悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

女が死んでいる 貫井徳郎

 通勤で読むKindle読書。
本棚のない生活でもけっこう読書はできます。
過去に買った本はほぼ処分しているので、紙の本を読み返すことはできなくなりました。

過去に読んだ「慟哭」も今は手元にありません。
著者である貫井徳郎さんの代表作ですよね。
長編作品はやはり読むのに時間がかかるため、再度読み直すか?と言われるとなかなか読み直さないのですが、忘れている部分を見返してみようかな?と思ったときに手元にないと、、そのまま記憶からどんどん消えていきますね。
読んだのは8年前ですね。

 


更に前に短編と言うにはちょっと長めの作品が4つはいった「光と影の誘惑」というのも読んでいたんですね。
内容はこちらもうろ覚え状態(ほぼ忘れている?)ですね。

 



どうしても読みたくなれば買えばいいか?という感じですが、積読状態になっている電子書籍も結構あったりしますので、多分文庫などは買わないだろうなあと思っています。
妻がブックオフとかで買ってきたものをつまみ食いすることはあるかもしれません。
こんな人が増えたのか、街の本屋さんがなくなっていくのもわかりますね。

 

 

 

女が死んでいる

タイトルになっている作品です。
主人公充哉(みつや)は酒癖が悪く、飲酒後の記憶は定かではありません。
目覚めた時には知らない女性がいました。
全く記憶はありませんが、彼女の胸にはナイフが刺さっています。
そして部屋は密室状態。
状況は彼が殺したことを示すばかりです。
彼は売れていない俳優です。
俳優では食べていけないので、ホストをしています。
ハンサムなので女性からはモテるので、ある意味天職ですが、女性に対する扱い方はひどいものです。
彼はまずは自分を疑うのですが、いくら飲酒で記憶がないとは言え、殺しはしまいと思っています。
この圧倒的な密室殺人の真犯人は?

殺意のかたち

愛する夫が亡くなりました。
30歳の若さで、死因はくも膜下出血
きっかけはある交差点での交通事故。
相手は自動車ディーラーに勤める男性でした。
夫は、お人好しで車に引っ掛けられたものの、大した怪我はないと言います。
自動車ディーラーに勤める人間が交通事故を起こしたとは言いたくない相手はホッとしたようですが、その後警察にも病院にも行かず、一週間後に夫はなくなったのです。
夫の死因となった交通事故を起こした男性は亡くなりました。
死因は青酸カリによる殺人。
真っ先に疑われたのは妻でした。


二重露出

蕎麦屋と喫茶店は、公園のそばで、営業していました。
どちらも、それなりに順調に営んでいましたが、ある日、悪臭を撒き散らすホームレスが公園に住み着き、それ以来、蕎麦屋も喫茶店も客足が遠のいてしまいます。
このままで自分たちのほうが潰れてしまう。
彼らが考えた結果が、ホームレスの駆除でした。
ニュースでホームレスの遺体が発見されます。
しかし、その場所はホームレスを殺害して埋めた場所ではありませんでした。

憎悪

麻紗美は、結婚しようと思っていた男性から急に身勝手な別れを切り出され、その反動である男性との関係を持つようになりました。
その愛人関係にある男性は、歳上で、謎の多い人物。
しかしあるきっかけで、有名な女性デザイナーと関係のある男性ではないかと思い始めます。
彼のことを少しでも知りたいと考え、女性デザイナーの開催するパーティにコンパニオンとして潜入します。
有名な女性デザイナーは、すでに大人の息子がいます。
若い頃の子供なのでしょう。
チャラチャラした感じで、横柄な態度が目に付きます。
愛人がこのパーティにやってきたことに気づいた男性は、麻沙美に、「息子に殺されるかもしれない」と打ち明けるのです。


デザイナーの息子は、深く母を恨んでいます。
母が成功者として今の地位にたどり着くまで、母親らしいところがなく、成功してからもあれこれ干渉してくる始末なのです。
母に深く恨みを持っています。



