悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

山彦 ヤマダマコト 新潟文学工房

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「お金の流れでわかる世界の歴史」をまとめる傍ら、読んでいた小説です。
ちょっと小休止。

 

 

新潟文学工房とヤマダマコトさん

新潟文学工房というセルフパブリッシングを主催しているヤマダマコトさんの代表作とも言える作品です。

セフルパブリッシングとは個人出版のことであり、KDP(Kindle Direct Publishing)で、非常に簡単に小説などを発表できるようになりました。

だからといって、誰でも小説を書いて読んでもらえるというほど簡単でもなく、ましてや多くの読者を獲得して、読んでもらえるようになるというのは大変なことだと思います。

そんな中、ヤマダマコトさんという作者さんは、セルフパブリッシング、KDPではかなりの有名な人みたいですね。
というか、この小説、とても副業で片手間に書いた小説とは思えないほどのクオリティで、読み応えがありすぎるのです。
ヤマダマコトさんは新潟文学工房という名前の通り、新潟の街を舞台にした小説をたくさん書いています。
新潟には行ったこともありませんのでわかりませんが、その内容から郷里の新潟を深く愛しているんだな、と思います。
素晴らしいことです。

 

天化シリーズ

ちなみにヤマダマコトさんの小説で初めて読んだものは、「金色天化」でした。
もう、この「金色天化」は大好きすぎて、続編2冊も読みました。
さらなる続編を期待したいのですが、もう出ないみたいです。

きっと私のようなファンがいて、続編を心待ちにしている人がいると思います。
書いてくれないかな?

 

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天化シリーズもいずれもとても面白い作品です。
もちろん、こういう「少しSFが入った小説」が嫌いな人は楽しめないのかもしれませんが、カタカナや専門用語ばかりでてくるサイバーなSFとは全く違っています。

 

山彦の概要

さて山彦ですが、ヤマダマコトさんの本としては一番有名な本なのでしょうか。
非常に評価が高いですね。
そして読んでみて、それが正しいと実感しました。
大変長い小説で、序盤、面白さを感じる前にやめてしまう人が多いのではないかと思ってしまうのですが、そこがちょっと残念です。


中盤からは、話の流れや世界観もしっかりつかめ、ドンドン引き込まれていきます。

本当に大出版社から綺麗な装丁の紙の本が出てもおかしくないほどの出来栄えです。

日本の古来の妖怪をベースにしているところはありますが、オリジナル。
フィクションですが、精緻な筆によって、リアリティがあり、それは天化シリーズと変わりません。
読み応えありますよ。

 

サンカ、ヤツガハギと呼ばれる山の民は、独特の生活様式を未だに維持しています。
彼らの存在は闇に紛れたままで、日本の中で表舞台に出てくることがありません。


彼らは「山の民」。
独特の文化を支えるのは彼らの中でも特別な存在である「エダカ」という存在。
エダカは山の民のシャーマンであり、死者と対話ができるのです。
そしてエダカは代々その知識を後世に伝えており、それは文や口述ではなく、枝化ならではの方法で受け継がれているのでした。

三条市の市会議員の高橋は地元で不動産業を営む家で育ち、地元の大物の後援もあって、若くして市会議員に当選した議員一年生。
希望も野望も胸に秘めているのですが、地元の木島建設をめぐる怪しい影を掴みます。
深い癒着を洗い出そうと動き出すのですが、木島建設の創始者である木島忠男は狡猾で大変恐ろしい男。
誰も木島建設に逆らうことできないのでした。
それは警察においても同じなのです。

須見ヒロシは地元新聞の記者。
地味で飾らない人柄でしたが、地元を離れて大学に在学中に、心の拠り所であった父を亡くします。
姉夫婦と暮らす息苦しさから、逃れるように山の民と接触し、彼らの不思議な生き様を目の当たりにします。
特にエダカであるフミという盲目の少女に強く惹かれていくのでした。

山ガールとして、モデルとして、フリーランスのライターとして活躍する美人のユキホもこの「山の民」と接触をしています。
彼女も謎が多く、一体何の目的で彼らに近づいたのか不思議でした。

