悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

モンスター 百田直樹

なんともストレートな題材だが、読ませてくれる文章である。
永遠のゼロは私の中では非常に大きな印象を残した小説だった。その作者が書いた作品ということで期待。内容は全く違い、人間の汚い部分をとことんえぐったような感じである。しかし読んでいる人を引きつける文章というか非常に読みやすいのでドンドン読めてしまうのである。
内容は女性の美醜をテーマにしたもの。タイトルのモンスターは主人公の容姿があまりに醜いためつけられたあだ名である。そのモンスターが醜さゆえに誰からも愛されず、心まで見難くなっていくが、美容整形によって圧倒的な美しさを得る。過去に自分を傷つけた人に復讐するという話だが、その内容自体は本当にありきたりである。ただ、文章力があるのか本当に説得力があり、グイグイと引き込まれていく。
美しさを得るまでの苦労は並大抵ではなく、美容整形の費用を捻出するために風俗で働こうとするが、そこでも断られてしまうようなブスである。それでも美しさを得るにつれ、風俗業もステップアップし、トップクラスのソープ嬢となり大金を稼ぐ。多くの人間が彼女の美貌に屈服するが、内なる本来の自分との葛藤でラストは苦しむのである。ストーリーの大筋は大したことがないが、話の流れや構成がよくできていて説得力がある。なかなか面白い。
ただ、読後は永遠のゼロのような感動も何もなかった。そこはしかたがないかもしれない。

モンスター (幻冬舎文庫)

モンスター (幻冬舎文庫)

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