悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

明治維新とは何だったのか 世界史から考える 半藤一利 出口治明

 

こちらの本もKindleで以前に購入したものなのですが、放置していました。
そして読んでみたのですが、対談集なのでとても読みやすかったです。

 

 

この本の中身

まえがき 出口治明

第1章 幕末の動乱を生み出したもの

ペリーの黒船はなぜ日本に来たのか
最大の目的は太平洋航路の開拓
市民戦争(南北戦争)後に急成長したアメリカ経済
起きて困ることは「起こらない」と思いこむ日本人
いち早く開拓を決意した阿部正弘開明
前例のない事態に対処できるのは勉強する若い頭の世代
200年も続いたマイナス成長が質素な日本文化を生んだ?
外国奉行は知っていながら止められなかった、金銀の交換比率
軍愛の近代化を進めた薩摩と長州

第2章「御一新」は革命か内乱か

光格天皇が復活させた「天皇」の権威
薩長が徳川への恨みを晴らした「暴力革命」
錦の御旗に負けた徳川慶喜
戊辰戦争は東北諸藩の反乱ではなく「防衛戦争」
坂本龍馬船中八策
5万石を薩長に「盗まれた」長岡藩
県名、軍隊、華族に見る賊軍差別
岩倉使節団の留守中に西郷隆盛は何をしたか
「現実主義者・大久保利通」対「理想主義者・西郷隆盛
西南戦争をどう見るか
維新の三傑」亡き後を引き継いだ伊藤博文山縣有朋

第3章 幕末の志士たちは何を見ていたのか

最初に「日本人」を自覚した勝海舟
イギリス公司パークスとの会談
勝海舟征韓論の議論から逃げた理由
社会の激変期を支えるのは合理的思考のリーダー
江戸を焦土とする覚悟
西郷隆盛毛沢東か?
西郷の群生改革と宮廷改革
幕府の権威を昔に戻そうとした井伊直弼
グランドデザイナーとしての大久保利通
薩長同盟を実現させた桂小五郎の性格
最大の陰謀家・岩倉具視
伊藤博文山縣有朋
伊藤、山縣の権威付けに利用された吉田松陰
自由民権運動の志士・板垣退助
西南戦争で薩摩が勝つと思っていたアーネスト・サトウ
アラビアのロレンス」たちが飛び回った幕末の動乱期

第4章 「近代日本」とは何か

お雇い外国人の給与は東大教授6人分
脱亜入欧」と可能にした日本語による高等教育
西南戦争後にシビリアン・コントロールを外した山縣有朋
軍国主義の下地を作った統帥権の独立はここで登場した
大日本帝国薩長がつくって薩長が滅ぼした
日路線等の講和は何が問題だったのか
「開国」というカードを捨てたのが近代日本の過ち
薩長が始めた太平洋戦争を「賊軍」出身者が終わらせた
世界の情報をシャットアウトすると現実離れした妄想が膨らむ
明治維新の最大の功労者は誰か

書籍ガイド
半藤一利選 読むべき15点
出口治明選 読みべき20点

あとがき 半藤一利

 

内容について、所感

上記の目次とその中の見出しなどですが、幕末から明治維新にかけての歴史を研究、多くの文献から検証してきたお二人の先生の対談ですので、大変読み応えがあります。

あとがきに半藤一利氏による言葉がありますが、反薩長史観というのが最近は普通に聞かれるようになりました。
しかしながら、私が子供の頃の教科書では、やはり日本の国を作った明治維新薩長の若き志士たちが活躍したというふうに習ってきました。
教科書では学びきれない部分はやはりいろいろな意見を読んだりしながら、自分なりに理解していくべきものだと思います。
司馬遼太郎史観という言葉もあるように、幕末の「物語」については司馬遼太郎氏の影響力というのは半端ありません。
特に「竜馬がゆく」という作品は若い世代にたくさん読まれ、その影響を受けた人が「坂本龍馬」に憧れ、尊敬するというのが強いのです。
同時に徳川慶喜であったり、桂小五郎あたりは司馬遼太郎氏のペンによって、かなり評価を下げてしまっているという気がします。

二人の対談を読んでみて、歴史とはそれを伝えるものによって随分変わるものだという気がします。
だからこそ、様々な文献を呼んでおられる両氏が対談という形で意見を交わしているこの本の内容はとても価値があると思いますね。


司馬遼太郎氏が「坂本龍馬」を英雄として作り上げたように、龍馬びいきです。
同じように半藤一利氏は勝海舟好きと本人も言っているように、かなり贔屓目に見ておられます。
そして幕末で明治維新を成し遂げた薩長は素晴らしく、それに抵抗した東北、特に会津は目の敵にされてきたのはその後の記録が証明しています。

西郷隆盛という稀代の人物。
そして大久保利通という明治維新以降の最高の政治家はともに薩摩ですが、彼らは志半ばで亡くなり、長州閥が引き継ぎます。
そして長州閥が幅を利かせて、特に山縣有朋が軍部の実権を握り軍国主義へと走ってしまいます。
今を思えば、この時代になっても相変わらず長州(山口県)出身の大臣や総理の多いこと。
出身地で損得があってはならないですが、門閥というものが未だにあるのだと感じますね。
吉田松陰もこの二人の対談では割とボロボロに言われていますが、たしかに何かをなしたのか?というと、そうでもなく、若くして亡くなっています。
結果として長州の幕末の志士が生き残り、彼らの「箔付け」のために利用されたということなんですね。
吉田松陰を美化する話はたくさんありますが、松下村塾の門下生はテロリスト集団ですし、理想を実現するために手段を選ばずという人たちであったのは間違いないでしょうね。

幕末で幕府は踏んだり蹴ったりの状態で、慶喜は実はかなり可愛そうな将軍であった気もします。
偽物の「錦の御旗」で逃げ出した臆病者と罵られますが、ニセの詔勅を出す腹黒い岩倉具視など、もうなんでもありです。
同時に尊皇攘夷で外国にこてんぱんにやられた長州や薩摩は「敗北」体験からさっさと開国に切り替えたのですが、本来開国を一番先に考えていたのは他ならぬ幕府だったのですね。
この本では出口治明氏が最大の功労者として評価しているのが阿部正弘です。
「開国」、「富国」、「強兵」というその後の道標をペリーがやってきたときにすでに構想していたわけですから、遥かに先を見通す力があったのでしょう。

徳川260年の太平の時代はある意味世界的にはかなり稀有な例です。
しかし、鎖国による平和によって、日本の成長は止まってしまい、戦国時代と比べても体格も小さくなってしまっています。
農業主体の経済で見るなら、この200年ほどはマイナス成長だったというのもすごい話ですね。
現在の日本を見ているような気がします。
昭和20年に敗戦となり、そこから復興のために突き進んできた平和な時代ですが、「国防」という国家の再優先課題を「戦争放棄」という言葉で巧みにすり替えてきたために、ある意味「鎖国」状態と変わらず、日本という国はマイナス成長に入ってしまっている気がします。
未だに日本は大国ではありますが、外圧がないと改革ができない国民性なのでしょうか。





 

幕末の志士が活躍する小説では人気がある司馬遼太郎氏の本ですね。

 

半藤一利氏、出口治明氏ともにおすすめの本として上がっているのがアーネスト・サトウのこの本ですね。 興味はあるので、機会があれば呼んでみたいところです。

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