悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

婚活中毒 秋吉理香子

画像はAmazonより

通勤時にサクッと読んだ本です。
いつものようにKindle Paperwhiteで読みました。
Kindle Unlimitedにあります。
4つのストーリーが入った短編小説ですね。

理想の男

付き合っていた彼氏に振られたばかりの主人公吉本沙織。
母親からは以前はお見合いの話をもらったりしていたが、40前にもなると今更そういった話もありません。
母親から薦められたのが結婚相談所。
沙織は結婚相談所「フェイト」を訪れます。
そこで紹介してくれた男性の杉下圭司は高収入でかなりのハンサム。
沙織も彼女の母親も圭司さんとの縁を大切に思うのです。
しかし沙織は不審に思います。
どうしてこれほどの男性が今まで結婚相談所に登録して結婚していないのかと。
沙織はこれまで圭司が結婚相談所を介して付き合った女性3人を調べていくと不思議なことに3人とも亡くなっているのでした。

婚活マニュアル

矢部洋介は30歳を迎える独身男性でしたが、友人の孤独死を目の当たりにして、結婚願望が強くなりました。
そこで「BBQコンパ」という婚活パーティに参加することにしました。
そこで出会った上原愛奈と田淵靖子。
二人はナースの先輩と後輩でしたが、見た目には大きな差がありました。
このパーティでダントツの美女の愛奈とぽっちゃりというよりデブに近いブスの靖子。
このパーティの男性陣はみんな愛奈に夢中ですが、結局愛奈を射止めたのは洋介でした。
真面目に婚活のためのマニュアルを頭に叩き込んで対策を立てたのが功を奏したのだと思っていました。
こんな美女と付き合えることにのぼせ上がってしまった洋介。
愛奈は可愛らしく言いなりになる洋介ですが、愛奈が謙虚だったのは最初だけでだんだん愛奈の要求は激しくなってくるのです。
洋介は金銭的にとてもついていけなくなってきます。
そんなタイミングで相談に乗ってもらったのが彼女の先輩である靖子でした。
そして愛奈はとても素敵な女性だが、結婚をするのはこのように地味でも謙虚な女性だと思うようになってきたのです。

リケジョの婚活

婚活番組「ミッション縁結び」に参加することを決意した後藤恵美はある電機メーカーでロボットなどの開発をしている理系の女子、いわゆるリケジョです。
彼女は婚活番組、いわゆる集団お見合い番組に自分が参加するなんて考えても見なかったのですが、それは突然やってきました。
たまたま見かけたこの番組のエンディングで次回の開催に参加する男性のビデオメッセージがありました。
その男性陣のリーダーを務める舘尾典彦に一目惚れしたためです。
彼に会いたくて、彼と結婚したくて恵美は様々な準備をするのでした。
そしてこの番組での集団お見合いの当日がやってきました。
彼女はどうすれば男性のポイントを稼げるのかを緻密なデータから分析。
そしてそのための予行演習も全て自分でシミュレーションしてきたのです。
更には男性の自宅訪問で彼の両親に気に入ってもらうためのアピールを最大限に利用します。

代理婚活

奥手の男女に代わって親が出張っきて婚活をする代理婚活パーティに参加することになった石田益男と妻の郁子。
息子の孝一は35歳になるが、ガールフレンドの一人も連れてきたりしません。
過保護な母である郁子を鬱陶しがる普通の男の子として成長。
高校を出てバイクの整備士となるために専門学校に進み、すぐに独立してしまいます。
そんな息子に嫁をと積極的な郁子。
気乗りしない益男でしたが、参加した中で24歳のピアニストの吉村葉子を郁子が気に入ります。
お金持ちで育ちも良いお嬢様ですが、それ以上に益男が気になっていたのは葉子の母親である久恵の存在でした。
定年後、隠居していた自分にもこんな気持になることがあるのだろうと思うほど、美しい久恵に舞い上がってしまったのです。

感想

面白かったですね。
どれもそれほど長い小説ではなく、短編小説です。
ただ、ショートショートというような数ページではなく、そこそこの読み応えがあります。

どの内容も刺激的で、結構後味の悪いものが多かったです。
(ネタバレを含みます)
最初の「理想の男」は一番サスペンスっぽい感じですね。
なぜなら結婚相談所で見つけた男性と結婚を考えていますが、この男性のお相手の方3人が次々と亡くなってしまっているのです。
偶然と片付けるにはショッキングな事実です。
彼が殺したのか?と疑うのですが、彼には完璧なアリバイがあります。
素敵な彼を誰にも渡したくない「何者」かによって、相手の女性が殺されていったのですね。

