悪魔の尻尾

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一億円の死角 清水一行 過去のトヨタ自販の闇?

お盆休みに、読書家である「ムッくん」さんの影響を受けて読み始めた清水一行さんの小説。
清水一行さんは名前は知っていましたが、経済小説ということで手にとって読んだりしたことはありません。
Kindle Unlimitedで読めるようなので、まずはテレビのワイドショーで有名になった一億円を拾った大貫さんの件をモデルにしたこの小説を読んでみました。

nmukkun.hatenablog.com


あらすじは、ムッくんさんのサイトに素晴らしくまとめていただいておりますので、そちらで確認していただくとして、私なりの感想を書いていきましょう。

第一章 麻薬そして暴力団

第二章 不肖の息子たち

第三章 巨大な田舎会社

ダイドー自動車というのはやはりトヨタ自動車をモデルにしているのでしょう。
この小説では、一億円の持ち主が現れないという事件の裏に潜む闇を描いたものです。
現実にこんな小説を書いて、トヨタから訴えられたりしなかったのでしょうか。
トヨタの販売部門のトップであった神谷正太郎氏をモデルにしています。

トヨタ自動車は技術部門であるトヨタ自動車工業が本体のようですが、創業者の豊田家は技術はあっても、車の売り方を知らないのですね。
そして車を売ることに長けていた神谷正太郎をGMからヘッドハンティングし、彼に販売を一任したと言われています。
神谷正太郎は販売の神様と呼ばれるほどの人物で、経済人としては一流です。

この物語ではトヨタ自動車ではなくダイドー自動車。
そして神谷正太郎は田部井彦太郎という名前になっています。
田部井彦太郎は現実の神谷正太郎と同じく、販売の神様と呼ばれる人物ですが、大変な吝嗇家。
自ら溜め込んだ資産は手を付けずに、費用は全部会社に持たせるような人として描かれています。
今だと大きな問題になりそうですが、当時、創業者などオーナー社長にはよく見られることでした。
それにしても息子のヘマをつくろうために、会社の金を使って解決するということが起こした一億円の事件。
落とし主であるとダイドー自動車販売の人たち。
そもそも闇のお金でやくざを使って、田部井の長男圭司が騙された手形詐欺の後始末を穏便に済ませるための裏金であり、持ち主として名乗り出ることができないということが起こした事件。
拾ったのは小島小吉というトラックの運転手。
小さなアパートに住む平凡な人間でしたが、彼もまた一億円によって翻弄された人生を歩みます。
ワイドショーなどでも結構出ていたようで、いろいろな嫌がらせを受けたという反面、目立ちたがり屋の一面もあります。
どうしても拾ったほうの話を中心にしてしまうのが庶民。
しかし一億円という大金で持ち主が現れないというのがやはりいわくつきのお金であるということでしょう。
この小説では、大企業の社長の息子の詐欺事件に絡んで、それを隠蔽するためにやくざに渡すはずのお金だったという設定ですね。

小説のため、かなりエンターテイメントに描いているのかもしれません。
そして田部井彦太郎の強引な人間性、彼の取り巻きの人たちの人生も描いていますが、長男圭司、次男恒夫は決して悪人ではありませんが、強烈な個性を持つ父のもとで何もできなかった人たち。
できたことと言えば、父を困らせることくらいでした。
何よりもワンマン経営者のそばにいた人たちは彼らの穴埋めに奔走するわけですよね。
サラリーマンというのも考え方によっては、何でもしなければならない立場で、「すまじきものは宮仕え」というところでしょうか。

実話をベースにしているとは言え、こんな事を書いて訴えられたりしないのでしょうかね。
そう思っていたら、最後に(この作品は、実際にあった事件をヒントに『創作」したものです)となっていました。
事実とは大きく異なるということでしょう。

ちなみにWEBなどでモデルになった神谷正太郎で調べると、吝嗇家だったとか、そういう情報は見当たりませんでした。
むしろ偉大な「販売の神様」と言った記述ばかりでしたね。
ただ、ある程度の取材をもとに作り上げられていますので、当時のワンマン社長と言うのは会社を我が物顔で支配するのが当たり前でしたから、公私混同がまったくなかったとは思えません。
ただ、多くの表彰をされるなどの立派な経済人だったのでしょう。


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一方の一億円を拾っちゃった大貫久男さん。
この小説に書かれているようにやっぱり浮かれていたんだろうと思います。
当時のワイドショーなんかにも出ていたりしていますが、なんというか場違いですね。
ちなみに大貫さんのお孫さんが今はお笑いで少しテレビにも出たりしていた大貫幹枝さんらしいです。
大貫幹枝さんと聞いても全然わかりませんでしたが、タカダ・コーポレーションと聞いて、「ああ、そんなのいたな」と言う程度の記憶でしたね。


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お盆休みだと家でブラブラしながらいつでも読めそうに思うのですが、そうでもないようです。
やはり通勤電車やお弁当タイムに読書をするのがあっているみたいですね。

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