悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

テミスの剣 中山七里

3月はまだ終わっていませんが、4月がなかなか厳しい状況に陥りそうです。
割りとキャリアの浅い人がポロポロとやめてしまい、新人が育ちきっていないので、想像するだけでも恐ろしいし、うんざりします。

さて、こちらの本は中山七里さんの小説です。
最近読んだ本には違いないのですが、なんだかんだとブログに書こうと思いつつ時間がとれませんでした。
下書きしてあったものに少し手直ししています。


 

この本の目次

一 冤獄

二 雪冤

三 冤憤

四 冤禍

五 終冤

エピローグ

解説 谷原章介

登場人物

渡瀬
主人公。
埼玉県警の交番勤務で手柄を立て、念願の刑事となる。

鳴海健児
埼玉県警のベテラン刑事で若い渡せの教育係。

久留間兵衛
不動産業を営みながら、闇で高利貸しをしていた。
強盗に襲われ殺害される。

楠木明大
久留間兵衛に対する強盗殺人で逮捕されるが、死刑判決に絶望し、拘置所で自殺。

高遠寺静
東京高等裁判所判事。
久留間兵衛強盗殺人事件で被告の楠木明大を第一審の通り死刑の判決を出す。

恩田嗣彦
検察庁の検事で渡瀬が尊敬する人物。

迫水二郎
腕のいい錠前職人だったが、犯罪に手を染める。

尾上善二
埼玉日報社会部の記者でスクープのためにあちこちに潜り込んでくる人物。

あらすじ

昭和59年。
渡瀬は新婚の新米刑事で、ベテランの鳴海刑事が教育係としコンビを組んでいます。
鳴海は検挙率ナンバーワンを誇るほどの豪腕刑事ですが、人間としては尊敬できるところはない人物。
久留間兵衛という不動産業者の殺害事件で逮捕した楠木明大を強引な取り調べで自供させ、立件します。
裁判所の判断は死刑判決。
数少ない女性裁判官の高遠寺静は、明大の無実を訴える声に心を動かされるものの、第一審を裁いた学生時代からの先輩でもある黒崎判事のこともあり、第一審を指示します。
これにより楠木明大の死刑が確定しましたが、気の弱い明大は拘置所で自殺します。
楠木明大を追い込んだ人間の一人として、思い悩む渡瀬と違い、鳴海は気にもかけていない様子です。
鳴海は定年を持って退職しますが、渡瀬が上げた窃盗犯迫水二郎を取り調べると殺人事件が浮かび上がってきます。
そして余罪として過去の久留間兵衛強盗殺人事件も迫水が起こした犯罪であることがわかります。
つまり楠木明大は冤罪によって命を絶ったわけです。
この事実を隠蔽しようとする警察組織と真実を明らかにしようとする渡瀬は対立します。
渡瀬はこの事件を裁いた高遠寺判事と恩田検事に相談します。
様々な妨害を受けながらも警察の組織ぐるみの冤罪隠しは明るみに出ます。
しかし、その余波は大きく、妻とは別れ、警察組織の中では浮いた存在となります。
そんな渡瀬は、もう二度と間違いを犯さないと心に誓いを立て、刑事としての仕事に打ち込みます。

真犯人である迫水は死刑を免れ無期懲役となっていました。
しかし模範囚であり、平成24年に出所します。
過去の事件はさらなる展開を迎えるのです。

感想

冤罪を扱った物語で、前半の部分だけでも十分まともな小説です。
しかし大どんでん返しを得意とする中山七里さんの読者は、そういうものでは納得しないでしょう。
この物語は後半部分にさらなる仕掛けがあります。
この人が?と思える人が第2の事件のカギを握るのですね。
ちょっと途中で登場してくる元芸能人というのが後出しジャンケンの気がしないでもないです。
また判決を下した高遠寺静判事の孫娘も登場し、物語に人間ドラマがありますね。
渡瀬刑事が若い頃から描かれます。
この登場人物は弁護士御子柴シリーズにも登場します。

 

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