悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

闇狩り師 蒼獣鬼 夢枕獏 ファンタジー?バイオレンス?ハードボイルド?

Amazon Kindleより

暑い日が続きますね。
北海道や避暑地でも猛暑日や熱帯夜になるなど、異常な気象です。
近年の高温状況で即、地球温暖化?ということを結論づけるわけではないですが、人間が様々な環境破壊をしているのは確かでしょう。
アスファルトが増え、宅地造成のために山を切り開いたりと、現在のヒートアイランド現象は人間によって引き起こされたことですね。
地球レベルという人間よりも視点を上に持っていくと、人間というのは地球にとって害悪そのもの、我々が害虫を忌み嫌うのと同じように、害獣なんだろうなあ、とボーっと考えてしまいます。

夢枕獏さんの「蒼獣鬼」を読みました。
夢枕獏という作家の名前は知っているけれど、これまで読む機会がありませんでした。
ファンタジー小説は読みますが、この作品はファンタジーだとは思いますが、日本の宗教というものが色濃く出ています。
トールキンの「指輪物語」がファンタジーの王道で、王道過ぎてゲームや小説でもやたらとドワーフやらエルフやらが登場しますが、この小説には一切そのようなものはいません。
そのかわり、祈祷師というか、霊能者がたくさん登場します。
魔法使い、魔道士のかわりとも言えますが、新鮮に感じましたね。
ハマってしまうかもしれませんね。

この本の目次

<妄霊編>
序章
一章 異形
二章 荒神
三章 鬼哭
四章 鳴神
五章 魔呪
六章 乱神

<異神編>
一章 異人
二章 邪蛇
三章 魔人
四章 邪法
終章

 

 

登場人物

鳴神真人
不思議な力を持つ美少年。
鳴神素十の息子です。
この物語は彼と素行の悪い少年たちのシーンから始まります。
鳴神素十の血、才能を強く受け継いでいます。
真っ白な肌に「女性」のようなきれいな顔立ちの少年です。
彼がいかにして生まれたのか、物語の途中で明らかになります。

かなり不幸な生い立ちですね。


鳴神素十
いざなみ流陰陽師の家元。
呪詛返しの技を持ち、その世界においては天才的な才能を持つ伝説的な人物。
若い頃、戸田幽岳と過ごした時間を強く後悔しており、今は彼を止めるべく復讐の鬼となって生きています。

 

磯村小百合
鳴神素十の娘で鳴神真人の姉にあたります。
息子が鳴神姓ですが、姉は磯村姓というのは、母が違うからです。
彼女は鳴神の血を受け継いではいますが、普通の女性のようです。


九十九乱蔵
主人公です。
2メートルにおよぶ身長と147キロに及ぶ巨体だが、全身鋼のような筋肉を持ち、精神力も常人を遥かに超える人物です。
別名「闇狩り師」。
その風防は男前とは言い難いものの、圧倒的な体格とパワーが滲み出ており、味わい深い人物。
また強面でありながらもその眼差しは慈愛に満ちており、心を開かない鳴神真人からも好意を持ってもらえるようになります。

真壁雲斎
九十九乱蔵の師匠で、今回乱造に磯村小百合と鳴神真人の保護を依頼。
師匠と弟子の掛け合いが面白いですね。
九十九乱蔵の支障というだけあって只者ではなく、なんとも食えない人物という印象が強いです。


玄角
様々な術を操る霊能者、修験者。
生存しているはずのないと思われていた戸田幽岳のもとへやってきます。
個人的には涼し気な顔立ちをしているイケメンをイメージしています。


加座間典善
立派な体躯をもつ霊能者。
相当な手練の人物で、玄角とともに戸田幽岳のもとへやってきます。

戸田幽岳
霊能者として圧倒的な力を持つ人物。
年齢は100歳を遥かに超えているはずで、生存していることを知るものはほとんどいない人物。
政界への進出も画策していた時期もあり、政府筋からも要注意人物としてマークされてきた人物なのです。
死んだものと思われていましたが、長寿のための「秘術」もあり、肉体は等に朽ち果ててしまった存在なれど、未だに衰えない生命力と野望を秘めています。

昌子
戸田幽岳に仕える老女。
大変上品な物腰をしていますが、ときおり見せる冷たい目には相手を心の底から震えさせてしまうような迫力があります。
謎の女性ですが、最後に彼女の正体も明かされます。

