悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

Winny 日本の落日の原点がここにもあった

画像はAmazonより

今日は帰宅時に大阪環状線が事故で止まっていまして、振替輸送で帰宅しました。
なんかめちゃ疲れました。
大阪メトロ(地下鉄で大阪市交通局ですね)の駅員がとても不親切でしたね。
確かに振替輸送に協力しているのが大阪メトロですが、それはお互い様でしょう。
わざわざ遠回りして帰ってきているのに、無愛想でした。
そして、この駅は振替輸送の対象ではないとのこと。
確かにJRの沿線とは少し外れていますが、振替輸送をご利用くださいというだけでそんな説明はJRにもなかったですし、われわれ右往左往している通勤客はわかりません。
もちろんご乗車ありがとうございますの言葉もありません。
振替輸送の乗客なんて客じゃないということでしょうかね。

 

とまあ、愚痴で始まってしまいましたが、今回は映画の感想です。
U-Nextで視聴しました。
ファイル交換ソフトとして一躍名を馳せた「Winny」ですが、この裁判ほど不毛なものはありません。
この映画も見ながら毒づいてしまうようなそんな内容です。
原作も読んだ記憶がありますが、かなり流し読みだったかもしれません。
でもこの裁判の内容を知って、本当にひどいと感じましたね。

私は専門家でもありませんがPCの業界に対して肌感覚として感じていることが多々あります。
パソコンのサポートカウンターや家電量販店でPCの販売やらやっていたこともあり、なじみが深いほうだと思います。

20世紀の末期、日本はバブルで賑わいましたが、バブルが弾けた後も日本の電子機器の技術力は素晴らしいものでした。
今でこそ、スマートフォン(携帯電話)はiPhoneをはじめ、海外製のものばかりですが、当時携帯電話は日本製以外には考えられない状態でした。
家電量販店のパソコンでも日本製が圧倒的でした。
デスクトップパソコンはまだしもノートパソコンは日本製以外は本当にゴツくて重くて性能も悪く、世界中でノートパソコンがまともに作れるのは日本しかないと思っていたくらいです。
iPhoneが登場したときも別に目新しい技術ではなく、日本にある部品を使えばこれくらいの商品は作れるとのたまったお偉い人がいたとか。
また日本がイケイケドンドンの時代に、アナログハイビジョンを世界に先駆けて「どんなもんだい~!」と偉そうにしていた役人がいたとか言われていますが、政治も経済もどこかお山の大将というか、島国根性というか、井の中の蛙というか、です。

iPhoneの本質がハードウェアにあるのではなく、使い方を含めたソフトウェアにあることに気づかない経営陣やデジタル時代を先読みできなかった放送技術で天狗になって世界中で村八分になったこと、など本当に日本のトップはイケてないなあと思います。