「婚活マニュアル」は現実に存在するでしょう。
確かに当たり障りのない、真っ当なことばかりが書いてあると思いますが、そのとおり実行したら結婚ができるというようなものではないです。
この物語に登場する愛奈と靖子は美女とその引き立て役という役回りですが、ある意味最強のタッグです。
婚活マニュアルにある内容を逆手に取って、男から貢がせ疲弊したところで引き立て役が落とすという最強のテクニックなんです。
まあ、味わってみてください、この二人の手口を。
恐ろしいですwww

「リケジョ婚活」はエンディングがとても秀逸です。
ちょっとホラーですね。
なんというかタモリ世にも奇妙な物語になりそうなお話。
舞台は「ナイナイのお見合い大作戦」そのまんまです。
私はあんまりテレビを見ないのですが、娘は結婚前にこの番組が好きでしたね。
妻と娘が見ている姿を私と息子が眺めているって感じでした。
そんな内輪話はともかく、ターゲットを決めてそれを狙い撃ちする主人公が怖いです。
とてつもなく優秀な女性というのはわかります。
完璧に立ち回ってポイントを稼ぎ、「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の通り、両親を完璧に懐柔。
ターゲットにされた男性は非常にモテる男性で多くの女性が彼の家を訪問。
色々と迷ったのですが、結局は自分が最初から気になっていた女性と付き合うことにします。
つまりお見合い大作戦では敗退したリケジョ。
しかし、そこからが彼女の2回戦が始まるというのがエンディングで描かれます。
こういう成り行きも彼女の想定内だったんですね。
怖いですね~。

そして最後の「代理婚活」。
これも新聞などで過去に話題になった婚活です。
この形態って昔のお見合いそのまんまなのですが、それをシステマチックに合同で行うことなんですね。
主人公である「益男」はこの婚活をまるで就職活動だと評したのですが、まさに同じですね。
自分をアピールし、評価を高めてできるだけ「良い条件」の相手を探すんですね。
そしてこの話だけは結婚する息子ではなく父親の益男が主人公なんです。
これもゾッとする展開なのですが、この物語だけはハッピーエンドです。
セレブには程遠いながらも大手企業で部長にまで上り詰めた益男は実に頼りない人間で、大学にも行かず油にまみれてバイクの整備をする息子こそ、真贋を見極める目を持っていたということです。
同世代かもしれないこの益男に自分を重ねてみると果たして彼を笑えるのかどうか全く自身がありません(笑)。
いくつになっても恋は盲目なんですね。
そこに付け入る隙が生じるわけなんですね。
恐ろしい!!

それにしてもこういう小説を書いていく人の頭の中にはやっぱり「毒」がたくさん詰まっているのでしょうかね?

「婚活マニュアル」から、そのあたりの毒の詰まった文章を抜粋しますね。

テレビでも雑誌でもネットでも婚活本でも「女性は見た目が全てではない」とか、「美貌より愛嬌」だとか、「内面の美しさが肝心」だとか、ブスに対して口当たりの良い建前ばかりが溢れている。
ハッキリ言って、それらは全て絵に描いたモチだ。そもそもブスには、内面を知ってもらうチャンスすら与えられないのだから。特に婚活というバトルフィールドにおいては、ブスは丸腰。正攻法で挑んでも二百パーセント勝ち目はない。

どぎついですね。
さらには、

このチーム婚活のメリットは二つある。一つ目は、一度は美人と付き合った経験を持つことで男の気が済むこと。二つ目は、その経験に懲りてトラウマ化すること。
この先美人に出会っても、トラウマを思い出すことで近づかなくなるだろう。つまりは、美人に対するワクチンなのである。特に、婚活ビギナーには早めに打っておくに限る。

いやはや、ここまで来ると恐ろしいですね。
こんなにあからさまではなくても、実は過去の恋愛経験から潜在意識の奥深くに刷り込まれている男性もいるのではないか?と思ったりします。
あ、もちろんこの反対の女性もいると思いますね。
女心を手のひらに乗せて転がすのが得意な男性とか。


軽くて、どのストーリーも楽しめますので、おすすめですね。
一話ずつ別れて漫画版もあるようです。
更にお手軽に読めそうですね。

 

 

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