悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

疾風ロンド 東野圭吾

舞台はスキー場。
炭疽菌を使った生物兵器「K-55」が盗まれ、それが雪山に隠された。
犯人からはその場所とお金の取引を持ちかけられる。
これを表に出せないと踏んでいた犯人は交通事故で死亡。
そして脅されていた組織は公にせず、内密にそれを探しだすということになる。
話はわかりやすくて、展開は早い。
登場人物の描写もきわめてわかりやすいので非常に読みやすくサクサクと読み進めることができた。
やはり東野圭吾は勢いのある作家さんだという印象。


主人公は誰なんだろうと思う。
一応ドン臭い親父の栗林和幸か?
それとも「K-55」を最終的に奪取することができた地元の警備員の根津昇平か?

栗林は息子の秀人を連れてこのスキー場へやってくる。そもそも犯人の残した写真の手がかりだけでこのスキー場へ辿りつけたのもスノーボードにハマっている息子の秀人のおかげである。

それにしても栗林の上司の最低っぷりは半端無かった。
ダメ上司、無能上司の代表的なタイプであり、その部下である栗林もダメサラリーマンの典型かもしれない。
考えれば冒頭になくなった犯人よりも本当に憎むべきは東郷というこの無能上司。最後の最後までマヌケっぷりを通し続けたのはこの作品は内容的には相当恐ろしい状況にもかかわらず殺伐とした感じが全くしない。この作品をコメディとして見るなら主人公かもしれない。
その無能の上司に逆らえず、うまく飼い殺しになっている栗林和幸もやっぱりダメおやじそのものである。このコンビの間抜けぶりが緊迫したこの物語をコミカルにしているのだろう。
展開が早くて最期にもどんでん返しがありそうと思いながら、あっけなく終わってしまったのが残念だが、あの終わり方でよかったのかもしれない。

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