悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

シン・ゴジラ

久しぶりの映画ネタ。
久しぶりに映画を見に行った。息子と親子水入らずで。ま、いつものことだけど。
ゴジラか〜、とあまり期待していなかった。
息子がゴジラを好きなのはわかっている。私も嫌いではない。
ただ、何か今一つ見たいと思えるようなところはなかった。
息子と映画を見るというのが楽しくて映画に行っているようなものである。
しかし、・・・・・・・

今年一番の傑作ではないか?と思えるほどよかった。
痛快な人間ドラマというか、日本的な政治の縮図もしっかり描かれながら、俳優陣が無駄遣いと思えるほどすさまじい数の俳優が出演している。
もちろん主人公以下主要メンバー以外は本のチョイ役ばかりだが、この映画に名を連ねるということ自体が後々重要になるのでは?と思えるほど、歴史的な意味を持つかもしれない。

今までのゴジラシリーズの話はいったんリセット。
昭和ゴジラ、初代ゴジラすらこの映画では関係ない。
むしろ初代ゴジラのリメークといえるところがあるが、もちろん時代背景も何もかも違うので、現在の日本、世界情勢に合わせたアレンジがされた新しいゴジラの物語である。

東京湾でレジャーボートが漂流。
そして地下トンネルからの水漏れなど天災と思われる事故が発生。
未知の巨大生物の可能性を唱える若手の官僚が主人公。
しかし、そんな話はあり得ないと一蹴される。
事なかれ主義の日本がいたるところで描かれるが、冒頭から日本の政治家、官僚たちの行動パターンがそれこそ面白く描かれている。
なんだかそこは福井晴敏の小説に出てくるようなシーンのやり取りがとても面白いのである。
日本の政治の中枢とアメリカとの兼ね合いもなかなか面白い。
日系のアメリカ人、しかも優秀で強大なコネもある女性として石原さとみが演じる女性がアメリカ大統領の特使として登場。
驚いたのはその流暢な英語。
英語なまりの日本語も話しながら物語を盛り上げていく。
主人公は長谷川博己演じる矢口蘭堂。のちの日本の中枢を担う優秀な頭脳である。
彼の定石に当たる人物が竹野内豊演じる赤坂秀樹である。
この3人が一応主人公といえるだろうが、彼らを取り巻くキャストが本当にすごい。
ほかの映画では主演、助演ともに十分な待遇を与えられてしかるべき俳優が本当にちょっとだけ登場という状態。
そして映画でキャストの名前がエンドロールで流れるが、この3名以外はまるで劇団○○のみなさん、みたいに並べられて流れていく。
すべてをここで並べるわけにはいかないが、大杉漣國村隼、榎本明、平泉成などベテランが大勢政治家や官僚のトップとして登場する。
さらに斎藤工小出恵介などの若手俳優前田敦子などほんの一瞬の出番のみであるがキャストの名を連ねている。
鶴見慎吾、ピエール瀧高橋一生余貴美子古田新太松尾スズキなど多くの俳優がこの作品に参加していることも本当に驚きで、多くの日本の映画を支える俳優陣が「ゴジラ」という作品に対して強い思い入れがあるのだということが分かる。
人気俳優のキャスティングがまずありきの人気亜アイドルを主人公や取り巻きに収めました的なところは微塵もなく、「ゴジラ」という作品に対して真摯に作り上げていったんだなあ、とみているほうにも伝わってくる力作だと思う。
もちろん、ここがだめという点も多くあると思う。
ゴジラ自体の造形。好き嫌いがあるだろうが、あまりなじめない。そして幼体?がちょっとなあという感想。
尻尾をずっと上げたまま移動を続けるが、普通はあれだけ巨大なしっぽだと引きずるでしょってところなども。
まあ、人知を超えた未知の巨大生物ということなので私がとやかく言うことはないかもしれないが。
CG、VFXは頑張ったと思う。おそらくこれまでの日本の特撮映画で使用するCG、VFXとしてはかなり力を入れているのは間違いないと思うが、特撮に限ったところではまだまだハリウッドに及ばないとも感じる。
まあ、仕方がない。おそらく予算も全然違うのだろう。
ただ、ハリウッド版のゴジラ2014は迫力はあったが、シナリオは日本映画の圧勝である。
どちらも劇場で見たが、映像も暗いシーンばかりのハリウッド版、リアルさを出そうとするとどうしてもそうなるのかもしれないが、そういうハリウッド版と明るいシーンでくっきりとゴジラを描く日本版を見ると、よく頑張ったと思う。
ハリウッド版はなんだかよくわからないムートーという敵役を登場させ、それを地球の守護神的な役回りとしてゴジラが登場していたが、それはやっぱりご都合主義すぎる。
それよりもどうやっても止めることができないゴジラに対して最終手段である核で首都圏丸ごと破壊してしまおうという発想、それはハリウッド版のゴジラも同様の発想があったが、それをするか、別の方法をするか、日本と世界の、国連、アメリカとの駆け引きなんかも描かれていて、わくわくする部分があった。
何よりも日本に住む人間として対岸の火事みたいにしてみている映画とは全然違う。
息子もあまりにゴジラが強すぎて、思わず泣きそうになると漏らしていた。
ものすごく強く、通常兵器は全く歯が立たない。
核による根こそぎ破壊してしまう作戦というのが国連、アメリカの考え方で、日本と近いアジア諸国、中国もそれに賛同していると語られるシーンもあり、まあ自分ところ国が大丈夫なら他国がどうなろうとかまわないという世界の政治も描かれていたりして。
とにかく首都圏破壊=日本破壊を人間の日本人の英知を絞って、核による根こそぎ破壊してしまう作戦を寸前で止めることができてよかったと思えるエンディングになっている。

日本の政治の縮図というかそういうあたりは冒頭に描かれていく。
未知の巨大生物に対して、水生生物であれだけ大きいと上陸は不可能と断言したり、専門家を読んで自分たちの庭の話ばかりに明け暮れたりして。
マニュアルがないと騒ぐ官僚たちや前例がないとどういう動きも取れない政治家や肝心な時に全く役に立たない学者たちなど本当に面白かったのである。

自衛隊や日本を守るという強い意識のある人間が本当にあれだけいるのだろうか?という点は疑問だが、非常事態になったときに強い結束力があるのが日本人だと思う。
そう、阪神大震災、東北大震災の時に見せた日本人のたくましさを思い出してほしい。
主人公の矢口が自衛隊員の前で決死の作戦を敢行するときの演説など感涙ものである。(福井晴敏の小説に登場する若手官僚のようだ)

この夏、ぜひ見るべき映画だと断言できる。

映画『シン・ゴジラ』公式サイト

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