殺人は難しい

主人公(女性)の夫は理想の男性です。
格好良く頭もいいのです。
ですが、そんな夫に女ができたことを感じ取ります。
そうなると嫉妬に苦しんだ挙げ句、相手のミホの殺害を思いつくのでした。
大胆にも顔も知らない「ミホ」を探して殺害に及びます。

病んだ水

産業廃棄物処理業の会社に仕掛けられた営利誘拐事件。
その会社の娘が誘拐され、身代金を要求されるのですが、その金額がわずか30万円。
地元の警察の支援も虚しく、犯人は捕まらず、身代金の30万円も奪われてしまいます。

母性という名の狂気

愛娘の亜紀のことが憎いわけではないのに、虐めてしまいます。
自分には母性がないのではないかと悩む母。
しかし児童虐待エスカレートしていきます。

レッツゴー

姉はいつも男に振られてはピーピー泣いてばかり。
そんな姉を諭すことなく、ドラマに夢中になっている母親は妹である私に姉の相手をさせようとします。
姉とは違い、男にのめり込まない私にも気になる男性が現れました。
学校でも色々茶化されますが、私はまず胃袋をつかむために料理上手な母親の手ほどきを受けて、料理を学んでいきます。
はじめは弁当、そしてその男性の自宅での料理もするようになるのですが…

感想

8本の短編小説が収められている本です。
叙述ミステリのテクニシャンとの評価が高い著者の貫井徳郎さんですが、同時に後味の悪さが際立った作家でもあります。
今回の内容でも「母性という名の狂気」などはとても気持ち悪く、不快感に包まれますね。
すでにおとなになったとは言え、子供を持つ親としては
そういう気持ち悪さとは別に、やられた~とつぶやいてしまう仕掛けがあるのです。
それは叙述のトリックで、そこは見事ですね。


「レッツゴー」。
後味の悪い作品が多い中で、いいエンディングでした。
ここに登場する家族は美人姉妹ですね。
そしてドライすぎる奔放なお母さんもとても美しい人のようです。
そして登場はしませんが、父親がまたとてつもなくイケメンの設定ですね。
なので主人公も美少女なんですね。
それがよりによって~。
でも周りの人も含めてこの物語には悪人は出てこないので、純粋に後半に仕掛けられたトリックで、ああ、そうくるか~と楽しんで読めましたね。
この作品が最後で良かったですね。
その前の「母性という名の狂気」が最後だったあら、ものすごく読後感が悪かっただろうと思います。

「憎悪」という作品のモデルになったデザイナーっているのかな?という点が気になりましたが、華やかなファッションデザイナーの世界で、自由奔放に生きる女性デザイナーに憎しみを覚えましたね。
この作品の主人公は紛れもなく愛人の方なのですが、このトリックのもとになるのがこの女性デザイナーの存在なのです。
こういうものは映像化してしまうととても陳腐な作品になります。
無理やり作ってしまうと作品の美味しいエッセンスが台無しになりそうですね。

二重露出」という作品もおマヌケな感じがしますが、面白かったですね。
ホームレスの駆除に至るまでの経緯もしっかりと描かれているので、物語ののめりこめます。


「病んだ水」も途中で気づくと思うのですが、産業廃棄物と環境問題という点に注目した社会的な内容も含んでいます。
産業廃棄物の会社で社長秘書をしていた元社員の手記から始まります。

「殺意のかたち」はサスペンスドラマみたいに、刑事が容疑者の周りを何度もうろつきます。
これも終盤に仕掛けがあるのですが、ドラマ向きの作品ではないでしょうかね。

「殺人は難しい」では、あからさまに殺意が描かれていて、犯人も犯行もストレートに描かれています。
つまりは殺人そのものがトリックになっていないのですが、別の点で、ちゃんとトリックがあります。
読んでいて、初めから違和感がありましたが、それに気がつくのは終盤ですね。

8本の作品はどれも適度な長さで、通勤や休憩時間に読むのに最適です。
長編作品のような読み応えはありませんが、読みやすいですね。
短くても、「騙された~」という感覚は存分に味わえます。

 

 

 

 

 

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