広告業界に身を置く主人公が、会長が持ってきた1本のビデオから様々なことが浮かび上がってくるミステリー。
ミステリーとしてはあまりドキドキ感がないが、テンポもよく読みやすい。
藤原伊織氏はすでにお亡くなりになっているらしい。享年59歳。早すぎる。そして広告業界の人であったらしい。電通の人。なるほど。
内容的にはバブル期の経営失敗で会社が傾いたこと、立て直しの具体的なプランとして人員削減、リストラ。
主人公を大企業に招き入れてくれた恩人である会長の背任行為、その真の事情は愛人関係をヤクザに脅されたもの。
そしてそれらの謎を紐解く探偵役として主人公がいる。ヤクザの組長の息子として育った堀江雅之である。
あまりにも自分とは違う所で存在する小説の中の人物なのでなかなか人物として気持ちを共有できないところがある。周りの人間も現実にはいそうにないタイプばかり。
主人公がスーパーマン過ぎて、また亡くなった会長や若手役員が能力がありすぎて、ついていけない。ミステリーではなくやはりハードボイルド小説なのだろう。
- 作者:藤原 伊織
- 発売日: 2002/11/08
- メディア: 文庫