悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

軍師二人 司馬遼太郎 その2

昨日の続きを読んだ。
「侍大将の胸毛」。藤堂高虎の高禄で召し抱えられる渡辺勘兵衛とその世話役であった大葉孫六の妻との話。この話が個人的には一番気に入った内容かもしれない。なんとも痛快な武士である。黒田家の高禄を蹴って出て行った後藤又兵衛に通ずるものがあり、男として読んでいて痛快だった。藤堂高虎は戦国の世を生き抜いた人間として細川幽斎とともに優れた知恵者だと思うが、人気はないなあ。勘兵衛が以前使えていた増田長盛もあまり人気がない武将だが、増田長盛島左近を抱えていた石田三成は戦のこと現場のことは自分が見込んだ武将に任せきる器量を持っていた。残念ながら藤堂高虎は政治力もあったが、武門のものとしての器量もそれなりにあったのが中途半端に任せてしまったということになるのだろう。優れた人であったとは思うが、あまりに世渡りがうますぎる人というのは周りから見ていて美しいとは思えない。散りざまに美しさを感じてしまうのは日本人の感性なのか。

「割って、城を」は茶の道で大名にまで上り詰めた古田織部の話。戦国時代の武士のサロン。非常に短い作品。ちょっと印象がうすい。

タイトルにもなっている「軍師二人」。大阪城に集った浪人衆の中で特に目立っていた二人。戦国時代の荒波を実戦で鍛え上げた後藤又兵衛と戦国時代の最後を飾る名将、謀将真田昌幸の息子である真田幸村の二人の軍師の話。これだけ優れた人を活かすことができなかった大阪城の軍勢。どのような人間がいても結局その言を用いなければなんにもならない。さらにもともとが寄せ手野徳川方よりも寡兵であり、すでに外堀も埋められている状態。二人の名将は場所こそ違えど、籠城ではなく打って出て戦うことを進言。ただ、二人の戦に対するセンスから言えば、勝ち負けよりもいかに華々しく散るか?ということにこだわっていたようにも思う。冬の陣で外堀を埋められたあとでは籠城はできるはずもなく、すでに負け戦は二人には計算できていたはずである。
短篇集の最後に飾る話だが、非常に有名な話で登場人物もこの本の中では最も有名な大物二人。読み応えあり。

司馬遼太郎の長編歴史小説も良いが、短い作品には無名の武将の生きざまが描かれており、それだけに生々しさが感じられてよかった。

新装版 軍師二人 (講談社文庫)

新装版 軍師二人 (講談社文庫)

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