悪魔の尻尾

みなさ~ん、元気にしておりますか?

嗤う淑女 中山千里

画像はAmazonより

中山千里さんのミステリーです。
いつものごとくKindleにて。
Kindle Unlimitedで読みました。
淑女シリーズとして3作品あるようで、これを読んだら続編を読まずにはいられなくなりますね。

登場人物

蒲生美智留
主人公。嗤う淑女。
振り返るほどの美人であり、八頭身のモデル体型です。
そのため男性を引き付ける魅力に溢れている女性。
父は会社を経営していましたが、事業に失敗し倒産。
お嬢様育ちだった母は耐えきれず、男と失踪してからは団地に引っ越しをして、父典夫と二人で不幸な生活を送っています。

野々宮恭子
蒲生美智留とは従姉妹だが、正反対に見た目は冴えず、体系も悪く太っているため、クラスではいじめの対象になっています。
再生不良性貧血と診断され、治療法は骨髄移植が有効と診断されますが、両親、兄弟ともにHLA型があいませんでした。
引っ越してきた従姉妹の美智留とはHLA型が一致したため、彼女から移植を受けて完治します。

蒲生典雄
美智留の父親でかつては会社を経営していましたが、倒産とともに家を手放し、妻は男を作って失踪しました。
妻への恨みは、成長するにつれて妻に似てきた娘へと向けられていきます。

日坂浩一
野々宮恭子のクラスメイトですが、不良で同じクラスにいる神野美香と付き合っています。
しかし、きれいな美智留が転向してきたことにより、美智留にアタックします。

神野美香
野々宮恭子のクラスメイトですが、女子生徒たちのボス的な存在で、恭子をいじめていました。
しかし浩一が美智留に興味を示し、そして振られてしまったことから美智留をいじめの対象としていきます。

鷺沼紗代
野々宮恭子の高校時代のクラスメイトでごく普通の女性でした。
大学卒業後に帝都銀行に入り、OLとして働いています。
男に頼るしか生きていけない母親とは仲が悪く、自立心は高いものの、男社会の銀行でのストレスが元で買い物依存症になります。

野々宮弘樹
野々宮恭子の弟ですが、大学卒業後、就職に失敗し続け、家業である産業廃棄物処理を手伝っています。

古巻佳恵
夫が会社のリストラとなってからは、パートをしながら家事を行う生活。
夫はリストラ後、仕事を見つけられずにジリ貧生活になります。

古巻登志雄
古巻佳恵の夫ですが、自動車メーカーのリストラによって仕事を失い、次の仕事が見つからぬままに作家になると言い出し、書斎で執筆をしています。

 

野々宮孝之
恭子と弘樹の父親です。
リストラ対象だったので早期退職で退職金を受け取り、それを元手に始めた産業廃棄物の仕事ですが、経営は厳しい状況です。
就職に失敗した弘樹に対して、口だけではなく鉄拳を浴びせていきます。

野々宮照枝
恭子と弘樹の母親です。
仕事が見つからない弘樹に対して、容赦なく罵ります。

宝来兼人
債権回収で手広く弁護士事務所を広げ、かつては多くの従業員を抱える法律事務所の長だったが、最近は縮小しています。
刑事事件は専門外でしたが、弁護の依頼を受けた蒲生美智留を見て、チャンスとばかりに快諾します。

 

あらすじ

野々宮恭子は見た目も悪く、体も貧血で休みがちなため、クラスではいじめの対象となっていました。
いじめていたのはボス的な存在である神野美香。
同じクラスの不良である日下浩一と付き合っており、抵抗することもできませんでした。
そんなおり、従姉妹の美智留が最近引っ越しをしてきて、同じ学校のクラスメイトになります。
眼を見張るような美人でスタイル抜群の美智留に日下浩一はぞっこん。
そして神野美香は美智留を攻撃の対象としたため、間接的に恭子はいじめられることがなくなったのです。
貧血の原因は再生不良性貧血ということで造血細胞である骨髄移植を受けることになりましたが、両親、弟ともに型が合いません。
偶然にも美智留とHLA型が一致し、ドナーとして骨髄の提供を受けることになり、貧血は完治します。
それ以降、恭子は美智留のために尽くそうと思うのでした。
仲良くなった美智留の団地に遊びに行くと美智留の父親が帰って来ることになり、言われるがままに恭子は押し入れに隠れます。
美智留の父親の典雄は口汚く美智留を罵り、暴力を振るうのです。
そしてあろうことか、娘を凌辱するのでした。
助けにでていくことができない恭子は情けないとともに美智留のためになんとかしてあげたいと強く思うのです。

