宿命のライバルという言葉がある。
登場する主人公ふたりがそういう関係である。
生まれ育ちが違うが、どちらも非常に才能があり、互いに意識する存在。
この二人が小説ならではの展開でラストにオチが付くのだが、そこまでの展開も面白く、ミステリーとしてもそれなりに楽しめるが、やはり人間ドラマとしての部分のほうが大きい。
物語の中には殺人事件もあるが、この物語ではそれほど悪い人間は登場しない。どちらかと言うと善人ばかりである。あえて言うなら殺された人物が悪とも言える。そこが救いかも。
主人公の青春時代のほろ苦さもあり、若い刑事の和倉勇作にどうしても同情してしまうが、ラストでチョット小憎らしいほどの「宿命」のライバルである瓜生晃彦の苦労がわかる。
二人を幼いと聞いから結びつけるきっかけとなったレンガ病院とそこの患者であった「サナエ」さん。
かつての恋人である美佐子との関係。
読後感も悪くなかった。いい話で終わることができた。
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/07/06
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 63回
- この商品を含むブログ (244件) を見る