悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

運転者 喜多川泰

f:id:tails_of_devil:20210930214101p:plain

 

喜多川泰さんの「運転者」という本を読みました。

いつぞやの竹野内豊さんが主演のテレビドラマ、「選TAXI」というのを思い出しますが、ちゃんと落ちもあって楽しめました。


楽しめるだけの娯楽小説だけでなく、ある意味自己啓発系の小説でもあります。

喜多川泰さんの本では、昔、「賢者の書」というものを読みましたが、あの本よりも随分と読みやすく感じました。

その理由は、おそらく現実的ではないにせよ、世界観というか、目線が近いからだと思います。

 

tails-of-devil.hatenablog.com

 

賢者の書も自己啓発系で、主人公が不思議な体験を通じて、学んでいきますが、登場する人物も含めて、ちょっと他人事っぽいのです。

 

しかし運転者は、どこにでもいるサラリーマン、つまり普通の人である自分とそれほど変わらないわけで、そういう意味では共感しやすかったのですね。

 

 

 

この本の目次

プロローグ

デッドライン

運転手

ポイントカード

幸せの種

TAXI

すべての努力は報わ れる か

蕎麦の味

実際あるけど、絶対 ない

最後のレッスン

第二の人生

新しいスタート

エピローグ

登場人物

岡田修一
この本の主人公。
彼を中心にこの不思議な物語は進んでいきます。


優子
修一の妻。
海外旅行を楽しみにしている妻で、子供の教育のことで悩みを抱えています。


夢果
修一と優子の一人娘。
原因は不明ですが、不登校を続けています。


脇屋
修一の会社の社長。
修一とそれほど年齢が変わらないときに独立して会社を起こした人物。
抜群の営業成績を誇る人物。


岡田政史(まさふみ)
修一の父親。
商店街で文房具やを営み、一時は羽振りがよかったのだが、バブル崩壊後は低迷し、店を畳みます。
そして亡くなりました。
修一は仕事の忙しさを理由に、葬儀のときだけ実家に戻っていただけです。


岡田民子
修一の母。そして正史の妻。
夫に先立たれ、独居老人となりました。
息子の過程に気遣い、連絡するのもためらいがちな様子。

良蔵
正史の本当の父親。
26歳の若さでサイパンで戦死。

 

路上ミュージシャン藤上

運転者が連れてきた松山のとあるスナックで出会った人物。
彼の人生とギターの話で会話が弾む。

 

御任瀬卓志(おまかせタクシー)
この物語の違う意味での主人公。
”運転者”です。

 

あらすじ

岡田修一は保険会社に務めるサラリーマンですが、営業成績も大したことはなく、この仕事が向いていないと思っています。

そして保険の営業という業界の厳しさを知りながら、顧客の大量の「解約」があり、お先真っ暗な状況。
歩合制の保険の営業では来月の給料の減額は避けられそうになく、また賞与も全く当てにできない状況でした。

海外旅行を楽しみにしている妻や不登校気味な娘のことも気がかりですが、それどころではない状況。

一家を支える夫としての重圧を感じながら、苦悩しています。


妻から連絡が入り、娘の担任との面談に渋々向かうときに出くわしたタクシー。
そのタクシーこそが彼の運命を変えていきます。

運転手はタクシーを運転していますが、目的地も聞かずに目的地がわかり、彼の今の状況も手にとるようにわかっています。

気持ち悪くなった修一は彼の名前を確認すると「御任瀬卓志」と書かれています。
おまかせタクシー?と訝しむ修一ですが、この運転手は若いのですが、彼の心にグイグイと入っていくのです。

この運転手は、”運転者”で、人の運を転ずる事ができる人なのです。
そのために必要なところへ連れて行ってくれます。
料金はなんと無料。
しかし、それはメーターに表示されている金額があるからで、7万円弱のタクシー料金が残高として残っています。
その間はずっと無料だというのでした。

学校で担任と面談した修一ですが、心は仕事のことでいっぱいいっぱいです。
担任の態度にも不快感をあらわにし、不遜な態度で面談を終えたのでした。

そしてまたしても先程のタクシーがいます。
タクシーの運転手は、彼にチャンスを逃したことを伝えるのです。
学校の担任は保険を探しており、優子から夫が保険の営業をしているということを聞いていて、面談が終わったら、保険のことを聞こうと思っていたというのです。
学校には同僚や先輩後輩もたくさんいるので、いきなり大口の契約という可能性もあったわけですが、修一は余裕がなく、そのチャンスを棒に振ってしまったわけです。

そんな修一はまだタクシーの運転手「運転者」のことを信用できませんでした。
なぜ残高があるのかもわからず、無料であるので、彼に次なる地点へ運んでもらうのでした。

 

果たして修一は、どうなっていくのか?

