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タクシー運転手 約束は海を越えて

韓国映画で演技派として評価の高いソン・ガンホが主人公であるタクシー運転手を演じている映画です。
全く前知識もなく、タイトルは有名なので、Amazonでの無料公開が終わると言うことで見てみました。

映画の概要とキャスト

監督:チャン・フン

脚本:オム・ユナ

公開:2017年(韓国)/2018年(日本)

上映時間:137分

製作費:150億ウォン

興行収入:958億ウォン

 

キム・マンソク:ソン・ガンホ
ソウルで個人タクシーを営む貧しい男性。
妻に先立たれ、一人娘を育てています。

 

ドイツ人記者ピーター:トーマス・クレッチマン
日本にいるドイツの報道記者ですが、隣の韓国のニュースが入らないことから現地に赴き、取材を敢行します。


ファン・テスル(ユ・ヘジン)
光州のタクシー運転手で、ソウルから来たタクシー運転手と外国人記者のために全力を尽くします。

 

ク・ジェシク(リュ・ジョンヨル)
光州の学生で、語学ができることからドイツ人記者の通訳のために彼らと同行します。

 

 

あらすじ

妻を失い、愛娘を育てるために四苦八苦している貧乏なタクシー運転手であるキム・マンソク。
彼は家賃の滞納もあり、お金を必要としていました。
タクシー運転手が集う食堂で、10万ウォンという高額で光州まで連れて行って欲しいという外国人記者がいるという話を小耳に挟みます。
キム・マンソクは彼らを出し抜き、外国人記者であるピーターを乗せて光州に向かうことになりました。
ピーターはドイツ人記者で、この韓国、光州で大変なことが起きているということを事前に掴んでいますが、報道規制があるため、事実がわかりません。
彼は自ら現地に赴き、この目で見て、映像を収めてこようと考えているのです。
ピーターを乗せたタクシー運転手のマンソクは高収入にウキウキしていましたが、光州に入る道はどこもかしこも封鎖されていました。
うまく取り計らってなんとか光州に入った彼らが見たものは、報道されていない軍による民間人への武力による鎮圧の実態でした。

感想

予めどういう話かを知っていたら、見ていたかどうかわかりません。
ただ、見てよかったな、というのが第一印象。
いや、ぜひ見るべきでしょうね。

光州事件
歴史に興味がある人、韓国に深い興味のある人なら知っていると思いますが、若い世代はピンとこないかもしれません。
韓国では知らない人はいない事件ですが、当時は情報がなく、今とは違って、この事件そのものがタブー視されているような、韓国の民主化の闇の部分です。
私ものちになって知ったのですが、1980年5月に起きたこの事件を描いた映画でした。
タクシーの運転席から身を乗り出し、ソン・ガンホさんのにこやかな笑顔のこの映画のポスターから、まさかこんなに凄惨な事件を描いた映画とは露知らず、それだけに衝撃的な映画でした。
製作した韓国国内では大ヒットしたのはもちろん、海外でも高い評価を受けています。

まずは光州事件
学生が民主化のための抗議活動が軍によって鎮圧された事件、とまとめてしまえば、たったこれだけの事実となります。
しかし、その実態を映像を通してみてみると、「酷い」の一言に付きます。
その後の中国で起きた民主化運動「天安門事件」は毎日のようにワイドショーで映し出されていましたので、なんとなくイメージが湧きますが、あの事件でも中国政府が出した公式の死傷者数と現実では相当な隔たりがあると思われます。
この光州事件はワイドショーなどに映像が流れることがあまりなかったですが、この事件の少し前には独裁政権として長らく君臨していた朴正煕大統領が射殺されるという事件がありました。
その後、政権を引き継いだのがクーデターで政権を奪取した全斗煥大統領。
もちろん軍事政権です。
朴正煕政権は目覚ましい経済成長を遂げた「漢江の奇跡」の立役者でしたが、独裁者です。
独裁者は政権を長年続けると腐敗し、そして殺されるのです。
独裁政治から開放されるはずが、民主化には程遠く、朴正煕大統領時代に軍部の要職にあった全斗煥が暗殺者を逮捕。
そして民主化を目指す政治家たちを捉え、軍事政権を敷きます。
そういった一連の流れに反対した学生運動が光州で起き、それに対応した軍事政権が軍を持って鎮圧した事件ですね。
もう、それはえげつない事件だったのでしょう。
この映画は韓国では大ヒットしました。
時代が変わったということですね。
そしてこの映画は世界中で評価されますが、中国では未だに公開されませんし、一部香港で公開してという情報も今やなかったコトにされているとか。
中国にとっては天安門事件と全く同じ構図であるこの事件を扱った映画は、現在の政治体制に対して、「反分子」という扱いになるのでしょうかね。

 

さて、映画では主演のソン・ガンホさんがやっぱり良い演技をしています。
あの「パラサイト 半地下の家族」で父親役を演じていた韓国映画界きっての演技はスターですね。
また光州のタクシー運転手を演じているユ・ヘジンさんもやっぱり見事な存在感でした。
鍵泥棒のメソッド」の韓国版リメイク作品である「Luck-key」で主演をしていた俳優ですね。
顔立ちはまあ、アレですが、演技派素晴らしいですね。
ドイツ人記者を演じていたトーマス・クレッチマンさんも良かったです。
ブレない姿勢、命をかけても伝えなければならない物がある、という素晴らしい報道記者を演じています。
報道とはなんなのか?というのを考えさせてくれます。
日本の報道は一体どうなっているんでしょう。

ハリウッド映画のような華やかさはありませんが、心に響く映画でしたね。

 

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