悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

修羅の家 我孫子武丸

 

「殺戮にいたる病」という小説の次に読んだ本です。
かまいたちの夜」のシナリオライターとして有名な我孫子武丸氏の著作で、この作品も「殺戮にいたる病」という作品以上に胸糞悪くなる犯罪を扱った小説です。

 

目次

第一章 暴力装置

第二章 再開

第三章 家族会議

第四章 煩悶

第五章 陥穽

第六章 決壊

第七章 変貌

第八章 呪縛

登場人物

神谷優子

この物語の中心人物で40代の派手な女性。
「家族」を取り仕切る「ママ」。
ハルオをスカウトします。

 

野崎晴男

ある公衆トイレで女性をレイプしていたところを目撃されたことから、優子と知り合うことになります。

 

神谷愛香

「神谷」の姓を名乗っていますが、血縁ではありません。

 

 

あらすじ

ある公衆トイレで女性をレイプしていた野崎晴男は中年の派手な女性に目撃されます。
状況が悪いだけに、その女性を殺してしまおうとしたものの、行く先のない晴男は結局その助成に誘われるままついていくことになります。
女性は神谷優子という人物。
彼女の住んでいる家は、立派な一戸建て住宅で、表札には「西村」と書かれていました。
そこには小さな子供を含めていろいろな人が住んでいます。
シンプルなスエットのようなものをみんな来ており、全員非常に痩せているのです。
奇妙に感じたものの、晴男は食事を与えられ、お酒も飲ませてもらい油断をしていたのです。
晴男はこの家の家族となるべく「儀式」が始まりました。
それを乗り切り、晴男はこの家の「家族」たちに睨みをきかせる役目をすることになるのです。
晴男は優子のお気に入りでした。
この家に同居する「家族」は一部は血縁であり、一部は完全に他人なのですが、共同生活をしています。
神谷優子はママと呼ばれ、絶対的な存在。
しかし形式上は家族会議で物事が決定されるのです。
家族たちはそれぞれ違法な行動で「集金」してくるのが仕事でした。
彼らには社会とつながっていることもなく、もはやこの状況から逃げることすらできない状況です。
24歳の愛香は、生活保護の役所で中学時代の同級生に声をかけられます。

 

 

感想

「殺戮にいたる病」という小説もグロくて、読後感も悪い小説でした。
しかし、この小説に比べるとマシかもしれません。
もちろんこの小説は殺人のシーンはさほどなく、そういう点ではグロさはないのですが、もう何もかもが狂っていて、人間であることを忘れてしまった人間たちの生活を描いています。
この小説にはモデルになっている事件があります。
我孫子武丸氏が直接事件をモデルにしたという言及がないので、あくまでそう言われているだけのことなのですが、「北九州監禁殺人事件」や「尼崎事件」が参考になりそうです。

北九州監禁殺人事件 - Wikipedia

尼崎事件 - Wikipedia

どちらの事件も、監禁や強烈なマインドコントロールによって、人間の思考力を奪い、操られてしまうという恐ろしい悲劇ですね。

読んでいる途中でも気分が悪くなるような、そんな小説です。
ただ、読み始めると読まずにはいられないです。

ベースとなる事件はあったと思われますが、小説ですので実話ではないです。
そして「殺戮にいたる病」と同じく、終盤にひっくり返るようなトリックがあります。
ただ、内容がひどいので、こんなトリックが必要だったのか?と思えるような気がします。
読んでいる方も狂ってしまうのか、そんな些細な事どうでもいいという気がするんですね。
推理小説においてトリックは最も大事な部分ではありますが、この小説に限って言えば、そういうのはもういいです。
そしてこのトリックにしてもありえないなあ、強引だなあ、という気持ちしかないですね。

いくら弱みに付け込み、強力なマインドコントロールで人を狂わせるということがあったにしても、こんなことができるのでしょうかね。
現実の事件を詳しく見ていかないと、判断できませんが、マインドコントロールによって人間はどこまでも変わってしまうのでしょうかね。
オウム真理教などでもマインドコントロールという言葉が出てきました。
現実の事件でも「なぜ?」としか思えないのですが、巧みに心を掴まれて操られてしまうとどうしようもないのでしょうか。
統一教会の問題でもそれは強烈なことでもありますし、自爆テロを起こす人たちも、そうすることが自分にとっては素晴らしいことだと思い込まされてしまうと、何でもできてしまうのでしょうか。

そんな事を考えながら読み終えたのですが、正直物語のエンディングというか、終わりにかけての持って行き方があまり良くないです。
ストーリーが強引な気がします。
なのでミステリーとしては評価できないですね。

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