悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

夏の庭 The Friends 湯本香樹実

夏の庭、サブタイトルがThe Friends
読み始めはイマイチ乗れず、面白みはなかった。死にかけている老人が死ぬところを見ようというワルガキたちの話。
いつしか見張るつもりの年寄りに見守られ、気づけば良い話し相手になっていたわけである。木山、河辺、山下という3人の小学校6年生の夏休みの出来事を綴った物語である。
それぞれ子供には子供の事情があり、またこの老人にも過去があった。読み進めていくうちに面白さは増す。後半、登場人物たちのことを理解するに連れて面白さは加速する。いいはなしである。
核家族化が進み、年寄りがいない家庭が増えた。身近な人の死を目の当たりにすることがない子供たちが死というものに興味をもつのもわかるが、そう単純な話だけではない。
あれだけ子供たちと仲良くなって活き活きとしていた老人があっけなくなくなる。本当に人生の残りを精一杯楽しんだかのように。
結局、最初は爺さんの死を待っていたワルガキだったが、実際に死を看取ることになる。
この夏休みを通して、登場した少年たちは大きく精神的に成長した。様々なことをこのおじいさんを通して学んだ。
それぞれは新しい道に進んでいく。いいはなしである。

作者はこの作品を自身の祖父に捧げると書いている。こういうおじいさんだったのだろうか。作者は木山だったのだろうか。

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

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