悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

日本アルプス殺人事件 森村誠一

f:id:tails_of_devil:20180714090340j:plain



森村誠一氏の古い作品ですが、私も相当前に読んだので、内容が殆ど覚えていないという状況。
電子書籍版を入手したので、もう一度読み返してみることにしました。


やはり一度読んだ本というのは、読みやすいですね。
読み進めていくと段々と思い出していくことも。
しかし、大まかなあらすじすら忘れているとは、推理小説ってそんなものなんでしょうかね。
それとも私の頭が悪くて、物忘れが激しくなっているのかも。
今までに読んだ本なども、かなり忘れてしまっているというか。

あらすじ ネタバレあり

門脇秀人は北アルプスの観光開発に携わる官庁の責任者であり、自身も若い頃はかなり山を登ってきた山男でもありました。
最愛の一人娘の美紀子と上高地へ旅行に出かけ、登山をします。
そのときに出会ったのが、国井、弓場、村越という3人の男性。
大学のワンダーフォーゲル部出身で、それぞれ若手エリート社員。
彼らは同期でライバルでもあります。

3人の男性はそれぞれとても魅力的で、男性との交流が薄い美紀子にとっては、刺激的な出会いとなります。
一方、3人の男性は若く、独身であり、同時に美しく、キャリア官僚の父を持つ美紀子に興味がないわけがありません。
しかし、最も美紀子に接近することができた国井が何者かによって殺されます。
疑われる弓場と村越。
弓場にはアリバイがなく、殺害に至る動機もあり、容疑者として拘置されることになります。
弓場は厳しい立場に立たされますが、殺害時間にアリバイを証明する人の名前は出すことができません。
しかしながら、弓場にはアリバイを証明する人物が確実にいたのです。

警察の捜査により、弓場のアリバイを証明する人が判明しましたが、それは弓場のサラリーマンとしての地位を完全に奪い去るものでした。

国井が亡くなり、弓場が脱落したことで美紀子に俄然近づいたのは村越でしたが、なんと彼も殺されてしまいます。
関係者から事情を聴取し、アリバイを確認。
そこに浮かび上がったのが美紀子の父であるキャリア官僚の秀人でしたが、彼には完璧なアリバイがありました。
その日には登山を行っており、写真まであったのです。
ただ、あまりにも完璧すぎるアリバイとその写真から、疑いは晴れません。
そして彼のアリバイを証明していた写真、カメラのトリックが明かされ、自供します。

所感など

カメラのトリックは読んだ当時、うまく考えたなあと思っていました。35年くらい前の話ですけどね。
冒頭に出てくる、殺人ではないものの、人間(男)のエゴによって、尊い命が奪われたシーンがあります。
この3人が誰であるかはすぐにはわからないようになっていますが、当然生き延びた男性、死んだ女性という構図で、事件に関わりがあるというのが誰でも予想できることです。
3人の男性という点で、国井、弓場、村越という大学同期のワンゲル部で、いろいろな意味でのライバルがその3人と思わせておいて、最後の一人は違うというのがこの作品のもう一つの仕掛けであると思います。

そしてキャリア官僚を父に持ち、ファザーコンプレックスでもあるヒロイン美紀子の弾性に対する考え方なども描かれています。

彼女は男性に対して期待を持っていない女性です。
美しく、男性からは常に求められる女性でしたが、彼女の思い描く理想の男性はおらず、ドンドン男性不信にもなるのです。
最も信頼を寄せていた父にも裏切られ、結果として父のアリバイトリックを解き明かす刑事とともに山に登ることになるという点なども秀逸な点だと思いますね。


Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.