悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

真夜中の金魚 福澤徹三

Amazonより

ファンの間では「マヨキン」と呼ばれているということを後で知りました。
ピカレスクロマンとか書かれていますが、そもそもピカレスク文学というものがどういうものかわかっていませんが、いわゆる社会では不良やチンピラと呼ばれる青年を主人公に一人称で描かれている小説なんだろうかな、と勝手に思っています。

登場人物

おれ:主人公。
   バーの雇われ店長

明日香:おれの彼女。
    バーのホステス。

大山:おれの雇用主、いろんな商売を束ねる社長、小うるさい。

堂丸:店の常連でガタイの良いやくざ者。
   明日香に言い寄る。

佐倉:東京にいた頃の知り合いで、馬が合う。
   在日韓国人

あらすじ

主人公は北九州の歓楽街でバーの店を任されています。
店長が飛んでしまい、売上の管理やら、ホステスの勤怠やら細かな仕事も全てやらされています。
ただ雇われている身分であり、それでも雇われ店長でもなくチーフの身分のまま。
オーナーの大山は、細かい男で厳しく管理されている状態です。
そんな彼は午前中はパチンコ屋に入り浸り、そこの雇われ店長とつるんでパチンコで小銭を稼ぐなどしています。
そういう男ですので、その手の人間が彼の周りにはおり、いつも何らかのトラブルを抱えているのです。

彼は、店で働いているホステスの明日香の家で同棲しています。
店のホステスに手を出すことは、もちろんアウトですが、行く宛もなく住み着いてしまっているという状況です。
この店に来る常連の堂丸が、明日香に興味を示しています。
ガラが悪く、見た目ですぐにヤクザとわかるような男で、主人公は腕っぷしには全く自信がなく勝てる気がしません。
主人公はそれでも気骨だけはある男で、ハッタリと要領の良さで、アウトローの世界を生きてきた男。
しかし、プロの堂丸には全く叶わず、シメられてしまうのです。
明日香はもちろん堂丸なんて男には全く興味がありません。
ただ仕事として、ホステスとして店の客として接待をするのみ。
とはいえ、明日香も執拗に迫られ、段々とかわせなくなってきます。

過去に仲の良かった佐倉がこの地にやってきていました。
佐倉は在日コリアン3世で、その点にコンプレックスがありましたが、そういう点を全く気にしない主人公と馬が合い、いつもつるんでいたような仲でした。
昔は二人でむちゃもやりながら、ある日を境に離れてしまいます。
佐倉はイケメンでこの店のホステスたちにもモテるのですが、主人公とは馬が合い、以前と変わらぬように接してくれます。
しかし今は彼はヤクザとなっていました。

明日香のことを古女房のように小うるさく、煩わしいと思う反面、堂丸に渡してしまうことも癪に障ります。
堂丸は粗暴な男で、締め上げてある主人公のことなんて全く眼中にありません。
そして突然ヤクザとして現れた佐倉。
主人公と明日香を中心に展開する物語です。


感想

福澤徹三さんの小説は、九州を舞台にしたアウトローの若者たちを描いた小説が多いですね。
これまで読んだ本もいずれもそういうたぐいでした。
映画の題材として若手イケメン俳優を主人公にして作るとぴったりな感じがします。
キャスティングを想像したりするのも楽しいですね。
映画のようにあまり考え込むことなく、スラスラと読める小説でテンポもとてもいいです。
小うるさい明日香と暮らす主人公のいい加減な生き様のように見えますが、実際はあちらこちらに配慮しながら、細かくきちんと仕事をしています。
アウトローに生きるのも大変です。
ヤクザにインタビューなどすると、「まともに勉強してまともに仕事につけたらヤクザなんてやっとらんわ」というような返事がかえってきますが、まさにそれです。
あえてこんな世界に入るよりもまともに生きていく道を選んだほうが遥かに「楽」だろうと思います。
ちょっとおバカなキャラクターの明日香といい加減な男に見えてなかなか侠気のある主人公とのやり取りも楽しめます。
主人公を取り巻くサブキャラクターも癖が強い人物が大勢登場します。
本当に医師免許を持っているのかどうかも怪しい何でも屋みたいな医者とか、偽物のブランドコピー品を露店で売りさばく仕事を持ってくるおっさんとか、本当に怪しい連中ばかりです。
自分の人生にはほとんど関わりのない人たちばかりですが、楽しめましたね。

 

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