悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

海が見える家 はらだみずき

Amazonより

相変わらず帰宅は遅いですね。
終電車に乗れない時間帯です。
食事をして帰宅するので、こんな時間になってしまいますね。

Kindle Paperwhiteで通勤のときなどで読みました。
スラスラと読める文章なのですが、なぜかこの作品を読むタイミングが合わず、先延ばしになっていたんですね。

森沢明夫さんの本をちょこちょこ読ませていただいていると、いつもAmazonのおすすめに登場するのがこの本でした。
「海の見える家」はらだみずき。
タイトルはあまりに普通。
森沢さんの本に「虹の岬の喫茶店」という作品があり、そういう作品なんだろうと勝手に思っていました。


 

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確かにそういうテーストもありますが、全然違いましたね。
どちらかというと「エミリの小さな包丁」に近かったかな?という気もします。
うん、絶対にこちらの作品のほうが近いです。
「エミリ~」では父にあたるのが祖父でまだ存命しておりますが。

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はらだみずきさんって名前で作者は女性だと勝手に思っていました。
男性でした。
私と同じ1964年生まれですね。
全然知らない作家さんでしたが、この作品は結構売れているようです。
あの有名な八重津ブックセンター全店で年間で最も売れた文庫本だったらしいんですね。
読んでみると納得。
いい本でした。

 

 

今日から会社にはいきません。
辞めさせていただきます。
という主人公の会社の上司に当てた短いメールで始まるこの小説。
就職が困難な時代にようやく決まった就職先ですが、とてもブラックな環境でまともな研修もなく、ゴールデンウィーク明けの初日にたった1ヶ月で辞めてしまいます。
情けなさ、不甲斐なさに落ち込んでいるときに、父の訃報の電話を受けます。

主人公は緒方文哉。
父親は緒方芳雄。
両親は文哉が小学校2年制のときに離婚。
不動産会社に勤務する傍ら男手で3つ年上の姉を含め二人の子供を育てる父。
母親ではなく父親が二人の子供を引き取って育てた理由を後に知ることになるが、父はそのことを負い目に感じているのかもしれません。
文哉は大学進学し、東京に下宿。
父は息子に仕送りをし、バイトもしながらの生活でしたが、学生時代は快適に暮らしていました。
そんな父芳雄は50すぎの働き盛りで会社をやめて南房総に引っ越しをするという。
元々疎遠で希薄な家族関係。
父のことを知らないまま、父の亡くなった南房総へ向かいます。
そこで知ったのは今まで顧みなかった父の本当の姿。


失業して、この先どういきていくのかを悩む主人公。
父は何でも屋みたいなことをしながら、この地にある別荘の管理人として地域の人から慕われていたことを知ります。
主人公の姉も電話を通して登場します。
姉は姉で色々な問題を抱えているようで、彼女の頭にあるのは「金、金、金」です。
父の住んでいた海のそばにある小さな家も「とっとと売り払って」金を山分けしようというのが一番の目的。
失業した弟に丸投げしておいて、お金だけよこせと~。
まあ、このあたりにもちゃんとオチがあるんですけどね。

のどかなようでひとつひとつが心に引っかかる物語です。
最初に父の訃報を知らせてきた「ぶっきらぼう」が結局のところ主人公を一番世話することになるんですけどね。
この「ぶっきらぼう」と父の関係もまた微妙なんですが、その息子との関係も自ずと微妙。
父よりも年下ですが、主人公よりは年上の「ぶっきらぼう」さんです。




死んでから知る父の本当姿。
子供を育て上げるために、自分を殺して好きでもない仕事を続けていた父親。
娘も息子も独立し、実家に寄り付かなくなったことで、すっぱりと仕事をやめて田舎に引っ込んでしまった父。
そこでの父の姿は存命中はついに知ることがなかったのですが、その海の見える家で過ごしているうちに、父の存在が改めて浮き彫りになっていくんですね。
「いつまでもあると思うな親と金」
真っ先に浮かぶ言葉がこれでしたね。


 

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