悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

砂漠のライオン リビア建国の父オマー・ムクター

今週は家に帰って食事することができず、帰宅はメチャクチャ遅かったです。
なのでほとんどブログを書く事ができなかったのですが、通勤で本を呼んだり、映画を見たりということで、それらをボチボチとご紹介したいと思います。



名優アンソニー・クインが主演の映画で、公開は1981年とかなり前の作品です。
公開当時はもちろん見ていないのですが、私もまだ若い頃に亡き父と一緒にテレビで見ました。

リビアアメリカの合作という異色の作品ですが、史実に基づいた戦争映画です。


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砂漠のライオンの概要

監督 ムスタファ・アッカド

脚本 H・A・L・クレイグ

製作国 アメリカ合衆国リビア 合作

製作費 35,000,000ドル

上映時間 163分

キャスト

オマー・ムクター (アンソニー・クイン

グラツィアーニ元帥 (オリバー・リード)

ムッソリーニ (ロッド・スタイガー

リビア人女性 (イレーネ・パパス

 

あらすじ

オマー・ムクターは年老いたイマームです。
イマームとは宗教上の導師であり、多くの人から慕われ、「先生」と呼ばれています。
彼は砂漠の民であるベドウィン族のリーダー的な人物です。

イタリアではローマ帝国の再来を目指すファシスト党が台頭、ムッソリーニはそのためにアフリカのリビアを支配しようとしています。
これまでにも多くの兵を送り込んできました。
しかしリビア統治が捗らないことに業を煮やしたムッソリーニは敏腕な将軍グラツィアーニを送り込みます。
彼はイタリアでは英雄でしたが、後に「虐殺者グラツィアーニ」と呼ばれる人物です。
グラツィアーニは砂漠で騎馬部隊を率い、イタリアに激しい抵抗を続けるオマー・ムクターという人物を攻めるのです。
これまでオマー・ムクターはイタリアから派遣されてくる将軍たちを巧みな戦術であしらってきました。
名将グラツィアーニもはじめは士官学校にも行っていない彼をバカにしていましたが、実際に闘ってみると、すごいと思わざるをえないほどのでした。
彼は徹底的に殲滅する作戦に出ます。
本国から大軍と戦車などの近代装備で攻めるイタリア軍
一方のリビアは、騎馬部隊。
主力の武器はライフルです。
しかし祖国を守るという意識が強いため、戦闘士気は高いのです。
またオマー・ムクターはこの砂漠を巧みに利用した戦術の天才でした。
突如として現れ、イタリア軍がおいきれない山岳地帯へすぐに逃げ込むゲリラ戦を展開します。
そのためにグラツィアーニは、嘘の和平交渉をオマー・ムクターに持ちかけるのですが、当然和平がまとまるはずもありません。
オマー・ムクターへお金を渡すので手を引けというのですが、そういう事に乗る人物ではありません。
それはイタリアにとっては時間稼ぎの作戦だったのです。
グラツィアーニはベドウィン族を追い込むために非人道的な方法を取ります。
部族に支援する人たちへの見せしめの虐殺や人民への無差別攻撃、さらには耕作地の破壊や井戸などを封鎖してしまうのです。
ジリ貧に追い込まれたムクターたちはついにイタリア軍に囚われます。
首魁を捕らえたグラツィアーニは、イタリア側は自分の国土としているため、激しい抵抗を試みるムクターたちを反逆分子として扱っています。
リビア統治のためにこの期に及んでも懐柔をしようとします。
しかしムクターは、グラツィアーニに、自分がなくなっても、あとを継ぐ人間が出てくると告げます。
一方のムクターは自分たちの意思を最後まで貫き、絞首刑となるのです。


拘束され、降伏を奬められた彼が残した言葉は、リビアの人の心の中に生き続けるのでした。







感想

高校生の頃ですかね、はじめて見たのは。
それ以来、何度かこの映画を鑑賞しています。
好きな映画の一つです。
ストーリーはシンプルかもしれませんが、史実に基づいた作品であり、戦争というものの生々しさもあります。
それでも寡兵を率いて大軍にあたり、ものの見事な戦果を上げたオマー・ムクターが痛快です。
イタリア正規軍と20年にわたり抵抗を続けた人物なのです。
リビアでは最高額紙幣の肖像となっている偉人。
建国の父とも呼ばれているそうです。
この映画では激しい性格でもなく、温厚な話しぶり。
それでいて芯はブレることなく貫き通す。
生活は質素であり、指導者たるものの鏡のような人物。
自分の夫や子供が戦で亡くなったとしてもムクターを恨むことはなく、ついていく。
それはまさに普段からの行動にあるのだろうと思うのです。
冒頭で登場する暴君ムッソリーニが気が短い、怒鳴りまくるのとは好対照ですね。
リビアでの植民地統治が芳しくないため、苛ついているんですね。

イタリアのファシスト党の総統ムッソリーニ


そういった状況を打開するためにリビアの司令に任命されたのがグラツィアーニでした。
当初は大軍、近代兵器でなめてかかったのですが、オマー・ムクターの老獪な戦術に翻弄されるのです。
このあたりのシーンは痛快ですよ。
しかし、その後グラツィアーニは、「リビア人を人とは思わない」という非人道的な作戦を展開しますね。
戦争というものはなりふり構わないというか、勝たなければ意味がないということでひどいことをするものです。
無抵抗な非戦闘員に対しても強い姿勢を取ります。
結果としてゲリラ戦には有効な手段となりましたが、「虐殺者グラツィアーニ」の汚名を歴史に残すことになります。
いつの時代も戦争というものは悲惨ですが、とりわけ侵略戦争において侵略される側というものは悲惨を極めています。
今、現在進行系で行われているロシアによるウクライナ侵攻も構図としては同じです。
圧倒的な不利な状況で20年もゲリラ活動による交戦を続けたリビア
全面的にヨーロッパ西側諸国の支援を受けているウクライナは物資の支援という点では比較にならないと思います。
ウクライナ軍も戦い方としてはゲリラ戦に近いやり方で、侵略側であるロシアは手こずっているわけですね。
ロシアもそうなのですが、この映画の時代であっても物資の輸送、兵の動員など莫大な投資でもあるわけで、つくづく侵略戦争なんてものは割に合わないと思うのです。
一部の特権階級というかおごり高ぶった為政者の判断によって、このような事態を招いてしまうわけです。

虐殺者グラツィアーニ将軍

この映画がイタリアでは上映中止になっていたのもわからないこともありません。
イタリアにとっては恥ずべき歴史の一部ですからね。
こんな映画をアメリカとリビアが合作で作ったというのが信じられないというか、どういう流れで作ることになったのかが気になります。
あのカダフィ大佐のいるリビアアメリカ合衆国ですからね。
リビアにしてみればこの映画のために国を挙げての支援があったとか。
逆にそういった麺があるため、この映画は興行的にはあまり良くなかったようですね。
お固い歴史映画として見るだけでなく、娯楽映画としても十分な出来栄えです。
戦争のシーンなど見ごたえがあります。
特に当時の戦車などの再現度が素晴らしく、これらをわざわざ作ったんでしょう。
ミリタリーマニアも喜びそうなネタがたくさんありそうですね。
主人公が宗教的指導者でもある「先生」で高齢者。
主演のアンソニー・クインが扮していますが、史実に残るオマー・ムクターとそっくりですね。
この映画には女性も出てきますが、色恋沙汰は一切ありません。
恋愛を絡めた中途半端な人間ドラマにならず、それがまた良かったのだと思いますね。

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