悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

正義の申し子 染井為人



いやあ、面白かったですね。
途中まで読んでいて、先の展開が読めてきましたが、それでも一気に読んでしまいました。
染井為人さんの小説は「悪い夏」に続いて2冊目ですが、前回の小説も面白かったですが、この小説もスピーディな展開でしたね。

 

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登場人物

佐藤純
主人公。
コミュニケーションが苦手な若者。
タイガーマスクの仮面をつけると人気ユーチューバーのジョンに変身する。

栗山鉄平
元暴走族だが、イケメンなのでホストをしていた。
しかしうまく稼げず、暴走族の先輩のつてで振込詐欺をしている。
気が短くて、キレやすい。
この小説のもう一人の主人公。

西野
栗山の先輩で元暴走族。
陰湿な性質。

樋口
栗山の後輩で、暴走族。
栗山を慕っており、ともに振り込め詐欺の仕事をしている。

佐藤蘭子
純の妹。
そこそこの進学校ながら、金髪に髪を染めている高校一年生。

眞田萌花
黒髪の真面目な高校一年生。
ディズニーが大好きで、恋愛にも憧れているものの、花より団子。

日野梢枝
萌花と蘭子と仲の良い高校一年生。
萌花が憧れるほどの大人っぽく、スタイルも良い。
お金持ちの医大生の彼氏がいる。

マーシー
梢枝の彼氏で、お金持ちの医大生。

 

あらすじ(少しだけネタバレ)

佐藤純は部屋に引きこもり、人気ユーチューバーのジョンとして、動画を配信しています。
タイガーマスクを被って、世間の悪を吊るし上げるという動画が受けたため、自らを正義の申し子と名乗っています。
その日の制裁ターゲットは振込詐欺をする森口と名乗る人物でした。
詐欺丸出しのメールとわかりながらも、情報弱者を演じて森口に電話をかけます。
うまく騙されるカモを演じながらも、ところどころに詐欺師の森口をおちょくるジョン。
このおちょくったやり取りがライブでYouTubeに流れているのです。
振込詐欺をするにはキレやすく、狡猾に立ち回ることができない性質の栗山鉄平は「森口」という偽名を使って営業をかけているわけですが、ジョンにおちょくられていることをようやく知り、同時にYouTubeで生配信されていたことを知り、怒りのためにブチ切れるのですが、ジョンの正体はわからず、不満が残ります。
どうしてもジョンに喧嘩でこの屈辱を返してやろうと誓うのでした。
栗山鉄平は長身でイケメンでしたが、幼少期は、男をとっかえひっかえする母との二人暮らし。
いつ帰宅するともわからない母を待つさみしい子供時代を過ごし、そのまま素行不良の少年へと成長します。
やるせない気持ちと寂しさから暴走族に入り、腕っぷしの強さを買われて、先輩たちからは一目置かれ、後輩には慕われていたようです。
しかしまともな仕事につけることはなく、ホストをしてみたものの、うまく稼げませんでした。
そんなときに暴走族時代の先輩の西野に誘われて電話での振込詐欺の仕事をすることになったのです。
後輩の樋口と同棲中の沙織がこの仕事に加わっています。

佐藤家は、そこそこ裕福な家庭ですが、父親は子育てに興味がなく、母はおとなしいだけの女性。
純の下には今年高校に入ったばかりの妹蘭子がいます。
蘭子は金髪で化粧に余念のないギャルでした。
そこそこの進学校なのですが、校則がゆるいということでそういう女子にとっては最高の高校です。
入学以降、自分と同じく髪を染めている日野梢枝と黒髪で真面目な眞田萌花と仲良くなり、いつも行動をともにしています。
高校になり、引きこもりの兄をバカにしています。
その日の兄は気が狂ったように蘭子に暴力をふるいました。
そして蘭子は警察へ通報するのでした。
うろたえる母親を後目にYouTube生配信中のジョンのもとへ、警官がやってきます。
そうしてジョンの身元の一部がわかるのでした。