余計なことをまた申し上げましたが、この映画の方も見ていて胸糞悪くなることが多々あります。

さてファイル共有ソフトというものが大流行した時期がありました。
アメリカではMP3ファイルを共有するソフトウェアで、Napsterという会社ができていましたし、WinMXというソフトウェアもありました。
これらの技術に刺激を受けた金子勇さん、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)では47氏という名前で公開したソフトウェアがWinnyでした。
P2P(ピア・ツー・ピア)という技術で、後のSkypeや仮想通貨のもとになる技術でもあったわけです。
ちなみにWinnyWinMXのMXを一文字ずつずらして小文字にしたと言われています。
このソフトは大変良くできていて瞬く間に広がり、そこでやり取りされるファイルは著作権を無視したモノが大量に出回りました。
著作権保護団体からの突き上げがあったのか、そのあたりは謎ですが、この優れたファイル共有ソフトを作ったやつがけしからん、ということになったのでしょう。
サイバー警察のトップを目指していた京都府警はこのソフトの作成者を逮捕し、起訴したのです。
そして裁判では、京都地裁では有罪となり、控訴。
最終的に最高裁まで争うことになり、結果無罪を勝ち取るわけですが、そのために要した時間は7年半に及びました。
当時プログラマーとして脂の乗り切っていた金子氏は裁判などのために行動できず、貴重な時間を潰してしまいます。
更にはこの映画でも語られていますが、いくら優れたソフトウェアやアイデアを具現化しても、それが「悪いこと」に使われてしまったら、ソフトウェアの作成者も逮捕されてしまうということです。
こんな馬鹿なことはありえません。
映画でも弁護士の壇さんのセリフにもあります。
著作権は守られるべきものであるというのは一致するところですが、著作権を犯すことに使われるソフトウェアも犯罪の片棒を担いでいるので罪があるという論理です。
この映画では、ナイフで人を指した場合に、ナイフを作った人も逮捕するという例えになっています。
それ以上にインターネット普及に尽力した方は、この事件に対して、Winnyが「著作権法違反幇助」という罪で有罪なら、インターネットを広めた私も有罪ということになると述べておられました。
違反幇助というものすごく曖昧とした中で範囲を広げてしまったら、全ての人間には罪があることになります。
こんな曖昧な理由で逮捕した京都府警は一体何を考えていたのでしょうか。
彼を逮捕するように指示した上のものがいるはずなのですが、この映画でも言われていたように「トカゲの尻尾切り」、つまり末端は切り捨てられて、本当の主は闇の中なのでしょう。
私が思うに、この当時、この世の中の先を読めた人がいなかったということです。
特に司法、立法、行政のいずれも。
これらは近代国家の骨組みであり、未来を決める大事なところなのですが、時代の本質を全くわかっていません。
有能な技術、人材をこんな風にしてしまう日本はなるべくしてなったのが現在のIT後進国の姿だと思っています。
裁判官を始めとした法曹界の人たちは当時インターネットに関することの知識は乏しかったでしょう。
インターネット、IT、コンピューターの可能性くらいは理解していたものの、未来は想像できていなかったとしか思えません。
意地でも逮捕したかった京都府警は日本経済にとって、とてつもなく巨大な負債を残してくれたということです。

日本はチャレンジャーが生まれません。
ベンチャーも育ちません。
その理由の一つに、減点主義があり、出る杭は打たれるといういや~なところがありますよね。
失敗したものを指さして、「そらみたことか」というのが、先生や親から褒められ、良い学校に行って、良い就職先を見つけた人間、あるいは立派な役人になった人間です。
彼らは減点主義の日本における勝ち組です。
ミスせず、周りが自滅するのをしたり顔で見ているだけ。
そんな人物ばかりでイノベーションなんて生まれるわけがないでしょう。

脱線しました。
今となってはWinnyは過去のもの。
Winnyの作者をつかまえても、しばらくは似たようなファイル共有ソフトで違法コピーソフトや著作物がインターネットを通じて大量に流れました。
そういう時代だったんです。
そしてソフトウェアエンジニアが金子氏のようになりたくはないと思ってしまうと、もう発展はないでしょう。
大体ITをイットと読む総理大臣とか、USBメモリの存在を知らない大臣とか終わっています。
知らなければ知る努力をしないといけないし、そういう立場の人間のはずです。
自分が知らないから、そっち方面は「オタク」たちがやっていればいいんだ、くらいに思っていたのでしょう。

世界とソフトウェアのアイデア、技術で競っていたはずが、国がこういう才能を潰していったんです。
投資すべき先を間違え、死んでいくべきゾンビ企業を税金で延命させたりして平成の世の中は浪費されてしまいました。

エンジニアを大事に扱わないし、現場の仕事を軽んじている風潮がなくならないですよね。

ぜひ興味がある人には見てほしい映画です。
そして失われた30年というのがこういうところにも原因があったということを思い返してほしいですね。

あらすじは映画のサイトでも原作本でもいいと思います。
東出昌大さん、三浦貴大さんともに、俳優陣も頑張っている作品です。
とりわけ、大物弁護士を演じていた吹越満さんが格好良かったです。
そして京都府警の担当者を演じていた渡辺いっけいさんもさすがの憎たらしさぶりを発揮していました。
この映画にはもう一つの伏線として愛媛県警の裏金事件も絡んできます。
それを内部告発した警官を演じていた吉岡秀隆さんも渋かった。
この裏金事件は、警察、マスコミともに握りつぶそうとしていたのですが、なんと証拠となる文書がWinnyを使っていたパソコンでウイルス(いわゆる暴露ウイルスというやつですかね)感染し、そこから流出したんですね。
なんとも皮肉な話です。

matusima745.hatenablog.com

hinaちゃんさんが、この映画を封切りと同時期に紹介してくれました。
私は1年を過ぎてからようやく見ました。
もっと早くに見ればよかったです。
ちなみにhinaちゃんさんのブログは映画の内容について詳しく記載されていますよ。




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