悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

往復書簡 湊かなえ

物語はすべて手紙によって進行する小説である。タイトル通り、何通もの手紙が行き来する「往復書簡」である。
一本の小説家と途中まで思っていたが、4つの作品にわかれている。4つ目は一体何かわからないほど短いものだが。まともな作品は3つということか。
「十年後の卒業文集」
「二十年後の宿題」
「十五年後の補習」
「一年後の連絡網」

「十年後の卒業文集」はなんとも嫌らしい女性の手紙のやり取りが描かれていて、正直面倒臭いなあ、という気持ちしかない。学生時代の公認カップル。その彼氏と結婚した同じ部活の友人。学生時代の友人が結婚式で会うが、公認のカップルだった彼女は出席せず。実は彼女は出席していたが、別人としての出席だったために誰も気づかなかったということで、その後その別人として手紙のやり取りを学生時代の友人と始める。ちょっとミステリーが入った感じの内容だが、イマイチ。

「二十年後の宿題」。小学校の先生が退職にあたって、主人公の教え子にとある依頼をする。それはあるクラスの6人の生徒の現在について調べて欲しいということだった。これも面倒くさい先生だなあという感想。自分の教え子を使ってそんなことを聞き出さなくても良いのではないかと思う。その6人はとある事故でのつながりである。最後に登場する人物が意外なオチがあるが、ある程度そのへんは読めてしまったのが残念。

「十五年後の補習」。これは一番重かったかもしれない。なんといっても事故ではなく殺人である。主人公の女性は記憶が曖昧という設定だが、海外青年協力隊でとある国へ赴任する彼氏との手紙の中でその記憶を鮮明に思い出していく。重い。


手紙のやり取りということで現代風ではないのかもしれないが、面白い。夏目漱石の「こころ」の先生から預かった手紙も相当長かったが、彼らのやり取りも1通ではないものの、結構長い。これだけの文章を手紙であやり取りするのはさぞ骨が折れると思う。

吉永小百合主演の映画化ということだが、どうやら2作目の「二十年後の宿題」の先生役のようである。

往復書簡

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