悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

自転しながら公転する 山本文緒

Amazonより

山本文緒さんの小説「自転しながら公転する」を読みました。
ドラマにもなっているそうですが、元々テレビやドラマをあんまり見ない方なので全然知りませんでした。
またこの作者である山本文緒さんのことも全然知らなかったのですが、このとても素敵なタイトルに惹かれて読んでみることになったのです。

 

登場人物

与野都
主人公。ミヤコという名前のためニックネームがミャー。
32歳独身。
アパレル会社のアウトレットの販売店で働く時間給契約社員

羽島貫一
回転寿司店でアルバイトをする30歳の男性。

絵里
都とは学生時代からの仲の良い友達。
結婚しているが子無し。

そよか
一つ年下の気の合う友達。
絵里と3人でよく食事や飲み会をする仲間。

ニャン
回転寿司店でアルバイトをしていたベトナム人男性。
ベトナムではかなりのお金持ちの息子。

亀沢
都が働いている販売店の店長。

東馬
都が働いている販売店に新しくやってきたMD(マーケティングディレクター)。

仁科
都が働いている販売店の副店長。

与野修
都の父親。
かなり古い感覚を持ったオヤジ。

与野桃枝
専業主婦だが、更年期障害で主婦業もできなくなる。

 

あらすじ

与野都は自分が気に入った服のブランドのショップに就職して働いていました。
しかし母親の桃枝が更年期障害で通院が必要な状況になります。
父の修は職場を一時休職したものの、一人娘の都にも手伝ってほしいと言います。
一人住まいから実家へ戻ってきた都は、前職を辞め、地元のアパレルブランドのアウトレット店でアルバイト店員となりました。

感想

女流作家というか、女性目線で描かれた普通の物語というものには興味がないからなのか、これまであまり読んできませんでした。
瀬尾まいこさんの本などを読んでみると、なかなか味わいがある。
というか歳をとり、人間の生き様を色々と見ることで分かる部分が増えたのかもしれません。
この小説、なんてことない普通の女性、30過ぎて結婚を否応なく意識していた女性が出会った男性との恋愛というのが主題の小説なのです。
ドロドロの恋愛ものや純愛を描いたものではなく、割と恋愛の裏に潜む人間の打算とかそういったある意味多くの人に共感する部分がたくさん描かれています。
ネタバレになりますが、冒頭のシーンはラストの仕掛けを描くために作られた部分。
この仕掛けに引っかかりますね。
この本が書かれたのがそれほど古くないので、日本の現在の女子の恋愛事情がわかります。
基本的にこの小説は主人公都の目線で描かれるところがほとんどなのですが、母の桃枝など他の登場人物の目線でも描かれます。
そこには親子であっても本音と裏の感情が交錯しています。
そして職場での人間関係。
いろんな人物が登場しますが、多くの読者が「いるいる」と思わずつぶやきそうになると思います。

巨大な悪ではないけれど、多くの人が目の当たりにする小さな悪がたくさん描かれ、人間の嫌らしさを感じます。

セクハラや不倫、職場での人間関係、そこには人間の持つ醜悪さがあります。

割と長めの小説なのですが、読みやすさもあってサクサク読めますね。

そして読み終えたあとのスッキリした感じがとても良いです。

オススメです。

作者の山本文緒さんは、若くしてもうお亡くなりになりました。

膵臓がんでわかった時点で手の打ちようがありませんでした。

命の灯が消えるまで、作家として生き抜いた山本文緒さんでした。

御冥福をお祈り申し上げます。

 

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