栗山はジョンへの制裁を考え、彼の動画をチェックしています。
そして彼が「サトウ」という名前であること、東京に住んでいることがわかるのでした。
そんな頃、彼は長い間会っていない母から連絡があり、逢うことになります。
ところが息子に言った母の言葉は、金の無心でした。
ショックを受けた栗山は、そのままタクシーに乗って帰宅。
そこでさらにショックの追い打ちがあります。

この機会にこんな仕事を離れ、東京へジョンをしばきに行くことを決心します。
ほとんど人生を捨てたヤケを起こしている状況でした。
そこへついてきたのが後輩の樋口。
樋口は日頃から自分たちのボスである西野のことをよく思っていません。
彼は西野を襲撃して金を奪って逃げてきたのです。

彼氏が欲しい蘭子。
蘭子はあまり評判の良くない男子校との合コンを企画し、友人の二人を誘いますが、あまり乗り気ではない様子。
一方の梢枝は、彼氏がおり、お金持ちの医大生です。
梢枝は友人たちを誘い、彼氏の仲間が所有する船でクルージングをすることになりました。

暴走する過激YouTuberのジョンと詐欺師に向かない栗山の二人はなにかの縁に操られるように交わっていくのでした。

 

感想(ネタバレあり)

ジョジョジョジョーン。笑いを愛し、笑いに愛された正義の申し子、ジョン様の登場だっ。今日もおまえらにジャスティスなショーをお届けするぜーっ。」
という台詞とともにハイテンションで登場する人気YouTuberのジョン。
初めから正体はわかっているだけに、かなり痛いのですが、この物語は喜劇なのかと思えば、そうでもありません。
現実にも、「各請求詐欺業者に凸してみた~」なんて動画はものすごくたくさんあったりします。
森口と名乗っていた詐欺師は栗山鉄平。
彼は家庭環境が悪く、不良になってそのまま暴走族へ入り、今はこんな詐欺の片棒をかつぐような仕事をしているのです。
もちろんやっていることは違法ですし、これまでも散々世間に迷惑をかけてきた人物。
しかし、この本を読み進めていくと、主人公のジョンよりもこの栗山鉄平に情が移ってきます。
イケメンで長身、ホストをやっていた人物でもあるのですが、後輩思いでもあるし、妙に義理堅い性格もしているのです。
なので、ホストも振込詐欺も上手に金を稼いでいるという人間ではありません。
世の中には色んなタイプの人間がいます。
子供は親を選ぶことができず、仕方なくこういう人間になってしまったと言えなくもありません。
ヤクザものが「俺もエエしのボンボンやったら、やくざなんかになっとらんわ」という言い訳をしますが、確かに生まれてきた環境、親によって育ち方は大分変わるのだろうと思うのです。
ただ、ひどい環境にいてもまともな人間になって立派になっている人もいるので、同情ばかりはしていられませんが、もし自分が鉄平のような立場だったら、マトモな人間になれたか?と言われると全く自信はありません。
もっとも私なんぞ喧嘩も弱くて、根性もない(つまりはヘタレ)ので不良にもなれなかったと思いますね。
だからこそシンパシーを感じるのはやはり佐藤純なのかもしれません。
可愛そうなくらいコミュニケーションをとるのが苦手な人物で、おとなしい人間。
学校では「いじめ」の対象となる格好の的だったのでしょう。
大変気の毒です。
ただ、彼は弱い自分を守るために第二の人格が登場します。
YouTuberとしてある程度成功し、ジョンは元の人間である純との関係が逆転していきます。
マスクをかぶらないとただの引きこもり少年の純であり、彼はひねくれて入るものの基本は善良な人間です。
自分をいじめてきた悪いやつらに対する感情をYouTubeというメディアをとして表現し、それによってお金もかなり稼ぐようになってきてからは、ジョンは調子に乗ってしまうのです。
純はジョンであり、ジョンは純でもある二重人格。
医学的には解離性同一性障害というものらしいです。
弱い自分を守るために作り出したもう一つの人格。
色々とジョンという人物は破綻しています。
栗山鉄平は喧嘩はやたら強く、キレやすい人物なのですが、後輩思いでもあり、義理堅いところもあります。
イケメンではあるものの、粗暴で狂犬のような人間です。
鉄平は屈辱を受けたジョンをぶっ殺すくらいのつもりで上京します。
そしてジョンこと佐藤純の自宅を突き止め、カラオケボックスで決闘することになります。
ジョンは正義の申し子を掲げてライブ配信で対抗しようとしたもののあえなく失敗。
あまりのヘタレっぷりに拍子抜けした鉄平は馬鹿らしくなります。
ところが鉄平は、ジョンの居場所を探しているときに、ジョンの妹である蘭子の友達の萌花と知り合ってしまいます。
恋に憧れる萌花は鉄平に恋心を抱き、ディズニーランドへ一緒に行く約束をしたのでした。
しかし、萌花は友達の梢枝と蘭子に引きずられるようにナイトクルージングに出かけ、危険な状況に陥るのです。
決闘する相手のジョンと鉄平は「正義の申し子」として彼女たちを救い出すという展開は熱くならざるを得ません。
この物語にはエピローグもあります。
犯罪に犯罪を重ねた鉄平は収監されてしまいます。
集団で15歳の少女に悪質な手口で淫行を企てた金持ちのボンボンたちの結末は全く書かれていません。
書かずとも、彼らは裁かれたと勝手に脳内解釈したいところですが、現実にはボンボンたちは親のコネによってお咎めなしということなんだろうか、と冷めた思いもよぎります。
全く生きてきた人生の違う純と鉄平ですが、1年後、刑期を終えて出所するときに待っていたのはジョンでした。
どちらも心から打ち解ける親友はいなかった者同士。
なかなかニクいエンディングです。



