なにげに最近読む本は気持ちを落ち込ませる。この作品もそういった物語である。
モチーフになっているのはおそらく宮崎勤の事件である。それを少し手を加えてミステリー作品としていたわけだ。ストーリーとしてひねりもありミステリー作品としては決して悪くはないが、中身が救いようのないほど暗く、悲惨な内容だけにストーリーを楽しむ娯楽作品としてはとても手放しで喜べるものではない。また人にも薦めたくはない。読後の第一の感想はそんな気持ちでいっぱいだ。
出世作の「ストロベリーナイト」と比べると殺人のシーンなんかはホラー色は消えて迫力はないが、扱っているのが幼女拉致、レイプという作品だけに本当に読んでいて辛い。もう読み返したくはない。
ここに登場する不幸な親子の気持ちを想像して作品を書いたのだと思うが、私にはどういう感情になるのか全く想像ができない。彼らと同じような感覚になるのかどうかも分からないし分かりたくもない。ただ、どのように想像したとしてもこのストーリーはこじつけ臭い感じがする。
変態男稲垣満は精神鑑定で無罪となり再び罪を犯すというのも、その親が地元に住み続けているというのも事件の大きさからするとありえないと思わざるをえない。14年前にこれだけ世間を騒がせた事件にしては非常に中途半端で真相がウヤムヤになったということで済まされるものなのかどうかも非常に疑問が残る。
本格デビュー前の作品らしい。さもありなんという気もする。
- 作者: 誉田哲也
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2012/10/05
- メディア: 文庫
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