悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

6ステイン 福井晴敏

毎度のことながら読みやすいのか読みにくいのかわからないような文章。
文章自体は平易で読みやすいが、内容が理詰めと言うか巧みな言い回しで強引にねじ伏せられてしまうというか。
よくもまあこんなにうまい言い回しができるものだ。怒涛のごとく理屈を全面に押し出し、有無を言わせぬパワーで圧倒する、そういう文章である。本当に豪腕な作家なんだろうなあと思う。
内容が国家公安、防衛庁北朝鮮、スパイ、そういうたぐいの内容の小説である。市ヶ谷、赤坂などの隠語も福井晴敏ワールドの世界ではおなじみなのかもしれない。
そしてグロッグ、ベレッタ、トカレフなどガンマニアも喜びそうなネタ。リボルバーではなく自動小銃が多いのがハードボイルド小説とは違うところか。

「いまできる最善のこと」
ヤメイチという元スパイが一般社会のサラリーマンとして働いているが、過去の清算を求めてかつての仇敵が襲い掛かる。
主人公は勝つためには手段を選ばない嫌なやつなんだろうけど、なんだか格好いいのである。

「畳算」
スパイ稼業に見切りをつけた男とその男についてきた芸者の物語。

「サクラ」
未成年の19歳ながら殺し屋としての実力は確かなサクラと言う女性の話。ちょっとラノベチックな主人公である。

「媽媽(マーマー)」
内容は感動なしは読めない。素晴らしい物語。ぜひ長編で書いて貰いたいような内容である。
主人公の女性が主婦で子持ちながら市ヶ谷の人間であるというのが無理がありすぎるような気がする。

「断ち切る」
短編小説だと思っていたら、この作品は一つ前の「媽媽」とつながりのある作品。

「920を待ちながら」
この作品が最も評価が高く読み応えがあるが、個人的には一番疲れた。
ちょっとこねくり回しすぎた気がして、リズムよく読めなかった。


6つの作品どれも力の入る作品。福井晴敏ワールドの世界が好きな人にはたまらない作品群。

6ステイン (講談社文庫)

6ステイン (講談社文庫)

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