悪魔の尻尾

みなさ~ん、元気にしておりますか?

Iターン 福澤徹三

画像はAmazonより

こういう小説のことをピカレスク小説っていうのですかね。
福澤徹三さんの小説はこれまでに読んでいて、どれも似たような展開で、後には残りません。
でもどんどん内容に引き込まれていて、なんとも言えない後味を残してくれる小説ですね。
小説ならではの展開で、これぞ娯楽小説の王道という気もします。
VシネマNetflixのドラマの原作にもなりそうです。

 

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登場人物

狛江
主人公。
中堅広告代理店「大宣」の課長。
不景気の煽りを受け、リストラ対象となり、北九州支店の店長として飛ばされます。
家のローンや妻の小言に晒されながら、クビにならないように必至で画策します。

敦子
主人公の妻。
亭主をATMか何かと勘違いしている女性です。
息子と娘はすでに手懐けているので、家庭では彼女が狛江家を牛耳っています。

岩切
広域指定暴力団の三次団体岩切組組長。
怪力で粗暴な男です。

竜崎
広域指定暴力団の直系を目指す竜神会の組長で岩切組とは犬猿の仲。
表向きはドラゴンファイナンスという消費者金融の看板を上げています。

城島
ソタイ(組織犯罪対策課)の刑事。
竜崎と深いつながりがあります。

藤堂
広域指定暴力団北州会直参で次期会長に最も近い男と言われています。
竜崎とも深いつながりがあります。

西尾
岩切組若頭補佐。
若いが一流大学卒業の切れ者です。

桜井
岩切組組員。
大工の見習いをしていたが喧嘩をして辞めた後、岩切の世話になります。

牛窪
岩切組組員になったばかりの元サラリーマンの中年。
製鉄会社に30年も努めていたがリストラにあい、組員となりました。

伊丹
還暦を過ぎたくらいの年配者だが、他の組から流れてきたため、地位は低いです。
元板前で朝飯をいつも作る以外は全く動きません。

坊野
岩切と企業舎弟で現在はゲームセンターの店員として働いています。
元傭兵。

高峰
狛江と同期の人間だが、副社長の娘と再婚したおかげで部長に昇進した人物。
同期のよしみをちらつかせながらも、ねちっこい人物です。


大宣北九州支店の社員。
狛江の部下。
今時の若者そのもので、狛江にとっては物足りない人物です。

美月
大宣北九州支店の社員。
狛江の部下。
いつも明るくにこやかな女性社員で、仕事はそれほどできないまでも、狛江にとっては癒やしの存在。

土屋
土屋印刷社長。
仕事をもらうためなら何でもするような零細企業の親父。
キックバックでも接待でも積極的だが、仕事の質は低いです。

深町
丸越百貨店の部長で、北九州では大手企業の一つです。
ゴルフ灼けしており、接待を受けるのは当然の立場の人間です。

瀬戸川
東亜銀行北九州支店の支店長です。
深町とは違い、接待も受け付けない隙のない人物です。

あらすじ

リストラのアオリを受けて北九州支店へ飛ばされた狛江。
47歳で家のローンも抱えており、今クビになってしまうとたちまち家庭崩壊の危機にあります。
妻子を東京に残して単身北九州に。
そこの支店長はすぐに辞めてしまうということを知ります。
大手企業はなく、売上を上げる事自体も大変な状況で、狛江は質の悪い仕事しかできない下請けの印刷屋である土屋を見限ることにしました。
しかし、零細企業の土屋からは手痛い仕返しをするのです。
それをきっかけにドラゴンファイナンスというヤクザのフロント企業から多額の借金を背負うことになった狛江。
更にはドラゴンファイナンスの竜崎と対立する岩切組の組長にも因縁をつけられ、板挟みの状態になります。
最終的にはより暴力的で強引な岩切に無理やり舎弟とさせられてしまう始末。
そんなタイミングで、コネで出世した同期の高峰からはプレッシャーを掛け続けられます。
まずは北九州大手企業の丸越百貨店。
岩切のヤクザ的な手法で丸越百貨店との取引は成功し、借金の返済にも目処が立ってきますが、暴力団との関係にますます深みにハマっていきます。
そして高峰からは丸越百貨店の手柄を横取りされた挙げ句、さらなる無理難題を突きつけられます。
東亜銀行との取引なのですが、それはさらに強引な方法を使いました。
そして今度はヤクザの本格的な抗争事件にも巻き込まれていくのです。

感想

九州での歓楽街で客引きの声に、「お兄さん、飲みですか?抜きですか?」というふうに言われると九州にいる知人から聞いたことがあるのですが、そのまんまの世界がこの小説にありました。
いつものように北九州が舞台。
借金や風俗、ヤクザという世界が舞台で、主人公がドンドン落ちぶれていく姿が辛すぎて、途中で読むのをやめてしまおうかな?と思っていたくらいです。
読みにくいわけではないのですが、もうどん底に入っていく状況、坂道を下り落ちるさまが酷く、なぜ?どうして?と思うところもしばしばありましたね。
ともあれ、苦しい序盤を過ぎて、中盤辺りからはいつもの福澤節が復活してきたのか、ドンドン主人公とヤクザとの絡みが激しくなっていき、もう無茶苦茶な展開になっていきつつも読み物としてはスピーディでハイテンションで楽しめます。
そして怒涛のような終盤の展開。
特にラストに近いシーンで、北九州支店の二人の部下の前で、同期の高峰をぶっ飛ばすところは痛快でした。
短い期間の北九州支店長でしたが、北九州支店は閉鎖になるものの、二人の部下は首にならず、本人は栄転で東京に戻るというハッピーエンドは、まさに小説ならではの展開でした。


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