「殺人ライセンス」のゲームの再現のような気がしました。
彼は早速ネットでそういった情報を掲示板に書き込みました。


警察では和田康治の殺人事件はすぐに解決するものと思っていたにも関わらず、行き詰まりを感じています。
ストーカーの被害者である町田晴美が強く疑われましたが、犯行時には会社の研修旅行があり、完璧なアリバイがあるのでした。

大阪で少年が殺害されたニュースが流れます。
キュウはネットで確認すると、どうやらそれも「殺人ライセンス」のターゲットとなっていたものと一致するとのこと。
やがてネットでは「殺人ライセンス」の事件とテレビから不思議な音声が出てくることの話題が合わさり、死者からのメッセージではないかということが話題になっています。
キュウはやはり問題を捨て置けず、警察に通報しますが、まともに取り合ってくれませんでした。

相沢優一は探偵を始めるに当たり、パソコンが必要だと思い、購入します。
ところがパソコンは会社で使っていたものの、設定やらなにやらが大変難しく、お手上げ状態でした。
家族に内緒で進めていた探偵稼業ですが、そろそろ家族に話をしなければならないと感じています。
同時に年頃とは言え、娘が自分を相当毛嫌いしていることも気になっていました。
優一は妻に打ち明けるものの猛反対にあいます。
そして娘の麻理は無視を決め込んでいるようでしたが、クラスメイトにパソコンに詳しい人物であるキュウを紹介します。
キュウは相沢優一のパソコンの手ほどきをします。
そんなときに、キュウから貴重な「殺人ライセンス」の話題を聞くことになり、相沢は学生の頃の友人に刑事がいることを告げます。
丸谷は本町から来た若い刑事のエイキチ(三田永吉)とコンビを組んでいます。
エイキチはパソコンに詳しく、キュウと相沢からの情報に目をつけていくのです。
行き詰まっていた刑事たちに活気が蘇ってきます。
探偵稼業を始めることになった相沢、刑事の丸谷たちはこの怪事件を解決することができるのでしょうか。

感想

インターネットで海外サーバーに立てられた「殺人ライセンス」のサイト。
ゲームであるというものの、そこに書かれていた人物が実際に殺されてしまうという、ちょっぴりオカルト?と思いながら読んでいましたが、そういう要素は一切ありません。
しっかりとした警察の小説です。
派手に活躍っする人物はもちろんいません。
リストラになって、以前からやりたかった探偵になるというのも現実としてピンと来ません。
そもそもはじめての仕事がこのような非常に困難な連続殺人事件って、やっぱり小説だなあって思ってしまったりもします。
警察サイドの内容はそこそこ緻密で、雰囲気は出ています。
女子高生という微妙な年齢の娘からすると父親というだけで話もしたくない時期ってあるそうなのですが、この小説でも描かれています。
同時に小説の中で父と娘との距離が縮んでいくというシーンは何だか嬉しくなりますね。
私にもそういう時期があったのかな?と思い出してみたり。
年頃の娘を持つ親としてみている部分と、高校生の恋愛の部分も多少あって、それらの結末もちょっぴり楽しめたりもします。
エンディングもエピローグもあって、読後感は良かったですね。

 

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