悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

Op.ローズダスト 福井晴敏

川の深さよりも先に読んだのがこの作品。
重い政治的な話を巧妙な文章でいかにも正論っぽく熱く語りかけてくる。
しかしながら、理屈っぽい感じと重い感じがして、読みづらく感じる時がある。同時に彼の思い入れに共感するときには非常に熱い気持ちで読み進めることができるが、そうでないときは退屈だし非常に眠気を誘ってしまう。
どうしてもサクサクと読めるという感じではない。
そういった点で最近の売れっ子の作家にはあまりないタイプなんじゃないかとも思うが、結構売れっ子なのである。
今回の作品も最終的には恋愛小説的な部分があるが、そのあたりのこと以前に政治的なこと、戦後の大きな流れを小説を通して主張したかった部分があるんじゃないだろうか。
戦争や政治と言った若い世代からは「どうでもいいよ」と見られている部分をあえて力強く語りあけている。
ぜひ手にとって読んでもらいたいフレーズもたくさんある。
気に入ったフレーズをいくつか上げると、


「企業の論理、役所の論理が優先で、人間の論理は後回し。考えない、決められない、
責任も取れないのないない尽くしで、棚上げしてきた問題の重さに誰もが押し潰されて
る。そういう連中は、少し揺さぶってやればこの通り踊りだす。自分で考える頭がない
から、人が作った音色に簡単に引きずられる・・・・・・」

あまりにも歯切れが良すぎて、そのまま為政者にぶつけたいようなフレーズだな。


「わけわかんねよな。拉致被害者が帰ってくれば逆上して、主権だ国家だって騒ぎだす。
それでいて、戦争放棄の平和国家だからTPexはいらないって言う。でも自衛隊
海外に送り出して、人質事件みたいなことが起こると、一晩で賛成派と反対派の数が
入れ替わっちまう。マスコミは、政府も北もアメリカもみんなこき下ろして、自分だけは
公明正大でございって顔だ。自己責任が流行語になってるって聞いた時はウケたよ。
昨日の自分に責任もとれない連中が、どの口で言ってるんだか・・・・・・」

マスコミを風刺しているんだろうけど、痛烈だな。

他にもたくさん着に入ったフレーズはある。それらを言葉にして書けるっていうのは素晴らしいと思う。

Op.ローズダスト(上)

Op.ローズダスト(上)

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