悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

兎の眼 灰谷健次郎

お盆休みも私の職場は交代で誰かが仕事をしていると言う仕事です。
台風のときには、普段は休むことのない、公共交通機関も停止したり、大型販売店も臨時休業するなど災害に備えていました。
サービスを提供する側としては、より便利に利用してもらうために365日の対応としているようですが、こんな時くらいは我々も臨時休業をすればいいのになあ、と思ったりします。
まあ、クライアント先から仕事を受けている立場としては「休ませろ」というわけにも行かないのですが、実際にクライアント先の人たち、つまりは社員さんは普通に夏季休暇をもらっているので、仕方がないと思いつつもなんだか違和感をずっと感じています。

さて、今回読んだ本ですが、これもKindle電子書籍です。
通勤時などに読みましたが、心に染みるようなお話が多かったです。
現在の教育でこれを読むというのは時代の違いもあるので、全面的に指示するわけではありませんが、私達が子供の頃なら「道徳」の授業に出てくるようなお話が多数ありますね。

 

この本の目次

プロローグ

1.ネズミとヨット

2.教員ヤクザ足立先生

3.鉄三のひみつ

4.悪い日

5.鳩と海

6.ハエの踊り

7.こじきごっこ

8.わるいやつ

9.カラスの貯金

10.バクじいさん

11.くらげっ子

12.くもりのち晴れ

13.みなこ当番

14.泣くな小谷先生

15.さよならだけが人生だ

16.ハエ博士の研究

17.赤いヒヨコ

18.おさなきゲリラたち

19.不幸な決定

20.せっしゃのオッサン

21.ぼくは心がずんとした

22.波紋

23.鉄三はわるくない

24.つらい時間

25.裏切り

26.流れ星

エピローグ

 

あらすじ

教師の小谷芙美先生は新婚であり、そして新人の教師でした。
初めて受け持つクラス。
クラスの問題児とされている鉄三の心が閉ざされていることを心配します。
鉄三はゴミ処理場に住む子供で、ほとんど話をしません。
友達もおらず、勉強も全くしないので、文字も読めないし、書けません。
そういう子供を「問題児」と決めつける先生たちもいましたが、そういう子供にこそ素晴らしい才能を持った原石だという変わった先生もいました。
教員ヤクザの足立先生です。
かなり変わり者ですが、子どもたちからは絶大な信頼があります。
そんな足立先生に対して少し偏見を持っていた自分を恥じる小谷先生でしたが、真っ直ぐな人柄で、子どもたちのためにできることを次々と行っていきます。
「問題児」の鉄三、そして彼を育てている祖父のバクじいさんとの出会いなどもあり、彼女は先生として、人間として葛藤しながらも成長していきます。

 

感想

児童文学の灰谷健次郎さんの本を初めて読みました。
この本に登場する人たちの言葉から、この物語の舞台が関西であることは明白です。
尼崎あたりなのかな?と勝手に想像しています。
それにしても主人公の小谷芙美先生がとても良い人なのですが、結婚した男性が最低ですね。
現在なら即離婚案件になりそう。
ただ、少し前の時代背景もあって、当時の男性はこういうものなんでしょう。
また女性の方も寿退社が当たり前でしたし。
そんな時代に生きる女性の小谷先生。
箱入り娘であり、世間知らずの女性ですが、真っ直ぐできれいな心の持ち主です。
職業差別、地域差別、女性差別というものがこの作品の至る所にあります。
小谷先生や子供、その周りの人たちを通して、それらが生々しく描かれていると感じます。
子供の親たちのエゴも見えますし、教師たちにも色々いるものです。
教育委員会に連なる管理職、つまり校長や教頭なんて教育者の手本であるはずですが、実際にはそんなことはない。
少なくとも自分の在任中に波風を立てずに過ごしたいだけの人物ばかり。
教育という現場だけでなく、会社でも役所でも今の時代も根本的には同じだと感じましたね。

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