 

 

 

 

 

人間の証明 映画

U-NEXTの無料でのお試し3回目があったので、利用開始しました。
いつかは見ようと思っていた、「人間の証明」を見てみました。



小説は読んでいるので、見ていてもあらすじはわかっていましたので、ゆったりと見れます。

 

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出演している俳優陣を見ると、やはりかなり前の映画であることがわかります。

冒頭でジョニー・ヘイワードがホテルのエレベーター内で失血死。
ホテルに駆け込む警察に応じるホテルマンを演じていたのが、元ホテルマンでこの本の原作者である森村誠一さんでしたね。
驚きました。


結構ワンシーンだけですが、著名な俳優もたくさん出ていますね。
ホステスのなおみを演じている范文雀さん。
なおみの夫役が長門裕之さんで、なおみと愛人関係にあるのが夏八木勲さん。この二人が協力して、なおみのひき逃げを追いかけるという展開が本ではかなりあったと思っていたのですが、映画では一瞬でしたね。


おでん屋さんの坂口良子さん。
可愛らしい人ですね、この頃はまだ若くて。
残念ながら母親としては娘をしっかり教育できなかったのでしょう。
他人事とは言え、娘さんのニュースを見ると悲しくなりますね。
脱線しましたね。


おでん屋の客として大滝秀治さんと佐藤蛾次郎さん。
おふたりともほんのワンシーンとはもったいない俳優です。
このあたりは本では全く記憶にありませんが、映画ならではのワンシーンということでしょうかね。


霧積の温泉宿の主の伴淳三郎さん。



八杉恭子を知る重要人物が殺されますが、その孫娘役に竹下景子さんです。
彼女もめちゃくちゃ若いですね。




主役は棟居刑事を演じている松田優作さん。
相棒のベテラン刑事にハナ肇さん。
警部役には鶴田浩二さん。
地井武男さんも若々しいです。

そしてもう一人の主役と言える八杉恭子役には岡田茉莉子さん。
これだけの俳優陣を揃えながらも、彼女だけは最初からこの役として決まっていたそうです。
角川映画の製作者がとても気に入っていたのでしょうかね。
もちろん、この映画の配役にはぴったりですけどね。



その夫で政治家郡陽平が三船敏郎さん。
こんな大物まで動員させるとはお金をかけた映画なんでしょうね。
二人の息子である郡恭平は岩城滉一さん。
めちゃくちゃ若くてブレーク前ですね。
とてもハンサムで、どことなく反町隆史さんにも似た雰囲気ですね。



