悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

また、同じ夢を見ていた 住野よる

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また、同じ夢を見ていた 住野よる

 

還暦前のオッサンが読む本ではないなと思いながらも、良いお話でした。

こましゃくれた女の子が主人公のお話です。

幸せってなんだろう、というテーマです。

ちょっとファンタジーの入ったところもあります。

 

住野よるさんの小説は、「君の膵臓をたべたい」で初めて読んだのですが、あちらはかなり残酷な話でもあります。

なんだかんだ気になったのか、「ミーハーやなあ」、と思いつつ本を読んだ後に、実写映画もアニメ映画も見てしまっております。

 

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登場人物

小柳奈ノ花
主人公の女の子。
小学校低学年の少女。
かしこい子供で、その自意識も強いのですが、頭が回りすぎるためか友達がいません。

 

ひとみ先生
小学校の担任の先生。
生徒思いの良い先生で、なっちゃんも大好きです。

 

尻尾のちぎれた彼女
怪我をしていた彼女を助けてあげました。
なっちゃんの最初の友達。

 

アバズレさん
尻尾のちぎれた彼女の治療をしてくれました。
それ以来、なっちゃんの友達です。
学校が終わってから彼女の家に行くのが日課
大人なのでなっちゃんより賢く、きれいで優しい女性。
オセロを一緒にします。

 

南さん
古い建物の屋上でいつも一人ぼっちの女子高生で、誰も近づけない雰囲気を持っています。
なっちゃんの友達です。
小説を書きます。
本や物語が大好きななっちゃんにとっては、とてもすごいことです。

おばあちゃん
手作りのお菓子がとても美味しくて、いつかおばあちゃんのように自分でお菓子を作ってみたいと思っています。
おばあちゃんちに行くのもなっちゃん日課です。


荻原くん
クラスの人気者で、なっちゃんと同じく本を読む子供です。
なっちゃんとも仲良くしてくれる男の子でした。

 

桐生くん
席が隣の男の子。
おとなしく、クラスの男の子からはからかわれる対象。
絵がとても上手なのですが、見られたくはないようです。

 

あらすじ

小学生の小柳奈ノ花はとても賢く、自分以外のクラスメイトの多くは馬鹿だと思っていました。
そのため、溶け込むことがなく、クラスで友達は一人もいません。
なっちゃんは休憩時間もクラスで過ごさず、図書室で本を読むのが好きなのでした。
とても賢い彼女に担任のひとみ先生はいつも心配しているようです。

彼女は下校時もいつも一人で帰宅します。
両親は忙しく、仕事に明け暮れているのでした。

そんな彼女が見つけたのが尻尾のちぎれた猫。
事故にあったのか血が出ている彼女(猫)を連れて、直してほしいと近くのアパートに行きます。
そこで現れたのがアバズレさんでした。
とてもきれいで優しく、大人の女性。
アバズレさんと読んでいるのは、彼女のアパートに汚い文字で「アバズレ」と書いてあったからです。

クラスには馬鹿な男の子たちがいましたが、なっちゃんは相手にしません。
しかし、クラス委員の荻原くんだけは、図書館で本を読むので、話があうのでした。

もうひとり、座席が隣の桐生くんという男の子がいました。
彼はこっそり絵を書いているのですが、とても上手なので、なっちゃんはその点を尊敬しています。

しかし、馬鹿なクラスメートたちは、おとなしい桐生くんをからかうのでした。


なっちゃんにはおばあちゃんという友達もいました。
おばあちゃんはお菓子を自分で作っていて、なっちゃんにくれるのでした。
とても美味しくて、本の話をしたりするのでした。

 

 

この本の感想

種明かしをすれば、この本に登場する「私=小柳奈ノ花=なっちゃん」の友達は実在しません。
というか全ては夢だったという夢オチなのです、
しかし、そこに登場する友達たちは、全ては彼女の人生の一コマに当たるのですね。
参観日に来てくれないと言われ、喧嘩した両親。
両親が死ぬ前にちゃんと気持ちを伝えたかった南さんのアドバイスによってなっちゃんは救われます。

桐生くんが学校に来られなくなったとき、彼女もクラスメートから無視されるようになります。

アバズレさんにそのことを告げ、誰とも関わらずに生きていくというと、それはダメ、私のような人生を送ってはダメだと諭されるのですね。
小さな彼女は、彼女なりに桐生くんを立ち直らせようと頑張るところですね。
このあたりは物語の一番の盛り上がりを見せるところだと思います。

クラスメートの言葉のきついこと。
でも小学生というか幼い子供は罪のない毒、猛烈な毒を持っていたりするんですね。

やんちゃな男の子は無神経で相手の気持なんか考えて発言したりしません。
残酷なことです。

同時にいつもニコニコと誰にでも優しいクラス委員の荻原くんが怖いなあ、とも感じますね。
こういうタイプが一番怖い。
頭が良くて、どうすることが一番自分にとって都合が良いのか、そういう計算ができるタイプなのですね。

だからこそ、なっちゃんのような賢い女の子の心もズタズタになったのでしょう。


夢オチという小説にとっては非常に便利ゆえの”禁じ手”だとも思えるのですが、なかなか良い仕掛けを作ってくれています。

大変読みやすくて、硬いところは全くありません。
普段本をそれほど読まない人も苦痛になるような本ではないと思います。


読み始めて、主人公がちょっとうざいなあ、と感じてももう少しだけ読み進めれば、きっと物語に溶け込んでいけると思いますね。


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