 

感想

これもまた自己啓発系の物語となっています。
運を転ずる者として、このタクシーに乗車する人の運命を変えてくれる可能性を持っています。
そしてこのタクシーのメーターは残金があり、その残金が減っていくというシステム。
残金は誰かが残してくれたものなのです。
そして修一は、最後にはこれを使い切るのではなく、彼もまた大切な人のためにお金を残していく決断をします。

 

ポジティブになれないのは正確だと決めつけている修一は、真面目な人柄ですが、笑顔はあまりありません。

運転手の言葉や修一たちが出会った人達の言葉をピックアップしたいと思います。

この本を読んだ人には、以下の内容がきっと心にしみてくるはずです。

運を掴むアンテナは誰にでもある
運がつかめずに不機嫌な修一に対して 

「運が劇的に変わるとき、そんな場、というのが人生にはあるんですよ。それを捕まえられるアンテナがすべての人にあると思ってください。そのアンテナの感度は、上機嫌の時に最大になるんです。」

 

運はポイントカードといっしょ

「運は<いい>か<悪い>で表現するものじゃないんですよ。<使う><貯める>で表現するものなんです。だから先に<貯める>があって、ある程度貯まったら<使う>ができる。少し貯めてはすぐに使う人もいれば、大きく貯めてから大きく使う人もいる。そのあたりは人によって違いますけどね。どちらにしても周囲から<運がいい>と思われている人は、貯まったから使っただけです。」

 

幸せの種
運の転機を見つけられない人

「基本姿勢が不機嫌な人は、いつも同じことを言うんですよ。『不幸なことばかり起こるのに上機嫌になんてなれるわけ無いだろ!』ってね。そうじゃないんですよ。基本姿勢が不機嫌な人に、毎日の人生で起こる幸せの種を見つけることなんてできない。ただそれだけです。」

 

収入が減ることに焦りを感じる修一に対して
「そんなことで終わりはしないですよ。収入がなくなっても、仕事がなくなっても終わりなんてないです。そこからまた始めるだけです。その強さは誰にだってあります。だから心配しなくていい。」

今の仕事が全てではない→仕事を失ってもまたやり直せる力は誰にでもある

 

 

上機嫌でいることを考える修一の独り言

上機嫌でいるというのは、楽しいことを期待するのではなく、起こることを楽しむと決めるということなのかもな。

 

路上ミュージシャン藤上との会話で

「今の生活が俺を鍛えてくれているのは間違いないですから、これから何でもできる気がするんです。音楽を続けたっていいし、会社を作ったっていい、お店を始めることだってできる。自分を強くしていけば何だってできる、って最近思っているんでうしょね。明日の収入も決まっていないというのは大変じゃないかという質問でしたよね。答えは『大変です』。でもその大変さを望んで、この生活をしているんです。だから怖さはないです。」

 

プラス思考になれない修一に対して

「自分の人生にとって何がプラスで何がマイナスかなんて、それが起こっているときには誰にもわかりませんよ。どんな事が起こっても、起こったことを自分の人生において必要な経験に変えていくというのが<生きる>ってことです。だから、どんな出来事だってプラスにできますし、逆にどんな出来事もマイナスに買えてしまうことだってできる。
本当のプラス思考というのは、自分の人生でどんな事が起こっても、それが自分の人生においてどうしても必要だから起こった大切な経験だと思えるってことでしょう。」

 

自分に自身が持てない修一に対して

「まず誰かと比べるのはやめるといいですよ。他の人の人生と比較するのをやめて、自分の人生に集中して、他の人はその人の人生を生きて、その人の役割を果たしています。」


悪いことが起きたときに

「起こった直後は『最悪』と思っても、時間が経って考えてみると『むしろ良かったんじゃないか』って思えることばかりですからね、人生なんて。だから、最初から『むしろよかったんじゃないか』って思うと、結構いろんなことが楽しめるんですよ

 

 

Kindle Unlimited対象の本となっています。
多くの本が読み放題のサービスですので、今まで未体験で、ご興味のある方は、以下のリンクからどうぞ~!
Kindle Unlimited 30日間無料お試し

 

 

Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.