悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

追憶の夜想曲 中山七里

弁護士御子柴礼司シリーズらしいです。
名前はなんとなく聞いたことがあるのですが、この本を読むまでは前知識はありません。
テレビドラマにもなっているらしいですね、いや、何も知らずに読んでみるというスタイルは相変わらずです。

この本の目次

第一章 弁護士の策謀

第二章 訴追人の懐疑

第三章 守護人の懊悩

第四章 罪人の韜晦

登場人物

御子柴礼司
過去に重い十字架を背負う、弁護士。
その鋭い舌鋒と論理で様々な裁判を勝ち抜く実力者で、悪魔の弁護士とも。
相手を選ばず、高額な請求をする弁護士としても知られています。

 

津田亜希子
津田伸吾を殺害した罪で裁判となっています。
美雪という13歳の娘と倫子という6歳の娘がいます。

津田要蔵
津田慎吾の実の父親で近所に住んでいます。
息子を殺されたにも関わらず、息子のこれまでの行いなどを鑑みて、嫁の亜希子の減刑を求めています。

 

あらすじ

弁護士である御子柴礼司は、ある主婦が夫を殺害した事件の弁護をするために、担当していた弁護士からその仕事を奪い取ります。

どこにでもいる冴えない主婦の津田亜希子が夫の伸吾をカッターナイフで刺殺したという事件。
供述と証拠や状況から、これを覆すのは難しく、どうやって減刑を狙うかと言うのがポイントとも思われました。
被害者の津田慎吾は、ソフトウェアの会社ではそこそこ羽振りが良かったもののリストラに会い、仕事を失います。
運よく出世しただけの人物でしたが、自分の能力を過信し、地道な就職をせずにトレーダーとしての成功を目指しますが、結局は退職金も使い果たし、借金だらけになってしまいます。
生活は妻のパート頼みであり、生活は困窮していました。
そんな中、亜希子のパート先の男性に惹かれていき、それがきっかけで夫と口論となります。
夫の伸吾に暴力を受け、カッとなった亜希子は傍にあったカッターナイフで夫を刺殺したという事件でした。
殺害後、夫の死体を処理しようとしていたところ、夫の実の父親である津田要蔵が家にやってきて、その現場を見られてしまいます。
要蔵は息子を嫁に殺されたわけですが、嫁には非常に同情しており、減刑を求める側に立っています。

御子柴は、まず亜希子の同僚の男性から重要な証言を得ます。
彼は別に結婚を約束した恋人が折り、亜希子とは全く恋愛関係もなかったといいます。
続いて御子柴は亜希子の過去を調べていきます。
彼女は幼い頃、福岡に住んでいましたが、妹が殺害され、その時のショックで記憶を失っています。
被害者であるにも関わらず、津田家は誹謗中傷にさらされ、神戸に引っ越しをしました。
真相を次々と暴いていく御子柴。
しかし真相に触れていくとともに御子柴自身が非常に辛い立場に立たされることになります。

 

 

感想

いつものように、御子柴礼司シリーズの最初の作品ではありません。
本来はちゃんと1作めから読むのが正しいのでしょう。
相変わらずやらかしてしまっています。
この追憶の夜想曲は第2作でした。
ついでにいうとこの後に読んだ「恩讐の鎮魂曲」は3作目であり、1作目はまだ読んでいません。
第1作は「贖罪の奏鳴曲」。
読んでみたいですが、2作品を読んで御子柴礼司の手の内をある程度知ってしまったので若干興味が失せてしまっていますね。
ちなみに第4作が「悪徳の輪舞曲」。
第5作が「復習の協奏曲」です。
このシリーズにはすべてクラシック音楽の名前がついています。
漢字で書かれていますが、読みは違います。
奏鳴曲はソナタ
夜想曲ノクターン
鎮魂曲はレクイエム。
輪舞曲はロンド。
協奏曲はコンチェルト。
タイトルだけでも素敵ですよね。
しかしタイトルとは違って、この主人公の弁護士御子柴礼司は重い罪を背負っているのですね。
小説の世界だからこそで現実にはありえないと思っていましたが、現実に同級生を殺害した少年が未成年であるため、成人としての罪を問われず、法的には全く問題なく弁護士として活動しているそうです。
高校生首切り殺人事件(サレジオ事件)で、1969年なので、半世紀以上前の事件になります。

高校生首切り殺人事件 - Wikipedia

またこの事件をもとにした小説「心にナイフを忍ばせて」というものもあります。
結局この事件の少年は、司法試験に合格し弁護士としても成功を収めていましたが、彼の少年時代の事件が明るみに出てからは、批判は免れず、廃業に追い込まれています。

さて、御子柴礼司という強烈な個性を持ったキャラクターがこの小説の主人公で大活躍します。
彼は、過去の過ちを精算し、二度と過ちを犯さない誓いとともに自身の知能の限りを絞って法廷で闘います。
その切れ味は素晴らしいですし、あっと驚くどんでん返しもあります。
今回の事件では御子柴礼司の起こした過去が法廷で暴かれてしまいますが、それ自体も大変な驚きですが、更にその後の真相についても驚くべき事実が浮かび上がってきます。
読み応えありましたね。

 

 

 

 

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