悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

野性の証明 森村誠一


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薬師丸ひろ子さんデビュー作

実は、「人間の証明」よりもこちらを先に読んでしまいました。
映画は見ていませんが、高倉健さんと薬師丸ひろ子さんの映画の印象が強いのです。
薬師丸ひろ子さんは、私と同年齢です。
なので私の周りの友人たちもものすごくファンが多かったです。
またアイドルの追っかけ何かとは無縁な、割と真面目なタイプが薬師丸ひろ子さんに対してはすごく「熱」が入っていましたね。
なぜそんなに人気があったのかはわかりませんでした。
私には全く刺さらなかったのですね。
ともあれ、この作品が確か彼女のデビュー作だったはずです。
その後も多くの映画作品で売れに売れていました。
角川映画の看板といってもいいのではないでしょうか。
私は全く角川映画を知らないので何も解説はできませんが、そんな私ですら、角川映画薬師丸ひろ子さんの作品は名前だけならいくつも出てきます。
まあ、友人の影響もあるのかもしれません。
でもかなりアレな映画も多かったと聞きます。
野性の証明
セーラー服と機関銃
探偵物語
里見八犬伝
ねらわれた学園
タイトルは知っていても内容がわかりませんでした。
探偵物語」はおっさんになってから読みました。
野性の証明」も映画化を前提に当時売れっ子であった森村誠一氏に書いてもらった作品らしいのです。
にもかかわらず、原作と映画では大分ストーリーが違うとか。
映画は見ていませんが、原作は読み応えがありました。
でも主人公の味沢がどうしても高倉健さんのイメージがありすぎて、映像が浮かんできます。
味沢の養子の賴子は薬師丸ひろ子さんのイメージはありません。
当時中学生だった薬師丸さんとは違い、賴子は8歳くらいですから、もっと幼いですよね。

 

人間の証明」は刑事モノと言えるでしょう。
野性の証明」でも刑事は登場しますが、どちらかというと地方都市を牛耳る大場一族との戦いが見せ場になっています。
そして結末が悲しいのです。

映画版は和製ランボーという人もいますが、小説はランボーぽくはないです。
自衛隊と派手な格闘なんてシーンはありません。
地方都市の暴走族やらチンピラとの喧嘩のシーンなどはありますが、銃火器をぶっ放すようなシーンは皆無です。


あらすじ

岩手県の過疎の村で村民が全員斧で惨殺されるという痛ましい事件が起きました。
ヒッチハイクでこの村に訪れた越智美沙子も命を落とします。
唯一の生き残りである長井頼子は、目の前で良心が殺されたのを目撃したのか、記憶が失われています。
唯一の生存者の記憶がないため、事件は迷宮入りの状況でしたが、頼子を養子に迎えた味沢という男が現れ、この事件を追っていた刑事は色めき立ちます。

東北の地方都市では大場一族が支配しています。
そして大場一族の裏方として暗躍するのが地元のヤクザで、彼らと警察とは良くも悪くも共存共栄の関係でした。
味沢はこの街で保険外交員をしています。
ハンドル操作を誤って転落したという事故で多額の保険金がおりたのですが、その経緯に不審を抱きます。
事件に関わっているのは大場の闇を担当する地元のヤクザ組織の幹部です。

地元の新聞社に勤める越智朋子は、父が起こしたこの新聞社でなんとか大場一族に一矢を報いたいと思っていたのでした。
彼女の父は大場一族のこの都市の支配に対して、孤軍奮闘していましたが、不審な死を遂げます。
この町では大場一族に逆らうものはいなくなってしまい、父の無念を晴らすことができないのを悔いながら生きている状況でした。
そんなときに味沢と知り合い、不審な保険金の事故を調べるうちにもっと大きな事件を発見してしまいます。
味沢と越智は恋人のような仲となり、協力し合いながら、事件と大場一族の闇に迫ります。

地元のヤクザと持ちつ持たれつの警察組織は、味沢の怪しい動きに警戒感を強めます。
そしてヤクザの保険金詐欺を調べもせずに事故として処理したことから、それらの発覚を恐れて、味沢たちの妨害をしてきます。

保険金詐欺では、事故で亡くなったのではなく、殺害した妻を工事中の現場のコンクリートに埋めたのでした。
工事現場の場所は大場の息がかかっていた土地で、ゴルフ場の予定地となっているところでした。
不正にまみれた案件であり、発覚した詐欺でヤクザと警察の担当者は飛ばされてしまうことになります。
この県を足がかりにしようと意気込んでいた越智朋子でしたが、それは叶わず、逆に暴漢に襲われて殺されてしまいます。

味沢は彼女の無念を晴らすために更に追求をしていきます。
そして僅かな手がかりから、地元の暴走族を割り出しました。
その地元の暴走族を仕切っているのは大場一族の末の息子の成明でした。
息子を守るために大場一族のボスである一成は、さらなる悪事に手を染めていきます。
追い詰められる味沢。
しかし味沢には記憶を失いながらも、超人的な感覚をもつ養子の頼子が、父の危険を知らせます。

味沢は元自衛官で特殊な部隊でした。
数年前に起きた事件の当時、あの村での惨殺事件にも関わっています。
事件当時、過疎の村の近くで彼ら特殊部隊の訓練があり、それは極限まで彼らの肉体、精神を追い詰めるほどの訓練でした。
味沢は仲間の隊員が起こした事件ではないかと思っていたのですが、真相は別にありました。
悲惨な事件を目の前に、彼は自衛官をやめて、今の仕事についたわけです。
彼はすべてが凶器と言えるほどに訓練された精鋭でした。
そのため、ヤクザや暴走族に怯むことなく、向かっていきます。
しかしながら、彼は以前の事件の犯人と見られ、またこの都市では大場一族に逆らった異端児として抹殺しようとしています。
そもそも地元警察は大場の私設警察のようで全く正義はありません。
圧倒的に不利な状況で大場成明たちの暴走族と対峙し、多勢に無勢の中、驚くような殺戮が繰り広げられます。
斧をもって殺戮していく養父を見た頼子は記憶を取り戻し、「彼が犯人だ」と告げるのでした。

この事件の後、大場一族とこの都市の関係が明るみに出ますが、味沢も病気で亡くなり、真相は闇のままです。

実は村を惨殺したのは長井頼子の父親でした。
彼は病気で狂ってしまい、斧を使って妻や村人たちを次々に惨殺します。
ハイキングに来ていた越智美沙子も彼によって殺されたのでした。
狂った人間を仕留めたのが味沢でしたが、頼子にとっては父親であり、ショッキングな事件で記憶が飛んでしまった状況でした。
数年後、味沢は自衛隊を辞めて、彼女の養父となったのでした。

 

映画との違い

映画は見ていないのですが、かなり違うみたいです。
和製ランボーという評価があったり、予告映像を見たりしていると確かにアクション要素の多い映画な気がします。
この小説には戦車も自衛隊も出てきません。
どこでどう間違ったらこんな映画になってしまうのか不思議です。
まあ、見ていないので、評価は控えたいと思いますが、一度見てみないといけないかもしれませんね。
しかし銃撃や殺し合いというのはこの作品の本質ではないと思うのです。
角川映画というものが原作を曲げに曲げてしまうというのはよく言われていますが、はじめから映画化をすることを前提に、当時の売れっ子である森村誠一氏に書いてもらったにしては、ひどい話だと思いますね。

映画はともかく、小説のないような素晴らしかったですね。

 

 

 

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