悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

若者殺しの時代 堀井憲一郎

著名なブロガーのちきりんさんのおすすめ本で、手にとって読んでみた。著者である堀井憲一郎氏のことは何も知らないが、書いている内容はまさに自分が生きてきた時代を再度見なおすということにぴったりの内容も多く、改めてバブルの時代からその後を再認識できたように思う。みんながみんなそうであったわけではないけれどね。

第1章 1989年の一杯のかけそば
一杯のかけそばというのが流行したというのはなんか記憶があるという程度。私は当時、その本を読む機会はなかった。読んでいれば、単純で感化されやすいだけに、「イイハナシダナー」となっていたと思う。
「バブルは貧乏人のお祭り」という部分。グサリと胸に突き刺さるような言葉だと思う。当時は総中流意識。持ち家はなくても、アパート住まいでもハイソカーという高級車を乗り回し、パートのおばちゃんまでひとかご1000円のゴルフボールを練習場で打っていたりしていたのである。でもってそういう類の人の口から、「大人が一日開放的な気分で遊んで、お昼には美味しい食事をして3万円なら安い」と言っていたんだから、これは異常だと当時も思っていた。投資目的でまだできていないゴルフ場の会員権が完売したり、サラリーマンが5000万円以上のローンを組んだりとかもはや無茶苦茶な状態だった。


第2章 1983年のクリスマス
クリスマスは家でケーキを食べてジングルベルを歌うというイメージしかなった。クリスマスプレゼントもサンタが持ってきてくれるのではなく、親が買ってくれるものだった。とはいえ、大きなイベントはクリスマスよりもやっぱり正月。
もちろん恋人にとって大事なクリスマスというのはこの頃からつくられてきたものなんだなーと実感。そういうことに疎かった私は恋人たちのクリスマスというイベントの実感があまりない。でもちょうどこの頃からそういうイベントにお金をかけて女性がお姫様気分になるという時代だったんだなと思う。それがエスカレートして、今はそこから「いちぬけた〜」という男が増え、そういう男子を「草食系」なんて名づけたりして…。

第3章 1987年のディズニーランド
東京ディスニーランドが開園当初人気がなかったとは今になっても全く思い出せない。ついにこの歳になってもディズニーランドには行ったことがない。どうでもいいし、混雑するところは苦手。今さら行きたいとも思わないが、話のネタで東京ディズニーランドのことが出てくると、全くわからず、面白くはない。関西にある遊園地となにか違うのか?そのあたりもよくわからない。作られた施設で感動の押し売りをされてもなあ。若い恋人たちにとってはムードも大切だろうけど、本当に愛しているのなら場所やムードは関係ないと思っている。そういうものを「大人」から押し付けられるようになったのがこの時代からということか。
近年、大阪にUSJができた。もちろんTDLとは違うが、ノリとしては同じと考えている。一度行ったきりで、やはり行く機会がない。こどもを連れて家族で言行ったのだが、そんなに楽しいところでもなかった。映画はとても好きなんだけどな。

第4章 1989年のサブカルチャー
著者が漫画研究会ということで漫画にスポットを当てている。それ自体は悪いとは思わないが、著者の時代よりも更に漫画は違う意味で発展して、ドンドン枝分かれしていると思う。少なくとも著者の若い当時の少年誌とアキバオタク系漫画とは別物と思っている。ちなみに私も漫画はよく見たと思う。今は読まない。というか読みたい漫画がない。ついていけなくなったんだろうかね。やっぱり歳を感じるなあ。

第5章 1991年のラブストーリー
ホームドラマからトレンディドラマへ。そしてヘアヌードのことが取り上げられている。そうだな。そのとおりだと思う。しかし、今も見てないドラマを当時もやっぱり見ていなかった。朝の連続ドラマも、ホームドラマも見ていない。ましてやトレンディードラマなんか見るわけがない。したがって「男女7人夏物語」もまわりの人はみんな見ていたように思うが、話題についていけずドラマの話題を振られると面白くなかったように思う。一方、ビデオの普及、それにはAVがかなりの力を発揮したということは実感している。今でこそレンタルビデオ、DVDは大手ばかりになってしまったが、当時は小さな個人経営のビデオレンタル店が多く、ノリとしては古本屋みたいな感じだったかな。そう思えば、古本屋もBOOKOFFみたいな大型店ばかりになってしまっているか…。


第6章 1999年のノストラダムス
大騒ぎしたWindows95からWindows98へそして今も主流OSであり続けているXPが出る頃の話である。2K年問題とは何だったんだろうかと今になってそう思うが、この著者はやっぱりIT関係、システムのことを軽く考えすぎているような気がする。社会に仕組みにすでに組み込まれていたシステムを位置から作り直すわけには行かず、ショボかったリソースで作ってきたプログラムにはしょぼいリソースなりに動くように様々な工夫があったのである。

終章 2010年の大いなる黄昏あるいは2015年の倭国の大乱
最後の章はなんとも言いがたい。若者に伝えるメッセージが「逃げろ」だけとは…。「立ち向え」ではなく「逃げろ」とは正直とも言えるが、それは若者に向けただけの言葉ではなく、自分たちを含めた上の世代に対して発している言葉ではないのか?と感じた。



若者を喰い物にし続ける社会 (新書y)

若者を喰い物にし続ける社会 (新書y)

  • 作者:立木 信
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 新書

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