黒蠅
幽岳の手下の一人。
体は小さいですが、相当な手練の人物。
昌子のそばに潜んでいる人物ですが、昌子の命令には忠実に動きます。

餓虫
幽岳の手下の一人。
蟇子と、ともに鳴神真人を、追いかけます。

 

蟇子(ひきこ)
幽岳の手下の一人ですが、彼女も考えてみれば不幸な人です。

 

羅門
幽岳の手下の一人。
彼の人生も悲しいですね。

 

有住正勝

ヤクザです。
親分に呪いをかけた鳴神素十に呪いをとかせるために、彼の息子と娘を拉致しようとします。

 

あらすじ

幼い頃より不思議な力で守られている美少年の鳴神真人。
彼の異能により、友達もおらず、心を許せる人はいません。
拾の母親の顔を知らず、父ともほぼ合うこともありませんでしたが、姉の磯村小百合のことはとても大事に思っているのです。
それだからこそ、自分で制御できないこの力に怯えながら、姉ともできるだけ離れるようにしています。

2メートルもの巨躯を誇る「闇狩り師」の九十九乱蔵は、師匠に依頼を受け、この姉弟を保護することになりました。
まずは姉の小百合が五門会という極道組織の連中に拉致されそうになりますが、それを防ぎます。
そして心を閉ざしている真人を保護するべく彼に優しく接近します。
しかしながら、本当の敵は極道者ではなく、さらに恐ろしい呪詛をする者たちだったのです。

戸田幽岳が生きているというのはにわかに信じられないが、この世界で生きている玄角や加座間典善にとっては、無視できない依頼がありました。
戸田幽岳の護衛という依頼です。
二人は仲間でも相棒でもないのですが、戸田幽岳から依頼を受けたことは同じであり、ここに来るまでに簡単な手合わせを済ませてお互いの力量は理解しているようです。
山の奥にある屋敷に到着すると、上品な老女が出迎えます。
戸田幽岳と合うことになりましたが、危険な匂いを嗅ぎ取り、玄角はこの仕事を辞退しようとします。
ところが、黒蠅と呼ばれる凄腕の暗殺者がその行く手を阻み、さらに巨体で斧を恐ろしい速度で投げつけてくる手練のものもいるとあっては、引き返さざるを得なくなります。

鳴神素十の子供を付け狙う極道組織とは、何者なのか。
また伝説の怪人物戸田幽岳の狙いとは?
これらの謎が絡み合ったまま、舞台は戸田幽岳が潜んでいる山奥の屋敷へと移り、真相がわかります。


感想

夢枕獏さんのことはかなり以前から知っていましたが、読む機会がなく、なんとなくイメージだけで避けていた気もします。
バイオレンスというかスプラッターに近い表現が多々あり、読者を選ぶ小説だと思いますね。
拝み屋、祈祷師、闇祓い師、といろんな表現ができそうですが、公式通り、「闇狩り師」というのが一番しっくりきますね。
やはり精神力というものの戦いになるのですが、超人的な肉体があればこその世界です。
フィクションならでは派手な戦いがメインですが、グロい表現に食わ言えてエロティックな部分もわずかばかりにあります。
具体的に身長や体重が書かれていますので、その体格だけでも圧倒されそうです。
ただ、読み勧めていくと、そんな肉体的なことはどうでも良くなっていきます。
鳴神素十という天才が作ってきた人間兵器とも言える能力者たちが登場します。
悪のボスは戸田幽岳で、推定140歳?
ちなみに鳴神素十もこの物語上では89歳と書かれていますが、超人的な肉体と呪詛のスキルを兼ね備えています。
戸田幽岳と鳴神素十との経緯が少し弱く、この物語では幽岳への復讐の鬼となる、素十が、なぜそこまでして幽岳の指示に従って、子作りをしたのかが謎です。

自らの力を後世に残したいと考えたのでしょうか?

主人公の九十九乱蔵も超人ですが、この物語の中心となる鳴神素十、戸田幽岳の能力がすごすぎて圧倒されます。
スターウォーズに登場するジェダイというのもこういう存在なのかもしれません。
通常の人間とは違います。
異常なスキルを備え、その感覚を幼い頃より研ぎ澄ましていきます。
高齢でほぼ寝たきりの戸田幽岳を守っている妖しい使い手たちは、一騎当千の強者ばかりです。
ヤクザ組織の精鋭部隊もこの場所にやってきますが、拳銃などで武装してきているものの、全く刃が立たずに惨殺されていきます。
小説なので映像は自分の脳内で変換されていきますが、山深い山門あたりを想像し、そこで血みどろの抗争を思い浮かべながら読んでいました。

 

 

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