悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

ネメシスの使者 中山七里

以前、通勤時に読んだ本です。
中山七里さんの「テミスの剣」と対になるような内容です。
死刑制度について考えさせられます。
先日あったニュースの影響もありますけどね。

news.yahoo.co.jp

 

この本の目次

一 私憤

二 公憤

三 悲憤

四 憂憤

五 義憤

六 怨憤

解説 宇田川拓也

 

登場人物

渡瀬
埼玉県警のベテラン刑事。

古手川
渡瀬の部下。

岬検事
優秀な検事で信頼できる人物。

渋沢判事
死刑判決を出さないため、別名「温情判事」と呼ばれる人物。

軽部亮一
通り魔殺人を起こした人物。
罪のない無抵抗な人物を殺害。

二宮圭吾
ストーカー殺人事件を起こした人物。
対象となった女子大生とその祖母を殺害。

 

 

あらすじ

埼玉県警のベテラン刑事の渡瀬とその部下である古手川は65歳の女性の殺人事件を捜査します。
被害者は戸野原と名前は変えているものの通り魔殺人を起こした軽部亮一の母親でした。
そして現場には血で書かれたネメシスの文字がありました。
ネメシスとはギリシャ神話に登場する復讐の神。
軽部亮一の起こした通り魔事件は、なんの罪もない無抵抗な女性や子供を襲った悪質な事件でしたが、求刑の死刑にならず、無期懲役となったものでした。
担当した渋沢判事は死刑を避け、温情判事とも呼ばれる人物でした。
刑務所にいる軽部亮一に面会をしますが、軽部は母親が殺されたことに対しても悲しむどころかむしろ喜んでいる様子でした。

さらには別の事件も引き起こします。
第2の事件は二宮圭吾というストーカー殺人犯の父親でした。
秘匿していた「ネメシス」の事件はいつの間にかマスコミの知るところとなり、ネメシスは凶悪犯が死刑にならなかったために立ち上がった「英雄」のような扱われ方をするようになります。
警察、検察や司法に携わる人間が恐れたのは、ネメシスの存在を大衆が受け入れることは今の法治国家の根底を揺さぶる問題だったからでした。

ネメシスとは一体何者なのか?渡瀬たちは捜査の網を広げていきます。

感想

死刑の是非と言うのは、色々考え方はあると思います。
世界の中で死刑制度を維持している日本は、「異端」と見られているようですが、そんな髪は厳しいのか?と言うと疑問です。
死刑制度のある、共産圏、中国や北朝鮮などと比べると全く異なります。
まあ、あれらの国と比べること事態がナンセンスだと思うのですが、死刑が求刑され、それが実施されるというのは凶悪犯罪のうちのごく一部に過ぎません。
むしろ、ここまでやっても死刑にならないのか?という判決、判例が多いのです。
昨日のニュースにもありましたが、吹田市の交番を襲って拳銃を奪った事件で死刑から一転、無罪判決が下りました。

ja.wikipedia.org

この事件だけではないですが、日本において、このような凶悪事件で無罪となる、あるいは死刑を免れる判決は結構あります。
死刑制度のない海外の刑罰と比べても厳しいとは思えません。
ただ、人が人の生命を奪うということをしてもよいものなのか?という点でそもそも死刑というものを考えてみると、それはそれで微妙と思えるのです。
ただ、被害者感情を含めて、国民の凶悪事件に対する感情は死刑を求めています。
死刑制度に対する賛否というものはもっと国会などできちんと議論をすべき大きな問題です。
しかし、今の国会議員にそうした議論をする素養があるかと言うととてもそうは思えないです。
罪ある人を更生し、社会に復帰させるということが大きな目的となっている日本では、凶悪犯罪に対して、甘いと考える人が多いです。
更生することができる犯罪者はもちろんたくさんいると思いますが、その一方で生まれながらに善悪の感覚が欠如しているもの、サイコパスなどは更生のしようが無いとも言われています。
こういう凶悪な人物に対しては絶対に社会に出してはいけないようにも思えます。
そもそも人の心の中を見ることができません。
反省した、更生したという判断をそういった施設が行うわけですが、仮に更生したと思われた人物が再犯した場合、判断した人たちが責任を負うこともありません。
被害をうけるのはやはり、なんの罪もない善良な人々なんです。
もちろん犯罪者が再犯するというのは、犯罪者を受け入れてくれない社会というものの問題もあります。
かなり本の感想とは離れてしまいましたが、こういう本を読むと「罪」とはなにかということを考えてしまいます。

さてこの本はどんでん返しが得意な中山七里さんの本ですから、当然終盤にかけてあっと驚く仕掛けがあります。
今回の仕掛け、エンディングには好き嫌いがあるとは思いますが、エンターテイメントとして楽しむなら、読んでいる間は大変おもしろいことは間違いありません。
「テミスの剣」で登場した渡瀬刑事も大活躍します。
また「悪徳弁護士御子柴礼司」シリーズにもライバルとして登場した岬検事も登場します。
中山七里ファンなら、おそらくこれらは読んで更に楽しんでいるんだろうと思います。

 

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