悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

ニューロマンサー 面白さを理解するには超えるハードルが高すぎる小説

 

 

 

 

tails-of-devil.hatenablog.com

読破するまでかなり時間がかかりました。
長い小説ではありますが、スラスラ読めばそんなに時間はかかりません。
読む気力を奪ってくれるようなところがあり、理解が追いつかず、何度も前に戻って読み直すということがあります。

 

読みづらいです。
本当に読みづらい小説でした。
ただ、面白くないのか?というと面白いのです。
もうぶっとんでいるというか、サイバーパンクという世界をSFに持ち込んだウイリアム・ギブスンという作者は色な意味で優れた才能を持っているんでしょうね。

登場人物

ケイス
主人公。
元コンピューター・カウ・ボーイ(ハッカー)。
師匠は伝説的なハッカーであるディクシー・フラットライン。

モリイ
この物語のヒロイン的なキャラクター。
女性だが、戦闘力の高いサムライ。

アーミテジ
ケイス、モリイ、リヴィエラ、フィンを雇う上司。
ただしこのアーミテジも雇われており、彼の雇用主はウインターミュート。

ピーター・リヴィエラ
相手に見せたい映像を見せることができる能力者。
麻薬中毒者(ジャンキー)であり、相手に見せる幻覚の強度をも変えることができる人物。

フィン
ケイスたちをフォローするチームの裏方。

イリアム・コート大佐
アーミテジのもとになった元軍人だが、作戦に失敗し、廃人となる。

冬寂(ウインターミュート)
アーミテジの雇い主。
人間ではなく、AIである。

リンダ・リー
ケイスの元恋人。

ディクシー・フラットライン
電脳カウボーイ(ハッカー)の師匠。

マエルクム
ザイオンへの船を操る人物。

世界観

未来のお話。電脳空間(サイバー)で暗躍するハッカーたちの世界を描いた小説。
大企業による支配、貧富の差、肉体とそれを補助するテクノロジーとの融合。

あらすじ

主人公のケイスは腕利きのハッカー(電脳カウボーイ)でしたが、雇い主から情報を盗もうとした罪で、サイバー空間(ネットワーク)にアクセスするための機能を奪われてしまいます。
唯一の自分の特技を奪われ、未来が見えないケイスはやさぐれていましたが、アーミテジという人物が彼の能力を復活させることを引き換えにある仕事を依頼します。
依頼というものの現実には拒否できない強制的な方法でアーミテジの計画に加えられたケイス。
それは、人工知能である冬寂(ウインターミュート)を更に性能アップさせるための任務だったのです。
人工知能AIは進化しすぎると人間が制御できなくなるため、AIやサイバー空間を監視するチューリング機関があり、アーミテジに率いられるチームの行動を追いかけてきます。

感想

ぶっ飛んでいますね。

この世界観をこの時代に生み出したウイリアム・ギブスンは天才というか、未来が見えていたのか?

インターネットが発達した現在ならわかりますが、この時代にはまだネットすら社会に走られていなかった頃の小説です。
さらにウイリアム・ギブスンはコンピューターに関する知識もなく、パソコンも普及している時代でもないのです。
にもかかわらず、サイバー空間、インターネットによって全世界の情報がつながる時代を見越していました。
そしてAIが人間の能力を超える、そのためにそれを監視する機関の存在なども書かれています。
仮想化という言葉はPCの世界ではそれほど目新しいことはないのですが、そういう世界をPCがなかった時代、インターネットが無かった時代にすでに小説として書いているということ自体が信じられません。
仮想現実(VR)の世界でも驚くべきことですが、この小説に出てくる世界は、映画「ブレードランナー」の世界やゲーム「CyberPunk2077」の世界のようです。
マトリックス」という映画も多分にこういったサイバーパンクの世界観からの影響はあると思います。
特に人体改造、義手や人口眼球といった人間の本来の能力を超えた人体改造はまさに「CyberPunk2077」の世界そのものですね。


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21世紀の現在であれば、映画やゲームと言った映像表現を見て、なんとなく想像しながらこの小説を理解しようとできると思いますが、そういったものがなかったこの時代にこの小説を読んだ人は、どこまで理解できるのか疑問です。
それにしても読みにくいのです。
全然知らない言葉の羅列で、それを理解するのに時間がかかります。
意味がわからなくても読みすすめていけば、どこかにその言葉の解説やらヒントがあるのですが、新しい言葉が登場して、すぐにその意味が書かれていないのでちんぷんかんぷんに陥りやすいです。
ゲームでもファイナルファンタジー13をプレイしたが、あの世界観と用語についていけませんでしたが、あのゲームよりはマシかもしれません。
パルス(外界?)のファルシ(不思議な力?力の根源?)がコクーン(理想郷?)を侵食しており、セラは呪われたルシ(ファルシによって選ばれた存在)を救うための存在。
どうです?FF13って、意味不明ですよね。
(映像はとても綺麗ですし、ライトニングというキャラクターはルイ・ヴィトンのCM二採用されるほどのシリーズ屈指の美人だと思います。)


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文章表現は独特です。
冒頭の文章だけでもなんとも言えないセンスを感じます。
港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。

あるいは、
こういうところの住人は、芸術が必ずしも犯罪でなく、犯罪も必ずしも芸術ならざる中間地帯で働いている。

こんな表現が結構ありますね。

漢字で書かれている言葉もルビが振ってあって、それも独特ですね。
電脳空間(サイバースペース
操作卓(コンソール)
端末機(ターミナル)
本体(メインフレーム
擬験(シムステイム
模擬実験(シミュレーション)
凝り性(アーティスト)
円環体(トーラス)、紡錘体(スピンドル)、集合体(クラスタ
識閾下(サブリミナル)
植民島(コロニー)
悪徳都市(バビロン)
考えてみれば、普段カタカナで書いている言葉ですが、漢字という文字自体に意味がある言葉を使える日本で意味のわからない外来語をそのまま書くよりもわかりやすいかもしれませんね。


 

 

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