ミキオを「オヤ」(ボス)とした山の民の一行は、里の者(街で暮らす人々)を警戒しているのですが、須見もユキホも彼らに溶け込んで行きます。

議員の高橋が首を突っ込んだ「木島建設」との癒着は、誰もが口を閉ざす闇でした。
高橋の後ろ盾だった大物も突然不審死します。

この新潟で連続不審死が発生しており、その事件と木島建設に何らかのつながりを見出そうとする高橋でしたが、家族の身を守るために、彼は家族とともに山奥にある別荘へ避難します。

休暇を使って、山の民との生活を続ける須見。
そして山ガールであるユキホ。
彼らはシャーマンであるフミの不思議な力を現実に見てしまうのでした。
そしてフミやミキオたち山の民の信頼を得ていくうちに、彼らの歴史についても徐々に学んでいくのです。

市会議員の高橋と木島建設、そして山の民の接点を巡って物語は大きく展開していきます。

 

感想

あらすじは途中までとしておきます。
ストーリーも面白いのですが、ちゃんと仕掛けもあって、小説を中ほどまで読みすすめると、種明かしがあるのです。

しかし面白いのはそこからで、終盤にかけて更に展開があります。
そのどれもが大変興味深いのです。

シャーマンのエダカというのは持って生まれた才能で、山の民の誰もが望んでなれるものでもなく、努力してなれるわけでもありません。

そしてその力を極限まで高めた人間を作るための「秘策」がありました。
フミと、もうひとりの元「エダカ」が登場します。
彼らは特別な力を得るために「秘策」を使って生まれてきたのです。

木島建設は登場時点から「悪」ですが、彼らに秘められた力があるわけではありません。
しかし狡猾な木島忠男、その息子の正一によって、山の民、「エダカ」の力を利用するのでした。

なんとも悲しい歴史があり、フィクションといえども、人間の本質が垣間見える描写もあるのです。

エンディングも納得できるものでしが。
KDPの世界を引っ張るヤマダマコトさんの代表作として、この「山彦」は外せないですよね。

 

登場人物

須見ヒロシ
地元の中小新聞社の記者。
地味で人を蹴落としたりすることが苦手な人物。
独身。

ユキホ
スラリとした美人で、今流行りの山ガールとして、モデルもこなしている女性。
同時にフリーランスのライターとして活躍するジャーナリスト。

高橋
30代で当選を果たした市会議員。
頭もよく、理想も持つと同時に自身の野心も垣間見える人物。

五十嵐
須見の上司。
酸いも甘いも噛み分けてきた中堅社員。
警察の橿原とは懇意にしている。
「山の民」についても、彼なりの理解で、今回の件を見ている。

橿原
地元警察の副所長に納まり、現在は内勤。
しかし元々は腕利きの刑事であり、その能力は高いと見られている。
過去に「山の民」と木島建設のある「闇」に勘づいたものの、真相を解明するには至らなかった。
五十嵐とは古くからの付き合いがある。

 

木島忠男
木島建設を起こし、地元ではあらゆるところに絡んでくる企業にまで育て上げた。
公共事業の落札があからさまに裏があると見られているのだが、誰もそこにメスを入れることができない。
秘密に包まれた会社

木島正一
木島忠男の長男で、社長になる。
木島忠男よりも更に狡猾な部分を持った人物。
彼も謎に包まれている。

 

ミキオ
山の民をまとめるリーダー「オヤ」。
長年の山での生活で鍛え上げられた肉体を持ち、頭の回転も良い。
須見と少しの間山の民として生活し、信頼するようになる。

 

フミ
山の民のエダカと呼ばれる特別な存在。
エダカはその力から、尊敬と同時の恐れられ、山の民たちの中でも少し浮いた存在となっている。
盲目であるが、非常にカンの良い娘(少女)である。

 

レン
スラリとした長身で、見た目はとてもハンサムな青年。
しかし、彼の実態は?
この小説の後半においては、キーマンとも言える。

 

 

 

分冊で3巻にもなります。

 

 

 

私はこちらの1冊になったもので読みました。
相当な分量があります。

オススメ小説です。 山彦とは違った魅力がある小説です。 山彦も天化シリーズも、フィクションです。
ヤマダマコトさんは、エンターテイメントとよんでいますね。

 

 

 

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