感想

何とも不幸な少女である主人公蒲生美智留。
とてつもない美女であり、頭脳も明晰です。
そういうキャラクターを稀代の悪女に仕立て上げた中山千里さんは恐ろしくて、何ともいやらしいキャクターを作り出しました。
現実にこういう女性がいたら、私のような浅はかな男性はイチコロに騙されてしまうでしょう。
殺されてしまうのか、体の良い使い捨ての駒として利用されるのか。
小説の世界とはいえ、もしこのような魔女のような殺人鬼がいたら、抗うすべはありません。
多分殺される方も気が付かないし、そもそも彼女は手を下しません。
実行犯は完璧に彼女によってマインドコントロールされてしまうのですね。
もう小説の中といえ、完璧な洗脳によって彼女の駒として実行犯となるのですね。
ネタバレを含みます。
第一章は「野々宮恭子」というタイトルになっていますが、蒲生美智留が野々宮恭子という駒を使って、自分の人生の最大の障害である父親を殺すのです。
親殺しは大罪ですが、この親は殺されても仕方がないほどの人物です。
まあ、この小説に登場するオヤジたちは本当にどうしようもない人たちばかりです。
蒲生典雄しかり。
野々宮孝之然り。
古巻登志雄然りです。

不穏な第一章ですが、ここまでは稀代の悪女もなかなか不幸な生い立ちで、心の何処かで応援していたようなところもあります。

第二章は「鷺沼紗代」。
時は流れて、蒲生美智留たちは、20代になっています。
美智留は生活プランナーというコンサルタント業を個人でやっています。
これはこれですごいですね。
適当な仕事ではなく実際にファイナンシャルプランナー一級の資格も持っているのです。
これだけ美女で普通にファイナンシャルプランナーをやっているだけで、かなり注目されると思うのですが、彼女の場合あまりお金に興味があるわけではないようなのです。
そして第二章の主人公の鷺沼紗代は大手銀行の窓口で働く女性。
彼女もまた命を失うわけですが、その前には美智留の催眠術のような誘導によってこの銀行員は不正に手を染めていきます。
もとを正せば身の丈に合わない浪費を辞められなかった鷺沼紗代にも大きな問題があったのですが、美智留のアドバイスを受けるとなんでも解決できるという気になってしまうのですね。
この時点ではただの詐欺師?に成り下がってしまった蒲生美智留に対して、稀代の悪女というほどでもないという印象でした。

第三章は「野々宮弘樹」です。
野々宮弘樹は死にませんが、この章あたりからはちょっとゾクッとするような恐怖を感じます。
ちなみにこの章では野々宮家の話が中心です。
野々宮家とは美智留は親戚であり、美人の美智留は可哀想な女性として野々宮の人間たちからは認知されていたと思います。
しかし、今や個人事業主で、娘の恭子は美智留のもとで働いています。
そしてここのオヤジがかなりダメな人物でした。
ダメな自分を棚に上げておきながら、息子には厳しくあたります。
うまく行かない自営業で、就職がうまく行かない息子に対して家の仕事を手伝わせているわけです。
若い無料の労働力でありながら、自営業はいつ潰れてもおかしくない状態で、経営者としてのセンスはゼロです。
うまく行かない自営業に、そのはけ口として息子に強く当たっているのでしょう。
そして姉の恭子も近くで優れている美智留を見ているため、自分の弟の間抜けさをことさらあげつらうのです。
美智留への恋愛感情をうまく利用し、野々宮弘樹は美智留の駒となって、オヤジと姉を殺します。
そうなるように誘導されたことに気づかない弘樹は哀れというしかないです。
オヤジがひどい人物ですが、母親も相当にひどい人物だと感じますね。

第四章は「古巻佳恵」です。
このオヤジのダメっぷりは、美智留の父親に引けを取らないほどですね。
リストラされて仕事を見つけられず、簡単に作家になろうとするこのオヤジに同情の余地はないというか、たぶん中山千里さんも簡単に本を書けると思うなよ~という気持ちが随所に現れているような気がします。
まあ、能力がないのに薄っぺらいプライドのために家族からドンドン疎んじられ、引くに引けなくなった家庭の不良債権がこのオヤジです。
彼が死ぬことが子どもたちを抱えてこれから出費が重なる古巻家にとってもっともよいシナリオということなのですね。
とてもわかりやすいです。

第五章は「蒲生美智留」ですが、彼女は人生の最大の危機に陥ることになります。
殺人教唆、殺人、いずれにしてもここまで起きてきた事件は事故ではなく、殺人ということで警察、検察は彼女を追い込んでいきます。
そんな大ピンチでも顔色ひとつ変えることなく、反撃を加えて無罪を導いていくのですが、ここに中山千里さんのお得意の「どんでん返し」が待っていました。
なるほど~、第一章の野々宮恭子の内容がいきてくるとはおどろきでした。
小説ならではの展開ですが、だからこそエンターテイメントなのでしょう。
ドラマ化されていたそうですが、全然知りませんでしたね。
どんな感じなのか興味が湧いてきます。


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うーん、ドラマは見ていませんが、予告を見る限り、違うなあ~という気がします。
ストーリーも結構改変されているみたいですし、蒲生美智留のキャラクターも違うと思います。
小説のような悪女ってどんな女優さんをもってきても難しいのかな?なんて思ったりもしますね。
小説のほうが多分段違いに面白いと思いますが、それはやっぱり見てから評価しないと片手落ちですね。

 

 

こちらは続編ですが、読みました。
悪女ぶりに磨きがかかっています。
また紹介したいと思います。

 

そして淑女シリーズ第3弾がこちらですね。
こちらはサイコパス臭が更に強くなっていますね。

 

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