8月も今日が最後の日になりました。
早いものですね、今年も3分の2が終わりましたね。
積読になっていた、内藤了さんの小説です。
ジャンルとしてはホラーとのことですが、そんなに怖さは感じませんでした。
まあ、猟奇的殺人がないようになっているので、少しグロテスクな表現はありますが、綾辻行人さんの「殺人鬼」と比べればどうということはありません。
大学を卒業したばかりの新人刑事の藤堂比奈子が活躍する刑事モノ、シリーズの小説です。
猟奇殺人というのは、マスコミが騒ぎ立てるのと同じく、小説の題材としても取り上げられやすいのでしょう。
そして映画やドラマにもしやすいのかもしれません。
この小説もストーリーや仕掛けなんてものはそれほど深くなく、読みすすめるとすぐに犯人などがわかるようになっています。
本格ミステリのような謎解きや犯人探しではなく、これらの猟奇的殺人の描写、犯罪者がその犯行に至った経緯などの描写がメインの小説です。
読んでいて気持ちの良いものではありませんが、小説の世界ということで、Vシネマを見ているくらいの感覚で読むのが良いのかな?という感じですかね。
主人公は新米刑事の藤堂比奈子。
彼女が刑事を目指したのは、女性の性被害者をなくしたい気持ちからでした。
心が折れそうになると、亡くなった母からの贈り物である七味唐辛子の缶を握りしめ、闘志を見せます。
彼女にはとても貴重な能力があります。
一度読んだ文章や会話などを記憶することができるのです。
その覚え方は独特で、メモ帳に独自のイラストというかアイコンのようなものを描き、脳にインプットしていくのです。
この小説でも彼女の能力が至るところで発揮されます。
素晴らしい能力です。
物忘れが激しい私は爪の垢でも煎じて飲みたいくらいです。
そして彼女を取り巻く脇役陣もありがちな設定ながら、しっかりと作られています。
新人教育係として初めて現場位に連れて行ったベテラン刑事の厳さん。
厳さんから鍛えられている、若手の熱血脳筋刑事の東海林は少し上の先輩という感じです。
鑑識のエース三木はオタクなキャラで女性との接点がありませんが、仕事は抜群にこなします。
そして比奈子の親友でもある仁美は交通課で美人キャラです。
先程の東海林刑事は彼女に気があるみたいですが、仁美は面食いです。
法医学の石上女子は解剖が大好きなかなり危ないキャラで別名「死神女史」と呼ばれています。
「死神女史」と「厳」さんは脇役ではありますが、主役をガッチリと脇で支える重要キャラですね。
この警察内部の人間関係もこの小説の面白さの一部となっています。
猟奇殺人という事件を扱っているだけに、その描写は少しグロテスクです。
そういうのが嫌いな人には向かないかもしれません。
猟奇殺人を犯した人を憎む気持ちは主人公の比奈子にも強く存在します。
しかし、彼女は法を犯してまで、そのようなことをする人物ではありません。
この物語の被害者は、殺されても仕方がないほどの凶悪な人間たちです。
しかしながら、ただ死刑になることで終わりにするのは許せない、そう考える人間がいます。
刑務所の看守の言葉が印象的でした。
「人を何人殺しても、死刑になって自分が死ぬのは一度きりです。自殺できないから死刑になりたいなんぞと、馬鹿げた理屈で無差別殺人を起こしても、一度死ぬだけでいいなんて、そら、不公平な話です…」
この看守の言葉にあるとおりに、誰かか凶悪犯に制裁を与えていきます。
その方法が内藤了さんの小説らしいとも思いました。
後でわかったのですが、ドラマ化もされているらしいですね。
機会があれば見てみたいものです。