NYハーレム27分署の刑事ケン・シュフタンを演じたジョージ・ケネディ

巨漢な白人刑事役。
ジョージ・ケネディさんは、超大物とまでは言わないまでも、ハリウッドで活躍する名優です。
「暴力脱獄」「エアポート’75」「裸の銃を持つ男」といったヒット作にも出演していました。

主題歌もヒットしましたね。
いきなり殺される、ジョニー・ヘイワード役で出演しているジョー山中さんの渋い歌声。
この曲と麦わら帽子のCMをテレビで嫌というほど流していましたね。
この曲は、大ヒットしますし、ラストに流れます。
しかし、この映画を通して音楽は完全にルパン三世でした。
それもそのはずで音楽監督は大野雄三さんだそうです。
それにしても「ルパン三世 カリオストロの城」です。
音楽だけを聞いているとほとんどの人はそう感じるんじゃないでしょうかね。


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この頃の日本映画には活気があったのでしょうか。
角川映画という一つのジャンルを確立していくんですね。
ただ、角川映画は今の映画と比べて、予算も十分確保していましたが、広告費をガーンと使って、煽りまくるというやり方でしたね。
映画と本をどちらも同時に売るというやり方。
「読んでから見るか、見てから読むか」と言ったコピーもありましたね。
一つの時代を作った角川映画
その代表的な作品という気もします。
このような大作ばかりが角川映画なら良かったのですが、製作費を回収できない失敗作もありました。
アイドルを全面に出した手っ取り早いお金稼ぎのための映画を乱発するようになり、今に至ったという気がします。

 

オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎

いつものように通勤で読んだ本です。
伊坂幸太郎さんは、超売れっ子の作家さんですね。
いくつか本を読みましたが、この作品も有名です。
というか、この作品がデビュー作なんですね。
デビュー作がいきなり注目される!
売れっ子にはそういうのが必要なのでしょうね。
長年注目されなかった作家が、ある作品をきっかけに売れる場合もありますが、多くの人気作家さんはデビュー作からすごいものを書いているようですね。




登場人物

伊藤
この物語の主人公。
ソフトウェア会社を辞めた28歳。

日比野
荻島案内人

優午
予知能力のあるカカシ

草薙
島の郵便配達員。

百合
草薙の妻。

城山
元同級生で今は警官


荻島

静香
伊藤の元恋人。

園山
島の住人。妻を失い、気がふれた元画家

田中
足の不自由な島の住人

祖母
伊藤の祖母。
伊藤は彼女の影響を強く受けて育つ。


島の住人。拳銃を所持し、島の住民を殺す人。

 

簡単なあらすじ

伊藤はなんとなく仕事をやめてしまいます。
そしてコンビニ強盗ということをやらかしてしまいます。
正確には強盗は成立しなかったので未遂でしたが、警察に捕まりました。
その時の警官が同級生であった城山でした。
恐ろしい城山から逃れるために、パトカーが事故を起こしたスキに逃走。
気がついたときには知らない場所で寝ていたのです。
そこは荻島という日本には存在が認識されていない孤島でした。
連れてきたのは轟という熊のような鈍重な男。
そして島の案内役を買って出てくれたのが日比野という島のペンキ屋でした。
この長閑な島では、普通の日本の国とはどこかが違っています。

未来予知ができるカカシの優午と会い、驚くものの、伊藤はその不思議さを受け入れます。
そして伊藤は優午から色んな話を聞いていくのです。
善人を絵に書いたような郵便配達人の草薙夫婦がいます。
草薙は妻の百合をこよなく愛する人物です。
また妻をなくした元画家の園山や足の不自由な田中と言った独特な島の住民たち。
市場にも巨体過ぎて動くことができないウサギという女性や地面に寝転がって自分の心臓の音を確かめる少女などユニークな人物たちと触れ合っていきます。

のどかな島ですが、結構殺人があるのです。
そしてその殺人のうち一部は、島全体に認められていることでもあるのです。
処刑執行人のような存在の桜です。
彼は大変美しい姿をもち、詩を愛する静かな人です。

ある日、優午が殺されました。
未来が予知できる優午なのですが、自分の死を予測することはできなかったのでしょうか?
伊藤は様々なことから有後の殺害事件を突き止めていきます。


