悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

恩讐の鎮魂曲 中山七里

 

大型寒波が日本列島にやってきています。
ものすごい寒さですね。
不要不急のようがない人は外出しないように言われていますが、全く外に出ないわけにも行かない人がたくさんいますからね。

 

前回、2作目から読み始めたこの「悪魔の弁護士 御子柴礼司」シリーズの3作目になります。
いつものように通勤電車内で愛機Kindle Paperwhiteで読みました。

 

tails-of-devil.hatenablog.com

この本の目次

第一章 被告人の従順

第二章 被害者の悪徳

第三章 証人の怯懦

第四章 弁護人の悩乱

 

登場人物

御子柴礼司
高額請求をすることと引き換えに、圧倒的に不利な状況でも覆して、何らかの有利な状況を勝ち取る有能な弁護士。

日下部洋子
御子柴弁護士事務所で働く事務員。
御子柴の本当の正体を知っても、変わらずに仕事を続けています。

稲見武雄
御子柴礼司が少年院で指導していた教官で、現在は伯楽園という特別養護老人ホームにいます。

栃野守
伯楽園のベテラン介護士
稲見に鈍器で頭部を殴打されたことが元で死に至ります。

山崎
広域暴力団宏龍会の幹部。
知的で頭の回転が早く、御子柴礼司の能力を高く評価しています。

谷崎
東京弁護士会の大物。
懐が深く、御子柴を持ってしても計り知れない器の深さがある人物です。
どういうわけか御子柴の過去を知っても、彼の弁護士としての能力は高く買っているようです。

あらすじ

ある客船の事故のシーンから始まります。
韓国船籍のブルーオーシャン号の沈没事故があり、救命ボートはおろか、救命胴衣さえ整っていなかったこの船に取り残された乗客たち。
男は自らが助かるために、恐怖に怯えるか弱い女性から救命胴衣を暴力で奪い取ります。
乗客の携帯電話で撮影されたとみられるこの映像が世間の目にさらされる事になりました。
すぐに犯人探しが始まり、警察は暴行事件としてこの男を逮捕、立件。
しかし身体の危機的状況のおける緊急避難とされ、無罪となりました。

かつては「死体配達人」と呼ばれていた少年は、成長し、今は「悪魔の弁護士」と呼ばれるほどの辣腕弁護士になっています。
前回の法廷で御子柴礼司は、自身の過去がさらされ、多くの顧客を失います。
しかし、その能力は高く、脛に傷を持つ暴力団などからは頼りにされる弁護士として仕事はあるのでした。

自身が少年院時代に指導してもらった稲見武雄が殺人の罪に問われていることを知り、どうしても彼の弁護をする必要があると、国選弁護師から強引にその立場を奪い取ります。
75歳にもなり、足も不自由な稲見は特別養護老人ホーム「伯楽園」で暮らしています。
そこにいるベテランの介護士栃野守を鈍器で殴打して、死に至らしめたという今回の事件。
もともと稲見と栃野は反りが合わないということなのか、仲が悪く、章っ中高論になっているのは周知の事実でした。
事件の目撃者も複数います。
証拠となる鈍器もあり、何よりも殺害したことを本人が自供しています。
稲見は、御子柴の弁護を拒み、罪に服すつもりなのです。
御子柴はこんな八方塞がりの状況の中で、恩師である稲見を救い出すことができるのでしょうか。

感想

前作’(追憶の夜想曲)が面白かったですが、今回も大変な状況から弁護をスタートさせるストーリーです。
どのような小説も、主人公が不利な状況から終盤に一気に変わってくる、どんでん返しが面白いわけで、今回の事件も読みながら、どうなっていくんだろうと思っていました。
前作で、御子柴礼司が「死体配達人」であることはバレてしまっています。
彼の罪派消えるものではなく、そういう意味で主人公を素直に見ることはできないのですが、ストーリーは本当によくできていて、エンターテイメントとして楽しむのには痛快です。
ただ、今回は前回以上に大変です。
前回も犯行が明らかで状況や証言が揃いすぎている状況でしたが、今回はそれ以上にどうしようもない状況です。
何と言っても弁護される側の依頼人が非協力的を通り超えて、弁護してほしくない様子なのです。

元いた国選弁護士は検察官上がりのヤメ検で、依頼人の弁護よりも社会正義を上に考えている人物です。
そんな国選弁護師から今回も強引に担当を替われと凄んでいく辺のやり取りも大変面白かったですね。

冒頭のシーンでは、セウォル号事件を思い出します。
学生の旅行にも利用されていたこの船で、多くの高校生たちが悲劇に巻き込まれてしまいました。
この事件と同じく、この小説でも船の運行を預かる船長以下船員たちは乗客を見捨てて先に逃げ出した点なども、スパイスが効いていると言う感じですね。


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