悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

映画「護られなかった者たちへ」

中山七里さんの原作は先日読みました。
その原作を映画化したものがAmazonプライムビデオにありましたので視聴しました。




あらすじ

東北を襲った震災。
津波によって多くの命が奪われました。
笘篠誠一郎も妻と子供を失い、心も壊れかけています。

同じように多くの人の死を目の当たりにした利根泰久も精神的にはボロボロの状態。
そんな彼に救いの手を差し伸べる高齢の女性、遠山けい。
両親を失ってしまった小学生の「カンちゃん」。
3人は自然に一緒に過ごす時間が多くなります。
世話好きな女性の遠山けいによって、塞ぎ込んでいた利根も徐々に生きていく力をつけていきます。

ところが、遠山は高齢者で仕事もなく、わずかばかりの蓄えを使い果たしていました。
食べるものさえない状況を見て利根は生活保護の申請をするように伝えます。
国の世話になることを良しとしない遠山でしたが、説得され生活保護の申請をします。
しかし、遠山には子供がいたのです。
ただ、その子供には親らしいことをしていない引け目から、連絡することを拒みます。
生活保護を担当する三雲から、辞退することも可能であることを告げられ、それに従うのです。
遠山は餓死しました。
利根は怒り、生活保護を辞退させた役所に日をつけます。
放火の罪により彼は刑務所に入ることになったのでした。


登場人物

利根泰久 佐藤健

笘篠誠一郎 阿部寛

円山幹子 清原果耶

遠山けい 倍賞美津子

三雲忠勝 永山瑛太

城之内猛 緒形直人

上崎岳大 吉岡秀隆

感想

原作とちょっと違っている点があります。
いろいろな事情で改変するのは良いのですが、主人公の名前を変更した理由が今ひとつわかりません。
原作では利根勝久でしたが、映画では利根泰久となっています。
そのままだとまずい理由でもあったのでしょうか。
そしてカンちゃんが女性になってしまったのも大きな違いです。
男性でも女性でも同じようなキャラクターではありますが、小説ではカンちゃんというニックネームと本名がすぐに結びつかないというてんがミステリーの要素となっています。
映画ではそういったミステリー要素が感じられず、生活保護の実態という点がクローズアップされただけ担っているのは残念です。
また書籍では、殺された生活保護課の人たちの惨たらしいシーンというのが冒頭にあります。
原作では、「お宅のアパートから嫌な臭いがするんだけど…」というという通報を受けたことから、放置アパートの管理人が被害者を発見するシーンでした。
身体の自由を奪って「餓死」させるというあり得ないほど酷い殺し方を冒頭に持ってきていて、殺人犯人を見つけるというのが一つの楽しみ方でした。
映画ではそういった点がかなり雑に感じました。
映画自体はとても丁寧に作られていて、雑ではないのですが、やはり2時間という時間では難しいのかもしれません。
というわけでミステリー要素は捨てて、社会派映画として生活保護の実態を描こうとした映画ということになるのかと思います。

佐藤健さんと阿部寛さんというW主演の映画で、それ以外にも有名な俳優を起用するなど力が入った作品です。
おふたりとも存在感があるのですが、どちらも寡黙なタイプなので、セリフではなく「映像」で演技をしなければならない映画ですね。

円山幹子を演じているのが清原果耶さん。
若手の女優では大変評価の高い人のようですね。
生活保護ケースワーカーという仕事についている円山幹子を演じています。
本当に生活保護を必要としている人と、生活保護をうまく利用しようと企む人、その見極めは難しいですが、実際には予算があり、誰でも申請すればもらえるというものではありません。
かましくズルい人間のもとにお金がわたり、本当に困窮している人間に渡らないという生活保護の実態が浮き彫りになっています。

この物語で「真犯人」によって餓死に追い込まれる生活保護に携わる人たちは、悪い人ではありません。
むしろ善人の部類になると思います。
貧困という「真犯人」が招いた悲劇です。
許してはいけないのは、不正受給を受ける人たちですね。
千原せいじさんが、半グレ風の不正受給者をうまく演じています。
憎たらしいですよ。


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