 

感想

胸の谷間にライターをはさんだバニーガールを追いかけているうちに、見知らぬ国へたどり着く、そんな夢を見ていた

という書き出しで始まるこの文章。
純文学ではないですが、大衆文学として今の時代、走り続けている伊坂幸太郎さんのデビュー作ですが、この書き出しを見るだけでも、なにか違うな、と感じさせてくれますよね。

この本には、第一章とかそういう区切りがありません。
伊坂幸太郎さんの本には多いのですが、その代わり、アイコンのような小さなイラストが間に入ります。

こういうやつですね。
上は、主人公の祖母のイラスト。
祖母とのやり取りが描かれるシーンですね。
祖母は孫の人間をよく理解しているのか、彼の未来を予測しているようです。
まるで預言者のように。
なぜ祖母なのか。
主人公の伊藤は幼い頃に両親を事故で失っています。
祖母がいたため、祖母と暮らすことになったのですね。
なので彼の人間形成の上では祖母は外せない人物ということになります。
そしてカカシは預言者優午のシーン。
優午はこの物語にとってはキーマンの一人です。
れっきとしたカカシなのですが、喋ることのできるカカシなんです。
そして彼は未来を知っているのです。
彼の言葉は島の人達にとって重要な意味を持っています。
カカシは未来のことがわかっているのですが、人間にそれを教えることはありません。
未来を教えることを自分で禁じています。
そして人間とは話をするが、親しくしているわけでもありません。
彼の友達は鳥です。
鳥を追い払うのがカカシの役割なのに、そこがまた不思議ですよね。
途中で殺されてしまうという展開なのですが、その謎を解いていくのが主人公です。
冒頭の始まり通り、「不思議の国のアリス」のような不思議な世界ですが、日本です。
ちなみにこの島の存在は日本に知られていません。
唯一日本とこの島人のやり取りができるのが轟という人物なんです。
彼はボートを所有しています。
そして島の人達からのリクエストを受けて物品を調達したり、郵便を出したりします。
知られていない島なのに普通に郵便が出せる?というのがまた不思議な世界なのですが、そういうものと思って読み進めていくしかありません。
違和感はありません。

カカシとの話の中で、リョコウバトの話が出てくるのです。
リョコウバト、とてつもなく大群で移動する渡り鳥で、北米には空を覆い尽くすほど大量に生息していました。
しかし、この大量の渡り鳥はその数の多さもあり、その肉が美味でもあることもあり、あるいは簡単に狩猟できることから、ハンターたちの格好の的となりました。
今とは違い、瞬く間にこの種を絶滅に追い込んでしまいました。
ジョン・ジェームズ・オーデュボンという学者がリョコウバトの絵を詳細に書いて残しました。
この本のタイトルであるオーデュボンは彼の名前です。
タイトルの意味がじんわりとわかるような本ですね。
オーデュボンの祈りはカカシの優午の祈りでもあるのでしょうね。

桜という殺し屋?は特に依頼を受けてお金をもらって殺しているわけでもなく、桜が殺したいと思った人間は有無を言わせず殺害します。
そしてそのことを避難する人は殆どいません。
この島のルールなんですが、これまた伊藤は疑問に思いつつもこの島のルールになじんでいきます。
この桜がめちゃくちゃカッコいいですね。
普通に考えて人殺しなのですが、桜の殺人はそもそも超法規的な存在なのでしょう。
桜による人殺しは、誅殺のようなところもあり、悪いことをしたら桜が現れないかとビビりながら生活をすることになるのです。
ある意味この島の治安を維持する役割とも言えます。

桜のようなキャラクターがいれば、当然悪いやつもいるのです。
この物語では何人か死にますが、「悪」の象徴のような人物が存在します。
この島の人間ではないのですが、島にやってきます。

不思議な世界のゆる~いファンタジー小説のような気もしますが、カカシ殺害事件の犯人を探すというミステリー部分もあります。
謎がたくさんありすぎますが、それらの謎が終盤につながってくるような仕組みになっていて、読後感は良好です。


 

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