悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

みんな邪魔 真梨幸子

作家を男女で切り分けるわけではないけれど、女流作家は苦手である。男性作家のエログロな表現も度が過ぎると気持ち悪くなるが、女性の独特のいやらしい表現も気持ちのよいものではない。むしろどぎついエログロ作品よりも苦手かもしれない。
この「みんな邪魔」という作品は当然後者のいやらしさを全面にまとった作品である。もともとは「更年期少女」というタイトルだったらしいが、改題したとのこと。元々のタイトルのほうがインパクトが強くてよさそうだと思うのだが。

この作品には更年期の女性たちが主人公である。彼女たちに共通しているのは「青い瞳のジャンヌ」のファンクラブの執行役員で「青い6人会」のメンバーであるということ。それぞれの私生活は全く様々だが、みんなうちに大きな問題を抱えている。そして定例会と称して洒落た西洋料理店で気取って食事をしながらも、全くに使わないハンドルネームでお互いを呼び合う。端から見れば相当気持ち悪いに違いないグループである。料理店のボーイを呼びつけて、「パンくずを綺麗にしてくださる?」なんて本当気持ち悪い。私にはとうてつ止まりそうもない仕事だ。きっとこのボーイも仕事明けには「王様の耳はロバの耳だ!」的に「クソババア、上品ぶってるんじゃねえよ!」なんて悪態をついていることだろう。

働かない夫のDVに苦しむエミリー。シングルマザーの立場を利用して生活保護を受けながらも、浪費家で虚言癖が尽きない借金大王のシルビア。甘やかされて育ち中年になっても自立のできず、親の年金を当てにするダメ人間の典型であるミレーユ。資産家の夫を持ちながらも愛情はなく、姑とも不和、そんな時に高齢になりながら妊娠というジゼル。実質的なリーダーであるが娘の受験に入れ込むが失敗、夫は鬱病という状態で、家庭は崩壊しているマグリット。そしてこの作品唯一の最後まで欠点が描かれないガブリエル。
この6人が織りなす定例会を中心とした取り繕った表の顔と実際の私生活との乖離が凄まじく気持ち悪い。世の中の大人というものは往々にして表向きの顔と実際は違うが、これほどまでに違うと気持ち悪い。しかもつながっているのが数十年前に連載が終わった「青い瞳のジャンヌ」のファンクラブ。見栄の張り合いもありドロドロとした非常に気持ち悪い世界がとことんまで描かれている。

私は男性だが、世代的には妙にハマるところがある。作者は64年生まれらしい。なるほどそれでか。6人会の一人であるガブリエルが気になっていたが、最後にきちんと落ちがつく。なるほどと。小説ならではのしかけである。映画ではこうは描けない。最後の方まで気が付かなかったが、6人会のアイドルというのはそういうことかと納得。そしてガブリエルが6人会のメンバーになった本当の目的もわかり納得だが、ややこのあたりは強引な設定という気もする。

多くの人が感じているように、いやらしい作品である。後味もそれほど良くないけれど、納得。しかしこんな人間を続々と登場させて描ききるこの作者はやっぱりかなり変わり者というか気持ち悪い人なんだろうかと思ってしまう。女性は怖い。

みんな邪魔 (幻冬舎文庫)

みんな邪魔 (幻冬舎文庫)

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