悪魔の尻尾

みなさ~ん、元気にしておりますか?

ロストケア 原作とは異なるもののこれはこれでアリ!?

先日読んだ本ですが映画化されています。
そして松山ケンイチさんと長澤まさみさんが出演しているということですし、Amazonプライムビデオにもありますので見てみました。

 

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こちらの本は、犯人が誰か最後の方までわからないという点がミステリーなのですが、映画は全く違いました。
もちろん概ね同じですが、はじめに犯人がわかってしまいます。
そしてもう一点重要なことが、重要な人物である検事が女性になってしまっているということです。
と、ここまで言うだけでほぼネタバレなので、このままネタバレついでにいうと、主人公は<彼>ではなく、いきなりベテラン介護士の斯波ということが序盤にわかります。
彼は、「ロストケア」を実行=悲惨な介護から「死」を提供することで悲惨な現実から「救い」を与えているというのですが、このあたりは原作と同じと考えていいでしょう。
では検事は長澤まさみさん、ということがわかりますよね。
原作では<彼>を追い詰めるのが真面目な検事である大友秀樹なのですが、この映画では大友秀美となっています。
しかし大友秀樹のストーリーとは全く違うため、原作「ロスト・ケア」と映画「ロストケア」はテイストはたしかにそのままなのですが、やはり別なものと感じます。
原作の大友秀樹の父親は貿易商で成功し、財を成してフォレスト・ガーデンというフル介護の高級老人ホームへ入居しました。
しかし映画の大友秀美は裕福ではなく、父とは絶縁状態。
そして母が認知症という設定です。
最初は検事が女声になったし、親も母親にしたほうが違和感がなからかな?程度に思っていましたが、全然違っていました。
彼女は父からの連絡を無視し続け、結局父は貧困によって亡くなりました。
自分の中から拭い去りたい過去ということになりますが、大友秀美はそれらの事実に蓋をしていました。
それが留置場の斯波と面談したときに、父を殺した事実を告白されます。
そしてそれは父にとっても自分にとっても必要な「処置」であり、それは斯波にとっては正義であり、そこに全く悔いていることはないのです。
その後自分が行ってきた「処置」はすべて十分に苦しんだ事実があり、そこで苦しむ家族、本人のために行った正しい行いだというわけです。
検事である大友は、悔い改めさせて処罰を受けることが贖罪であると考えていましたが、斯波との面談を通じて、自分も父を殺したという告白をするのです。
そして一番がっかりした点は、大友のバスケットボール部時代のチームメイトである佐久間功一郎が全く登場しません。
佐久間功一郎の話は当然フォレストグループを通じて、大友の父親の介護施設についての相談から始まるわけですが、そういった点は全くありません。
完全にこの映画からは削除されています。
佐久間功一郎が心のなかで大友を「偽善者」呼ばわりするという点もこの原作の面白い点だったのですが、そういった話もありません。
佐久間が裏の組織へ介護の名簿を流していたことももちろんないです。
佐久間には彼なりに考える正義があったりと、原作には物語に厚みを持たせているのですが、映画にはありません。
そして邦画ならではの、俳優さんのアップ、長回しというのが多いかな?と感じました。
もちろん斯波の父を演じていた柄本明さんの迫真の演技は素晴らしいもので、見ごたえはありましたが、原作を読んだ人からすれば、ちょっと残念だな~という感想ですね。
まあ、介護殺人というメインテーマをよりクローズアップするには他を排除したということになるでしょう。
書籍ならではの表現で<彼>としていたのはある意味ズルい方法で、映画でそういう表現は無理ということもあります。
そこで考え出されたシナリオと思えば、うまく作られているなとも思えます。


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原作を読むのもいいですし、映画から見てもらってもいいと思います。
決してつまらないというものではないと思いますが、色々と考えさせられるテーマですね。

 

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