悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

贖罪の奏鳴曲 中山七里

WBC、今日も勝ちました。
佐々木朗希投手があの震災被害者でもあり、父と祖父母を失ったそうですね。
そんな過去を持つ佐々木投手に、忘れられない3.11に合わせての登板でした。

球は速く、160Km/h台を連発しますが、味方のエラーもあって、初回に先制点を許してしまいます。
ところが、その後は三振ショーでした。
球数制限があるので、4回途中まで、11アウトまでしか登板できませんでしたが、そのうち8つが三振。
やはり怪物ですね。


さて、悪徳弁護士御子柴礼司シリーズの第1作。
通勤時などに読んでから、結構日数雨が経過しています。
これまで2作目、3作目を読んでいたので、重なる部分もありますね。

 

この本の目次

第一章 罪の鮮度

第二章 罰の跫音

第三章 贖いの資格

第四章 裁かれる者

登場人物

御子柴礼司
主人公。
どのような不利な状況でも、鋭利な知能で、裁判を有利に導く敏腕弁護士。
事案を選ばず、高額報酬を要求することから、悪徳弁護士としても有名。

 

谷崎
東京弁護士会の会長。
いわば日本の弁護士業界のボス的な人物だが、高齢であり、後進を託せる人物として御子柴に興味を持っている。


日下部洋子
御子柴弁護士事務所に勤める事務員。
事務能力は高いが、若いため、経験が浅く、敵が多い御子柴に対する嫌がらせなどに適切な対処ができない。

 

宝来兼人
派手なCMで荒稼ぎをしている新進の弁護士。
資金、知名度をバックに「次期会長候補」と名乗っている。

 

東條彰一
零細自営業を営む。
事故により、意識不明の重体になるが、集中治療室で息を引き取る。
息子の幹也に工場を継がせるためにあらゆることをしていた。

 

東條美津子
彰一の妻で幹也の母。
集中治療室で人工呼吸器を操作して、彰一の命を奪い、多額の保険金を得たため、保険金殺人の被告となる。


東條幹也
生まれながらの脳性麻痺により、左手以外は自由に動かせないほどの障害を持つ。
脳の機能は正常だが、しゃべることもできないため、会話は携帯電話の文字入力によって行っている。
父彰一は早くから息子のために、工場をオートメーション化し、幹也はそれらのオペレーションをすべて行えるまでになった。

 

渡瀬
埼玉県警の強面のベテラン刑事。
身分は警部だが、圧倒的な検挙率を誇る、いわば現場ではエース的な存在。

古手川
渡瀬の部下。

稲見武雄
少年院で非行少年を更生するための教育担当。
御子柴にとっては親以上の存在。

 

嘘崎雷也
少年院で知り合った人物。
関西弁でよくしゃべる人物で、弁護士を目指すという。


尾上善二
とくダネを追いかける地方紙の記者で、事件の匂いを嗅ぎつける才能を持っている。

 

あらすじ

御子柴礼司という弁護士は、いかなる案件でも高額報酬さえ貰えれば、依頼を受け、圧倒的な不利な状況でも何らかの有利な条件をもぎ取っていきます。
理路整然とした弁舌とともに、圧倒的な勝率で、この業界では知られた存在です。
同時に法外な光学を要求することでも知られており、悪徳弁護士というありがたくない評価も得ています。
そんな人物だけに、有罪と思われた人物の無罪を勝ち取ったりするため、被害者からは恨まれたりすることも多い、敵の多い人物でもあります。
この日も、弁護士事務所のプレートが真っ二つに割られ、ペンキがかけられていました。

埼玉県警ではある死体を発見します。
操作にあたるのは現場主義のベテラン渡瀬とその部下古手川。
事件の匂いを嗅ぎつける尾上善二、通称「ネズミ」が早速嗅ぎつけます。
被害者は加賀谷竜二というスクープを追いかける記者ですが、最近は知りえた情報を元に強請りをしていたという人物でした。
「ネズミ」が言うには、加賀屋がゆすりをしていたと思われる人物こそが、今話題になっている保険金殺人の被告人である東條美津子でした。

話題の東條美津子の弁護を担当することになった御子柴は、息子である幹也に会いに行きます。
幹也は生まれながら、脳性麻痺により障害があり、左手以外は動きません。
また言葉も発することはできないのですが、視聴覚や脳の機能には健常者と変わらないのでした。
東條製材所は社長の彰一が息子の幹也にこの会社を継がせるために、ありとあらゆる投資をしてきました。
幹也は体は不自由ですが、PCやフォークリフトを操り、工場の仕事は一通りこなせるのでした。
彰一はトラックに積んである資材の落下に巻き込まれ、意識不明の重体になります。
集中治療室で監護をする妻の美津子。
人工呼吸器のトラブルにより、彰一は息を引き取ります。
世間は当初、零細企業の妻賭して、また障害を持つ息子の母として献身的に働く美津子に同情的でしたが、彰一がなくなる少し前に巨額の保険金がかけられ、なおかつ人工呼吸器にはトラブルがないことがわかります。
病室にあったカメラの映像には美津子が人工呼吸器を停止させた証拠が写っており、これまでの気の毒な妻から、稀代の悪女へと世間の評価は変わるのでした。
この裁判で弁護していた弁護士が高齢のため、体調を崩し、代わりに弁護することになったのが御子柴礼司でした。

感想

御子柴礼司シリーズの第1作です。
いきなり死体遺棄シーンから始まります。
現実にはこんな弁護士はいないと思っていたら、実在していたのですね。
高校生首切り殺人事件の人物(当時少年)が少年院を出てから弁護士になって活動していたらしいですが、身元が明かされてからは廃業したとか。
この物語の主人公である御子柴礼司のモデルとなった人物ですね。

 

tails-of-devil.hatenablog.com

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 中山七里さんの得意とする大どんでん返しはやはり後半にキチンとありまして、そう来るか?とうならせるところがあります。
冷静に考えると少し強引にも思えるのですが、絶対に犯人ではありえないと思われる人物こそが「真犯人」なのです。
ただ、「弁護士」として東條美津子の無罪を勝ち取ったその手腕は鮮やかでしたが、その後に真犯人に語るのですね。
ゾクリとする展開でしたね。

また序盤にあった、事務所のネームプレートを割った人物というのが、イジメを苦に自殺した子供の母親でした。
イジメをしていた人物の弁護をしていたのが御子柴で、彼女は御子柴を恨んでおり、その思いが余って、御子柴を刺していしまいます。
シリーズ2作目がそういう状況からスタートするわけですね。

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