悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

鬼龍 今野敏 陰と陽って?

 

今野敏さんの鬼龍を読みました。
この作品の後、シリーズとなっています。
私は適当に手に取った本をよむ主義?なのか、読んだあとで、順番を間違えた!ということがよくあります。
先にこのシリーズの後の作品である「豹変」を先に読んでしまったのですね。

 

tails-of-devil.hatenablog.com

 


というわけで、戴1作を読んでみたくなったのですね。

登場人物

鬼龍浩一
鬼道衆の後継者。
ただし、まだ修行中の身。

鬼龍春彦
鬼龍浩一の父親で鬼道の本宮では、禰宜の立場です。

鬼道武賢彦
鬼道浩一の祖父、鬼道春彦の父。
鬼道本宮の神主です。

久保恵理子
大学院生で、鬼の研究をしています。

中沢美紀
駆け出しのタレントですが、なんとも言えない魅力があります。

石成
テレビ局のプロデューサーで、中沢美紀に興味を持っています。

枕崎
食品会社「小梅屋」の専務。

夏葉亮子
枕崎専務の秘書。


あらすじ

あるテレビ局で、駆け出しのアイドル中沢美紀とプロデューサーの石成は、二人きりになります。
石成のお気に入りのアイドルでしたが、まさか一線を越えるようなことをするつもりはなかったのです。
ところが、中沢には不思議な魅力がありました。
十代の小娘にすぎないのですが、抗えないほどの性的魅力にあふれています。
石成は理性を失い、激しく2人は結ばれようとしていました。
そこに入ってきたのが鬼龍浩一という青年。
彼は中沢のファンだといい、握手を求めます。
まずいところを見られたと思った石成ですが、鬼龍と握手をした中沢は真っ青な表情となって、部屋から出ていきます。
石成は何があったのか理解できませんでしたが、その青年に感謝します。
「もう少しで取り返しのつかない過ちを犯すところだった」と言います。
その後、中沢美紀はカメラマンの水野に知らない人に追いかけられていると訴えます。
美紀のことが以前から気になっていた水野は、喜び勇んで彼女を保護しますが、今度は水野が彼女に取り込まれそうになります。
鬼龍は異変を察知し、二人を探し出します。
そして「お祓い」によって二人の状態を開放します。
鬼龍は鬼道衆のもので、亡者の出現があり、その依頼でやってきたことを明かします。


鬼龍は帰宅しました。
仕事の後はいつもなのですが、「気」を放出した後は激しい脱力感に襲われるのでした。
休息すれば回復するのですが、時間がかかります。
食事もせずにベッドに倒れ込みたい気分でしたが、久保恵理子という歴史学科の学生の突然の訪問を受けます。
彼女のテーマは鬼の研究でした。
鬼道衆の本拠地である奈良県桜井市に訪問し、そこで鬼龍武賢彦という老人から浩一を頼れと言われたというのです。

鬼龍浩一は修行中の身でした。
亡者払いという仕事を押し付けられているのでした。
祖父の武賢彦は神主、父の春彦は禰宜で、鬼道衆の本家であり、幼い頃から様々なことをこの親や祖父から教え込まれてきました。
一般的な祖父や親と言った人たちとはずいぶんと違う人たちであり、浩一は普通とは違う育てられ方をしてきました。
そんな父から電話が入り、次の「仕事」の依頼を受けるのです。
大手食品会社の「小梅屋」からの依頼でした。
鬼龍は小梅屋の子会社である「リトルプラム」という会社からの出向という体で小梅屋に乗り込むことになります。



 

感想

この小説も読む順番が逆でした。
警察の介入する場面はありません。
陰と陽のバランスというものが大事で、それらが崩れると様々な災いが起きるというところがこの物語で語られます。
陰陽師のようなものでしょうか。
小説内でも安倍晴明だとか語られるシーンが多くあります。
とは言え、この物語にはそういった古くからの言い伝えなどの話はわずかであり、エンターテイメント色のとても強い内容です。
官能小説ではありませんが、この小説に登場する亡者は人間の心を淫らに誘い込む淫魔のようです。
なので冒頭から、そういった表現が避けられません。
ただ、現実ではなく、亡者に取り込まれる前は脳内で繰り広げられる内容です。
ただ、取り込まれてしまうと現実にもおかしな状態となってしまうのですね。
この問題となっている小梅屋という食品会社では役員が秘書との不倫の末、自殺という事件があったり、職員の妊娠など淫れきっているということで鬼道衆に依頼があったという点で物語が大きくなっていきます。
冒頭の部分の駆け出しアイドルですが、彼女の話もプロローグと思っていましたが、そうではなく、終盤の内容に大きく関わってきます。
推理小説というものではなく、警察小説、刑事物というものでもありません。
一種のスーパーヒーローのような気がします。
今野敏さんも大変魅力的なキャラクターを作り出したものですね。
ただ、少し残念なのは、久保恵理子というキャラクターを出したのですが、物語の中心には絡んできませんでした。
むしろ、小梅屋の枕崎専務の秘書である夏葉亮子がヒロインに取って代わってしまっているのかもしれません。
主人公の鬼龍浩一とともに体を張った戦いを繰り広げてくれます。
面白かったです。
芸能人や芸術家などは「陰」の気を集めやすいという指摘が何度かこの小説でも描かれています。
深いところまではわかりませんが、感覚的に言わんとすることがわかります。
クリエイターや表現者というものは「尖った」才能を持っていて、バランスという点では著しく書いている人が多いと思います。

この小説を読んでいて、取り込まれたのは私だったのかもしれません。
いつもは夢を見ない古ぼけた私の頭ですが、この小説を読んでいるときには艶めかしい夢を見ました。
もう、その夢が還暦前のジジイにとっても嬉しくなるほどで、夢の続きが見たくて仕方がなかったです。
人間の心、脳というものは案外脆いものですね。
私個人の素養の問題もあるかもしれませんけどね。

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